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「わかったよアリエル、俺は反対側で寝ます」


「そうして!」


 テントでの寝心地は快適とは言えないが、冷はまるで問題はなく、むしろアリエルに向こうに行けと言われた方がショックで、実際に誰にも触らずに夜を過ごしたのであった。


「それでは私は真ん中辺りめ寝ます」


 ミーコが気を使ったのかアリエルと冷の間に入る。

 その後にリリスも同じ感じで、


「わ、私もそうします……」


 ミーコとリリスはアリエルと冷の間に挟まれた状態で寝るのだが、どちらに気を使って良いのかと悩むも途中で眠くなると寝ていた。

 アリエルは冷に対してかなりのいい様であったため、最後まで冷を警戒しているかと思いきや、お腹もいっぱいになり一晩最初に寝ていた。


(アリエルは結局は最初に寝たみたいだ。テントは楽しみだとか思った俺が馬鹿だったかも)


 冷は朝になりテントの外に出て状況を確認したく見てみると大きな山々が連なるふもとにまで来ていたようで、問題のサイクロプスはここの山のどこかにいるとわかると、闘志を燃やしだしていた。


(もう朝か。とにかくサイクロプスに会うのが先決だな)

 

「おはようみんな。よく眠れたかな」


「おはよう。大丈夫みたい」


「思ったより気持ちよく寝れた」


「何もしてないわよね!」


「なんだよ、俺は何もしてないぞ」


(神に誓ってしてない)


「わかりました、そう信じますとして出発ですか?」 


 その言い方だと絶対に信じてはいない言い方で冷を見つつ、アリエルは服の上から下着があるかを確認を怠らなかった。

 そこへギルドの使いが見えて、アリエルに返事をする。


「はい、もう直ぐガッパオ山に到着します。私はそこでお別れして帰りますので、そこからは徒歩で向かってください」


「わかった、そうします。それと、あなたは温泉は好きですか」


(もう近いのか)


「ええ、寒い日には入ると温まりますから、でもここ数週間は入ってませんよ。お湯を温めるのは費用がとてもかかるのです。だからウチの近所の人も入るのは3日に1度、または1週間に1度といった具合さ」


「もっと入りたいてとこか。それなら俺に任せてくれ。早い話がサイクロプスに言って源泉を独占するのはやめろ、テメエひとりの物じゃねぇ、こっちはお前の自己中で半端ねえ迷惑こうむってんだ、だから早いとこ俺の言う通りにしやがれ、と言いいに行ってくる」


(これくらい俺は怒ってるわけよ)


「そ、それは不味いのでは、さすがに……」


「いいや、言ってやる!」


「……が、が、頑張ってください」


 ギルドから指名されて来た者は帽子としては中級クラスですでに実力は認められており、冷達を届けるのには申し分ないと判断されたのに、冷の横柄と言ってもいい態度には、正直ついていけない、任せられない、サイクロプスが怒らなければいいがと願うのだった。


「ここまでありがとう、俺のやりたいようにやらせてくれてギルドに帰ったらユズハさんによろしく。俺は必ず帰るから、それまではクエストはできないけど、帰ったらクエストを紹介してくれといっておいてくれ」


(必ず帰ります)


「言っておきます。ユズハさんもきっとお待ちしていますから」


 ギルドの使いが説明して馬車を走らせらると、再び森の舗装などされていない、冷の居た世界では必ず車が走る道はアスファルトで舗装されていた、道のため速度は限られていて、なおかつデコボコな道で揺れが激しかった。

 馬車が走り出して小一時間がたち、急に風景がゆっくりとだが速度が落ちていくのが冷には感じられ、窓から外をのぞくと馬は停車した。


(馬車ってけっこう揺れるんだ)


「もう着いたの?」


「多分着いたのだろう。俺が確認してくるからここにいてくれ」


(外には魔族がいるかも……)


「わかったわ」


 停車した場所は冷は思ってもみなかったのだが、町のように人が集まっていて店も何軒かあり、魔族が住まう山と聞いていたから、ひょうし抜けした。

 冷は停車したので外に降りてみたら、ギルドの使いが会いに来た。


「残念ながら、お別れの地点はここになります」


「そうかい、じゃあお別れだ。それとここは間違えなのか、魔族がいるから人なんて誰も住んでないとおもってたぞ」


(普通に人族がいますよ)


「ここはガッパオ村でして、古くから山の野菜が有名でして農民が多く暮らしています。私も今日はこの村に滞在しまして、冷さんが戻ってくるまでお待ちしますよ。ですから、サイクロプスと会った後にこの村の宿屋に来てください」


「宿屋だな、サイクロプスと会った後に必ず行くようにしよう、そこで待ち合わせだ」


「はい、約束です」


 ギルドからの使いと冷はこの村の宿屋で落ち合うと約束し、再び馬車に乗って帰ることに、それにはサイクロプスとの交渉がうまくいくのが条件で、サイクロプスが話に乗ってくるか、冷の条件をきいてくれるか、それ以前に会ってくれるのか、全てはこの後になってみないとわからないと意を決した。


(俺が殺されたらどうするかな……。まぁその時は使いの人はかえるだろう)


 村はピルトの町と比べて小さく人口も少ないとみえた冷は、一見すると穏やかな風景にも注意を払っていて、魔族がどこかに居る可能性もあるし、サイクロプスという魔人の手の届くとこだけに、気を引き締めた。


「村から歩いて山の頂上を目指すようだ、そこまでは歩きだぞ、歩きが嫌とは言わせないからな」


(山登りは俺の得意でもある)


「歩きますよ、歩くのはいいけど、魔族の気配がないのは不思議だわ」


「俺もそれは気になったが、気にしても何も変わりはしないだろうよ、出たら出ただ、会いにいく手間が省けるってもんだ。そうだろリリス、山登りが好きなら別だが」


 冷はどうせ魔人に会うのなら魔族にてっとり会って連れていってもらった方が早いと考えたのであり、こんなデカい山のどこに居るのかわかるわけないと思った。


「別に余計な魔族には会いたくないが、サイクロプスがどこに居るのかは知りたいなぁ。それと山登りなんてごめんだよ。歩くのは嫌いなんだよ」


「じゃあリリスはここに居て置いてくぞ、いいのか」


「それはもっとごめんだ!」


 リリスは山登りの経験など当然にない、そもそも山を知らないし、登る必要がなかったのであるから、嫌々ながら歩いていくのであった。


(リリスは俺の予想通りか)


 冷達が山登りしてる方向にいたのはサイクロプス側近である。

 魔人へスティは、下山してガッパオ村に向かう最中で、要件はサイクロプスに言われて周辺地域からの金品の取り引きであった。

 すでに取り引き相手の町の代表は5名いて、とある店で待っていて、金品の用意はしていなく、文句を言われるのが目に見えていたので、怖くて震えていた。

 魔人へスティは魔族20匹を引き連れて下山しつつ、前方を確認すると冒険者の男がひとりと女の子が3人一緒に歩いて山を登ってきているのをみるや、本来なら許可証を与えた農民だけしか登ってこられない、これは変だなと足を止めて待つことにした。

 へスティが確認した者は冷達であるのだが、彼らは気にせず、もちろん許可証などないし、必要があるとも知らないというわけで、その距離は縮まっていくのだった。

 ある程度の距離、約50メートルくらいに差し掛かった時に冷は異変に気づくと、相手はとっくに気づいてるので見下ろしていた、アリエルらに待てと指示を差し出す。


「ちょっと待てよ。誰かいる」


(誰だ……)


「魔族かしら」


「アリエル、当たりだな。どう見てもアイツらは人族じゃねえな。俺の予想では悪そうな魔族だぜ」


 へスティの姿は人の姿をしてはいるが、気味悪さも兼ねていて、黒い服に黒い鎧をつけ、冷の中ではどう見ても魔族という感じである。


(俺を見てるな。どうやらお出ましってか)

 

「逃げる気!」


「逃げる? そんなの無駄だろ。アイツらにサイクロプスの居場所を教えてもらうのさ」


(それが1番の目的です)


「仲間なら言わないよ。もし言わなかったら?」


「言わせるようにしてやるさ。拷問でもしてやろうか」


(嘘です)


「魔族相手に拷問はないだろ!」


「とにかくお前たちはここで待ってろ。俺がかたをつける」

  

 冷がひとりだけでへスティ達に向かっていくと、へスティは以外な行動に驚くのだが、普通はへスティを見たら冒険者は怯えてしり込むのであり、誰も前に進んで来る者など皆無であった。


「誰だお前は? この山の許可証を見せろ。もちろん持ってて当然な物だ。待ってないはずはない」


「許可証? そんなもん持ってねぇな。あんたは魔族か。まぁそうだろうな、人族なら怖すぎだろ」


(許可証とか必要かよ。江戸時代にはあったらしいが)


「な、な、な、な、なんだと! きさまこの俺様を知らねえのか。俺様を知らずにこの山を許可証なしで登ろうとしたのか!」


「あんたが誰かは本当に知らない。機嫌悪くしたならごめん、謝るよ。許可証なんて持ってないがこの先に用事がある、通してくれ」


 冷は直ぐ前まで来ると、へスティに向かって名前も顔も知らないと侮辱するかの発言をかました。


(突然に怒りだしたか。こいつ短気とみた)


 言われたへスティも最初何を言われてるのかと戸惑う程の突拍子もない発言であった。

 イラッとしたが、殺すのはまだ早いと留まることにした。

 なぜかは、瞬殺するのは簡単そうだが、まだ相手の正体が不明であり、特に危険もなく思えて、何しろ許可証の存在すら知らないのは冒険者としては考えられない、のであるからして殺す価値もないと判断した。


「用事があるだと。言ってみろ、内容によっては通すわけにいかないからだ」


「要件は1つだ。サイクロプスに会いたい。この先に居るのだろう」


(内容によってか。はたして何と言うかな)


「な、な、な、な、な、何! さ、さ、さ、さ、サイクロプス様に要件があると。サイクロプス様とは知り合いかと言えば見たこともない顔だ。それに人族に会うなど聞いてない。ではどういう理由で会うと?」


 へスティは相手の男が突然に予想もなくサイクロプスと発言したので驚いてしまい、警戒心を男に対して出しその瞬間から敵対視しなければならないと直感し、後方に控える魔族らに攻撃に入るように、合図していた。


「理由はあんたに言うつもりはないけどな。サイクロプス様にって言ったな。てことはあんたはサイクロプスの下についてる配下だろ。サイクロプスの居場所を知ってるよな、知らないとは言わせない。まぁ言わないなら退いてくれ邪魔だから」


(配下の魔族らしい。こいつなら確実に知ってる。俺としては好都合だ)


「ふふふふふふふ、この俺様を知らない野郎に邪魔扱いとはな。殺して欲しいみたいだから、殺してやろう。死体をサイクロプス様に献上してやるよ。そしたら会えるだろ、あはは! 殺れ魔族ども、あの若造を殺せ!!!!」


 遂に頭にきたへスティは生意気な発言をする冷に攻撃命令を出し、配下の魔族であるダークタイガーが20匹、のそりと冷の前に現れた。


(結局はバトルですか。それなら最初からバトルで良かっただろう。面倒な会話した)

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