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 魔法使いを習得したので嬉しくなった時。

 イリサは本当に冷が勇者や英雄クラスの存在までなると信じざるを得なくなった。

 この世界には伝説がある。

 過去に3人の魔王が存在していた。

 幸いにも3人はバラバラの時代に生まれており、勇者の力で封印に成功させた。

 しかし王都は恐れてるのは初めて3人の魔王が同時に封印が解けて目覚める可能性があると発表した。

 ひとりでも世界をほとんど壊滅させたと歴史の文献には書かれていた。

 この時代は3人同時に目覚めると、どんなに力を集めて勇者が現れようと絶望的といえよう。

 ただこの青年ならば、とイリサは考えた。


 その頃宿屋では平穏に時間を過ごしていた。

 アリエルは聖書を持ち椅子に座る。

 聖書を読んでいるのが1番落ち着くので、購入した。

 聖書はどの世界にも存在してるが、この世界のも読んでおくと役に立つだろうと思っていた。

 リリスは逆に聖書は読まない。

 興味がないし、それよりも魔力を増やしみんなを隷属させてやると野望を抱いていた。

 ミーコは3000万マリの大金は奴隷商館に払ったが、まだ残りはたっぷりとあるので、どうやって奪ってやるか思案中。

 ネイルはまた癒やしの手をしてあげようと考えていた。

 冷は養成所を出るとみんながいる宿屋に帰った。


(みんなが待ってるから早く帰って報告としよう)


 宿屋ではエクセリア店員が帰りを待っていて、


「おかえりなさい冷さん、養成所は楽しいですか。厳しい訓練も頑張ればきっと乗り越えられるよ」


「もう今日で卒業したさ」


「えっ!!!」


 エクセリアは聞き間違いだよなと考えたが、卒業したと聞こえ、口を開けたまま立ち尽くした。

 卒業など出来るわけないから。

 報告だけはしておこうとした冷の親切心が逆にユズハの頭を悩ませた。

 

「俺はもう通うことはありませんから。またクエストの時にお世話になります!」


「あっ、ちょっと……嘘よね……」


 ギルドを出て宿屋に帰る。

 部屋に帰ると4人とも仲良く待っていた。

 最初にアリエルが養成所の様子を伺って。


「おかえりなさい、今日は授業、寝ていないよね」


「もちろんさ、寝るわけないだろ」


(実はほとんど、寝てたけど)


 リリスが落ちこむ冷をなぐさめようとして、


「少しは魔力は使えるようになったかい。昨日は何も出来ず終わったので残念がってたから心配してたんだ」


「魔力なら、もういいんだ」


「お前なあ〜、出来ないからって諦めるのが早いぞ。1つの事を習得するには時間がかかるんだ」


「リリス、違うんだ」


「思ったより、だめだなお前は。もう少し骨のある奴だと思ったぞ」


 リリスは残念な目で冷を見た。


「魔法使いの学科は卒業して魔力は使えるようにはなった。あとは自分で訓練して魔法スキルを試していくつもりさ。だから心配は要らないのさ」


「えっ、と、今何て言いましたか。魔法使いに慣れたと聞こえたのですが」


「魔法使いになれたと言ったのさミーコ。魔法使いの講習は卒業しちゃった」


「えっええええええええ!!」


 全員が驚いて動きが止まってしまった。

 魔力が使えず残念そうに帰って来るのを励ます予定だったから、驚いたのは無理もない。

 

「だって昨日は全くダメだったのでしょう。そんな一夜で変わるわけない」


 アリエルが納得いかない顔で言うと冷はニヤリとして、


「一夜で変わるのがこの俺なのさ。新たなる伝説を作る男と言ってくれよ」


「それでは魔法が使えるようになったと?」


「いいや、今の段階では魔力が使えるようになった程度だな。魔力を頭と体で認識したといったらいいかな。なんとなくこんな感じかって。理解できれば後は簡単。直ぐに魔力を放出出来た。でもまだ魔力の強さをコントロールしていないし、自分の魔力量の上限もわからないから、俺としても実践で使いながら自分の物にしていくよ」


「先生は何て言ったの……。そんな簡単に卒業させるなんて有り得ないから。きっと大ニュースになるかもよ」


「そう言えばイリサ先生もニュースになるとか何とか言ってたかな。あまり有名になるのも困るけどな」


 困るとは言いながらも照れ笑いしていた冷にミーコが、


「なぜかニヤついてるけど冷氏」


「そんなニヤついてなんかいないさ」


「もしかして有名になれば女の子にモテるとか考えたのでは?」


「い、い、い、いや、そんな不純な考えはありませんです俺は」


 一生懸命に否定したが前にいる女の子達には説得力を欠いていた。


「でも魔法スキルなしで魔人を倒したのは驚き。今の能力に魔法スキルが加わるわけだから、強さは格段に向上する。そうなると次の魔人と出会っても戦えるようになる」


 ミーコの説明に対してリリスが、


「それはわからないぞ。魔人は強い。仮に魔法スキルが使えたからといって次の魔人に対抗できるとはハッキリと断言はしないほうがいい。落ちこむのも困るが、楽に考え過ぎるのも考えものだ。要するに魔人をナメるなってこと」


 リリスはミーコに反論すると、


「魔人は強いと思う。それは私も否定はしない。でも冷氏なら魔人を倒せる気はする。根拠のない話だけど冷氏は普通じゃない物を持っている。養成所の件もそうです。常識破りのところかあるし」


「常識破りか、そもそも常識がない気もするけどなお前は……」


「なっ……リリス、君は俺を勘違いしてる。俺は至って普通の常識人だよ。悪い魔人から世界を救おうとしてるのだからな」


「本当かよ、単に女の子と遊びたいのが本音だろ。げんにこうしてネイルを連れこんだんだからな!」


 リリスがネイルを見て言ったらネイルは、


「あら、私はご主人様と遊ぶの大好きですよ!」


「あはは、ネイルは俺の味方なんだよリリス」


「なぜ、なぜ、そこは冷を攻めるところだろネイルよ?」


 リリスがネイルに問いただすと、


「ご主人様が好き!」


 ネイルは冷に抱きついてしまい、リリスは、


「……」


 何も言う気がしなくなってしまい、黙り込んでいた。

 

「ネイルは冷にべったりだから何を言っても無駄なのよ!」


「そのようだな」


 宿屋に帰った冷は、養成所での件が理解してもらえず説明に手こずってしまったが、魔力が使えるのはわかってもらい、ホットしていた。

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