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 火と水はお互いに反する属性だけに、わずかの差でも大きく差が出る。

 結果はハッキリとわかる形となり悲鳴があがる。


「うわああ!!」


 声を上げたのはサイクロプスであった。

 片腕は赤い燃える様な色は消えて、逆に水色に変色していた。


「やったぞ!」


(いいぞ水竜!)


 ぶつかり合った結果、烈火拳を上回る力が水竜斬りにはあったといえた。

 さらに冷の体術能力もある。

 剣術、槍術の能力でもいかんなく発揮されたからだ。

 その為、腕は衝撃で激しく痛みがサイクロプスを襲ったのだ。


(かなりの腕にダメージがあるはずだ)


 そして腕はボロボロに傷つき水竜に負けたので、水色にまで侵食されたのが、色が変わった理由であった。

 その時にナギナタから声が聞こえる。


((冷たくなるぞ!))


(バアちゃんには悪いが、我慢してくれ)


((敵にダメージを与えられたから許すけど))

 

「どうだい俺のオリジナルスキルの力は、はっきり言ってビビっただろうサイクロプス。あんたの自慢の烈火拳も俺の水竜が上だったわけだ。残念だったな魔人さん、観念して温泉を開放しな、そうしたら助けてやろうっていってんだ、俺って優しいだろ!」


 試合はもうついた。

 だから諦めて負けを認めろと言った冷。

 それは当然であろう。

 すでにサイクロプスの片腕は戦うには消耗部品とかしていた。


(相当なダメージだろう)


 片腕だけで冷に勝とうなど、思えるわけもなくサイクロプスが完敗の状況となる。

 

(思ったよりも強力だな水竜は。バアちゃんにはキツイみたいだが)


「……負けを認めろと?」


「そうだよ、どう見てもその片腕で俺に勝てるわけないだろ。それともなにか、もう片方も使い物にならなくされたいってか。やめとけ、俺はあんたを殺しに来たんじゃねえ。あくまでも温泉目当てなんだから、さっさと負けを認めちまいな。あとオークは俺が倒した。同じ中級魔人なんだろ。魔人のプライドなんか捨てちまいな」


(俺だって幼い頃はだいぶ負けた。負けを認めてその後につよくなった)


「魔人、中級魔人を舐めてるな。俺が本当に下級ではなく中級魔人と呼ばれる理由。まだわかっちゃいない。オークは中級であったが、アイツが中級なのは俺は反対であった。なぜなら下級のちょい上くらいの実力しか持たないのに俺らと同じ中級扱いされたるのが嫌だから。アイツと俺を一緒にしたのはしんがい。ムカつくっ!」


 サイクロプスは痛めた片腕を抑えながらも、中級魔人としての自分を語った。


「怒っても無駄だって。もう決着ついてるのわかってるでしょうよ」


(オークとは仲悪いのか。酷い言い方だ)


 それにオークは格下だと思っていたけど冷に同格扱いされたことに苛ついた。

 今までまだ眠っていた怒りが冷の余計な一言で呼び起こされた。

 怒りはサイクロプスの体中を駆け巡り、血管を沸騰させた。

 全身の皮膚から湯気が立ち、起き上がった。

 まるで全身が熱を帯びたような凄みが発せられた。


(なんだ……。様子が変だが)


「……まだやる気だな。あんたもしつこい性格してるな」


「悪いなしつこい性格でよ! 俺の真の力を見ろ冷、インフェルノ!」




[インフェルノ]

触れた物を昇華させて元の物質レベルにまでさせる。

あらゆる物質を溶かす力を持つ。




 サイクロプスは自身の持つ最高スキル、インフェルノを使用した。

 この能力は膨大な魔力を使う為に普段はもとよりほとんど使われることはなかった。

 ここまで追い込まれたサイクロプスは残りの魔力を全て使ってでも、冷を倒すと決めたのだ。

 まだ使える片腕にインフェルノを付与した。

 烈火拳でさえ強力な威力を持っていたのに、その上にインフェルノという破格な能力を付与した。

 サイクロプスは猛烈に赤みを帯びた片腕をひと振りした。

 すると片腕の振った軌道にあった壁、柱、ガラスに至るまで全てが煙となった。

 そして何も残らない。

 空洞のような形が出来た。


「な、な、な、な、な、何だ今のは!」


(おいおい、凄えスキル出して来やがったな)


 冷は研ぎ澄まされた直感を持っていたから、この攻撃がヤバイとわかり、とっさに後方に逃れる。

 その選択は正しかった。

 もし逃げていなければ、冷の体の半分は消えて昇華されていた。

 

(危ねえなインフェルノ!!)


 更に手を緩めることなくサイクロプスは腕を振るう。

 立派な造りの城の内部は立ちどころに、破壊された。

 破壊だけでなく崩れ落ちるとも言えた。

 振るう度に柱は壊れて昇華して消えていく。


(城ごと壊す気か……)


 至るところで城が崩壊して崩れてきていた。

 冷は、なんとか腕の軌道から逸れた面に逃れる。


「よくぞ逃れられたな冷。インフェルノに触れたら最後、お前は消えていなくなる。どうする、どうする、今度はお前が負けを認める番だぞ。ひとつ言っておくよ、もう決着ついてるでしょうよ〜〜〜」


 負けを認めるように逆に言い渡された冷。

 正直にいって冷は負けを感じた。

 自身の持つオリジナルスキルである、オメガラウンドも考えた。

 考えた末に使用は控えた。


(俺も作戦を変えるか)


 オメガラウンドは隕石を空中から落として破壊するスキル。

 その性格だけに、城の内部という条件では使用制限がかけられるのが原因であった。

 今のインフェルノを見たら話に聞いた10万人を殺したのも理解できた。

 生きてきてこんなヤバイ能力にお目にかかるのは、初めてであった。

 勝てる気がしなくなった。


((あれはヤバイな。私も消えてしまうぞ))


(ああ、だからナギナタは使ってないし、使えないよ)


((うれし優しさだな))


(そんな余裕ないけどよ)


 余りにも破壊的な能力に精神的にも追い込まれた。

 そこで2つの選択肢を考えた。

 1つは負けを認める。

 温泉など無くても生きてはいけるのだから、あきらめて帰る。

 もう1つはインフェルノに対抗する策を考える。

 水竜斬りのスキルが今のままではとても勝てそうにない。

 経験から冷はわかった。

 だから考えた末にスキル想像に頼る方法になる。

 つまり水竜斬りをパワーアップさせる手段である。

 ぶっつけ本番ではあるが、試してみる価値はあった。


(この場で新しいスキルを作り出すか。時間がいるけど)


 サイクロプスが城を半壊させた。

 すでに隠れる場所は少なくなってきていた。

 冷はその中でも隠れる場所へと移動する。


(ここなら隠れていられる)


 そして、スキル想像を試みる。

 先ずは想像させるスキルを決める。

 冷が思いついたのは、水竜斬りに付与する形でより強力なスキルにしたいというイメージだった。

 水竜斬りは候補に決定した。

 そこに先ほど習得したスキルを候補にした。

 ダークタイガーの持つ、猛獣の牙である。

 攻撃力は実際に戦ってみた冷がわかっている。

 かなりの鋭い攻撃力を持っていた。

 次にサイクロプスの側近でもある下級魔人へスティから習得したスキル、ブレードソウルである。

 魔力を込めることで付与して攻撃力を格段に上げられる。

 この3つを、スキル想像したらどうなるか。


(失敗か、成功するか、わからないな)


 冷には、かなりの攻撃力を持つオリジナルスキルが生まれる可能性を感じた。

 そこでこの3つを候補に決定した。



[水竜斬り]

斬った相手に水属性の巨大ダメージを与える。

斬鉄斬り+ドラゴンブリザード


[猛獣の牙]

鋭い攻撃で相手の皮膚を引き裂く。


[ブレードソウル]

剣に魔力を込めて切れ味を倍増させる。


 この3つを候補に試みると反応が返ってきた。

 

 水竜斬り、猛獣の牙、ブレードソウルは、スキル想像可能です。


 スキル想像後は、アイスドラゴンブレードが生まれます。

 

 よろしければ、スキル想像しますか?

 

 はい/いいえ


 冷は迷いなく、はいを選択した。


 アイスドラゴンブレードが生まれました。


[アイスドラゴンブレード]

水属性のスキル。

魔力を付与することで破壊力の増大が可能。

水竜斬り+猛獣の牙+ブレードソウル



 新たに冷が作り出した世界中で唯一のオリジナルスキル、アイスドラゴンブレードが生まれた。


(やったぜ、成功したようだ)


 果たして、どの程度の力を持つものなのか。

 使ってみないと実力は不明であるのが難点であった。

 しかしサイクロプスに追い込まれた状態で、普通の冒険者なら逃げるのが精一杯なのに、冷はスキル想像をした。 

 後は使うのみ。

 サイクロプスへ使ってみてどの程度通じるかの問題となる。

 通じなければ、それこそ終わりが見えてくる。

 嫌でもサイクロプスが近い位置まで迫ってきていた。


(こうなりゃ、この新スキルに賭けてみるか)

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