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 冷たちは少しの間休憩をとる。

 その間に褒めることに。

 彼女達が追い込まれた際に力を発揮したのを。


(よくぞ魔族達を倒したな。褒めてやろう)


「君たち、先ほどはよくぞ魔族らを倒した。俺は正直に驚いている。これはマジだ。直ぐに助けに行こうとしていたら、君たちの方から来たから嘘だろってな」


「実は最初は危なかったの。魔族の連中もなかなかの実力があって、だけど戦えたわ。やっぱり女神の偉大な才能の成せるわざよ!!!」


 アリエルは自慢げに話した。

 こう言う時のアリエルは非常に大きい態度になる。


「めっちゃ自慢してますが、怖がってましたよアリエルさん?」


「怖がってません!」


「だって震えてましたの私は見ましたから」


 ミーコはアリエルが震えていたのを覚えていた。


「ミーコ! 黙ってりゃわからないでしょうよ〜〜〜」


「ああ、やっぱり震えてたのかよ。俺はそれでも立派だと思う。震えていてなお、相手に立ち向かうのは武術家な大事な素質さ」


「じゃあ私には武術家の素質があると?」


「もちろんさ。俺は以前から思ってたんだ。今回に限ったことではない」


「冷氏さ、褒め過ぎはよくないよ」


「褒め過ぎではない、私の実力だある! まぁミーコとリリスもそれなりに頑張ってはいたわ」


「おおおおお、おい、魔剣での活躍があっての勝利だろう! それを横取りする気か!」


「まぁまぁ、みんな頑張ったてことで良いだろう」


 森は他には誰もいない。

 魔物の気配もない。

 へスティを倒した後が気になった。


「気になるのは配下の魔人を殺した。そうなるとサイクロプスにも知られるのは時間の問題では。それともまだ知られてないのか」


「あれだけ派手にやっちまったからな。知られてない方が無理だろう」


(まぁ知られたら知られたで、探す面倒がないけど)


「派手にていうより破壊だよお前のは」


 リリスはあきれて苦笑いして言った。


「相手は強かったし新しいスキルの威力が想像以上なのもあったんだ。あそこまで爆裂するとは俺も驚いたさ。山ってのは時間が経てば自然に元に戻るのだろう。それが自然の偉大さだ」


 冷は自分のやった破壊の責任は取りたくないとして、自然の摂理に任せることにした。


(俺って頭いいな)


「勝手に壊しといて自然に任せるは酷いな。神の地位から見てたら本当に天罰ものだよ。でも生きてて良かった」


 アリエルも許せないとは思いつつも、生きてて良かったとも思う。

 そして冷の戦いの成長ぶりも見てとれた。

 戦えば戦う程に強くなる冷に力強さを感じていた。

 無謀としか思えない魔人との戦いに。

 

 女の子たちの体力が回復したところで出発しようした冷は不安がよぎった。

 まだ魔物の存在はないが、まがまがしい気を感じたのが原因だ。


(……これは……)


 直感的なもので確証があったわけじゃない。

 しかし冷の直感は通常の人の感覚とは違い、遥かに研ぎ澄まされており、レーダーのように働く。

 そのレーダーが上方からとても危険な空気を察知したのだ。

 そこで冷は女の子達を置いていくことにした。

 

「ここから先は危険もありそうだ。俺の感でヤバイと感じた。キミたちはここで待機していてくれ」


「わかったわ。サイクロプスかしら……」


「多分な。さっき戦った魔人よりも強力な物を感じるんだ。恐らく上のランクの魔人だろう。オークと戦った感じに近い。鳥肌が立つのも同じだ。でも俺なら倒せる、なにせ俺は世界最強なんだからよ」


(オークにも勝てたのだ。自分を信じろ)


「それ、サイクロプスに通じる? 逆に反感買う気がするけど」


「……わかった、今のセリフは言わないようにしよう」


 アリエルに指摘されて世界最強の言葉は慎むことに決まった。


(けっこう好きだったけどな。このセリフ)


 リリスとミーコも納得の頷きをした。

 3人を残したのは選択としては間違ってないだろう。

 冷はたったひとりで先に進んでいく。


(俺じゃないと厳しいだろう)


 森は道が舗装されていて一本道になっていた。

 まるで上に誘いこまれてるような気もする。

 しばらく歩くと突如として森の中を抜けて城が現れたので驚いた。


(城?)


 何の前ぶれもなかった。

 城には入り口があり、大きな扉がある。

 近くには巨大な湖のような貯まりがあった。

 そしてもうもうと立ち込める湯気。

 硫黄の匂い。

 間違いなく温泉であるのが理解出来た。


(この臭いは間違いない、温泉の臭いがする!)


 それを城の施設が管理してるようにみえた。

 その奥には広大な敷地に草原があり、気持ち悪いくらいに魔物がうじゃうじゃといた。

 今までに遭遇しなかったのは、全部ここに集めたからだ。

 魔物はいつでもサイクロプスの指示で動けるのだろうし、へスティといたダークタイガーもここに居たと推定できる。

 

(奴はここに居る。俺が来たとわかってるのかな。とりあえず入り口を探そう)


 そこで急に冷にこえをかける。


「キミは?」


 城の前で立っていた冷に声をかけたのがサイクロプスだった。


「初めましてかな、俺は冷と申します。サイクロプスかい、それなら俺が今1番会いたいし、会いたくて仕方ない人なんだな、こんなとこで偶然会えるわけないか」


(まさかコイツか……)


「うむむむむむ、君の探しているらしいサイクロプスだが、何か用か」


「ウッソ〜。本当にサイクロプスさんか。会えてラッキーです、用と言われたら違うし、特別な要件でもなくはないんだけど。聞いてもらえます?」


(ラッキーだ)


「はっきり言え。こっちも忙しいんだ。暇な相手をしてる時間はないのだよ」


 この時サイクロプスはどうでも良かったのだが、直ぐに重要な件だと認識した。

 それはどうでもいい人物ではなく、ピルトの町で見かけた人族に似ていたからだ。

 はっきりと顔を記憶したわけではないから、断定は出来ないが似ていた。

 それに雰囲気はただの冒険者にはない空気を持つ。

 そして体型は普通だが鍛えられた肉体だとも見破った。

 もしあの人族ならなぜ、ここにきたのか。

 なぜ自分に会いに来たのかを考えた。

 来る理由がわからない。

 あるとしたら魔人は全員殺す。

 オークを殺したのを前提として。

 それならばサイクロプスの自宅の城まで出向く理由がたつ。

 逆にそれ以外では成り立たない。

 そして腰には長い槍か何かの武器を据えている。

 もう一つ理由として、ここまで来るのなら必ずへスティとであったはず。

 なぜなら道は一本道であるからして、へスティが素通りさせるかと疑問に思った。

 そしてあのもの凄い激しい轟音。

 へスティの魔力を感じないのはなぜか。

 いくら町に行ったとはいえ、多少は感じていた。

 それが全くないのはなぜだ。

 答えは決まった。

 

「あのさ、話があって、ここにある温泉の源泉について話がある」


(さっそく本題に入ろう)


「げ、源泉だと?」


 意外な答えだった。

 てっきりサイクロプスを殺しにきたと言うと思ったのだ。

 それがなぜか、温泉の源泉ときた。

 

「ハッキリ言わせてもらいます!! 俺はあんたが嫌いだ。マジでムカついてるぜ。源泉を独占してる、しかも源泉を利用して金まで儲けようなんてセコいしガメついし、世間をナメてるっつうか、いるんだよなこういう人。だから俺が説教に来たんだよ」


(俺を知ってるか……どうだろう)


「つまり、つまり、こういうことか。なぜここに来たのかは、温泉を俺が独占してるのが気に入らないから嫌いだと。そして俺を説教すると!」


「あんた偉いな、わかってるじゃないか。あんたが言った通りだよ。偉いついでに言うが俺は本気だぜ」


 冷は言ってることはほとんど冗談とも思える内容であるが、本人はマジである。


(意外とといったら変だが、魔人てのは話ができるかもな)


 サイクロプスにしてみれば面倒な話が来たというのが正直なところだ。


「……………まぁ城の中に入って交渉しようか。ここで話す内容ではないしな」


「よろしく」


(おお、戦わずに済みそうかな)


 城の内部は魔物は居なかった。

 予想に反して魔物はいなくて静かである。

 誰もいないのが奇妙なほどだ。

 

「あんた以外に誰もいないのか?」


 周りを見ても誰もいない。


(紳士な魔人か、ここまでは……)


「ひとりじゃない。当然いるさ、へスティという部下がひとりな。あれれ、そろそろ帰ってくる頃だが。まぁそれはいいとして椅子にでもかけてくれ」


「ああどうもな……そのへスティさんと2人だけか。こんな広い城にもったいないな。空いてる部屋もあるだろうに。誰かに貸したらどうだ。金になるぜあんたの好きな金によ。金は大事だよな。生きていけない金なしには。でもこれは儲け過ぎだろさすがに」


(ヘスティ……。知らない振りをしておこう。俺が倒して気絶させてると知ったら、面倒だし)


「ところで君の要件は温泉の源泉を開放しろと、それとも価格を下げろというのかい。それによっても違うんだよ」


「開放に決まってる。わざわざ来たのはその為だぜ。あんたが黙って開放してくれたら俺はそれで十分だ。帰るとしよう。あんたは話がわかる人とみた。だが断ったら俺は納得いきませんよって話だ。簡単な話だろ。どうよ魔人さん、俺の話に乗ってくれるか?」


 無理難題をふっかけた形の冷は、サイクロプスがどう出るか見定めたかった。


(さぁ、どう出ますかサイクロプスさん)


「き、君ね、俺が誰だか知ってて物を言ってるのかね。俺は魔人サイクロプスなんですよ。王都も恐れる魔人だ。その俺と交渉しようとしてだ、そのお前の話に俺が乗ったとして何の特がある。俺に莫大な見返りがあるなら乗るのも有りだ。だが今の話だと俺が一方的に大損するわけだよな。そんな馬鹿な話に乗るかよ。帰りな〜」


 サイクロプスは椅子に座ったまま冷に手を振った。

 もちろん帰れという意味だ。

 当たり前だ。

 こんな条件の悪い話はない。

 

「参ったな。それじゃあこれならどうかな。温泉の源泉は開放したら、あんたには俺から超お得なプレゼントをやろう。このナギナタだ。こいつはただの武器じゃないぜ、兄さん。普通には購入できない半端なくプレミア商品だ。今なら差し上げるっていう素晴らしい条件付きだ。どうだいこの話?」


 冷は源泉と引き換えに大事なナギナタを差し出した。


(先ずは交渉としていこう)


 これにはさすがのバアちゃんも驚いた。


((おい、わたしを交換条件なるものにするとは何事だい!))


(ここは俺に任せてくれ!)


 冷はナギナタのバアちゃんを説得するが、バアちゃんは納得などするわけない。

 どうやって交渉を進めるかは冷次第か。

 それともサイクロプスが破断するかで決まる。

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