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イリサから挨拶されると一瞬沈黙が教室内に訪れた。
次の瞬間には歓喜に変わっていた。
「う、嘘でしょう!!!!!!」
「あの冷さんなのかよ!!!!!!」
「握手して!!!!!!」
冷はあっという間に生徒に囲まれる事態に。
教師であるイリサは、ある程度はこの事態を予想はしていたが、生徒の方が新しいルーキーに憧れの声を上げるので、
「ちょっと、みなさん席について!!!!」
だが生徒達の反応は予想を上回るもので落ち着かせるのも困難であった。
中級魔人を倒したという事件は、町中に広まっていて冷は生徒達の間ではスターとなっていたのだ。
「イリサ先生が困ってるからみんな席についてくれ!」
冷は落ち着くように言ったが実は視線は別のとこに。
(うわ〜〜〜〜、可愛い子がいっぱいいるな〜〜〜〜)
とこの調子であった。
世界最強の武術家の養成所通学が始まった。
それから授業が始まり最初は座学であった。
これは冷にとって地獄と同じ。
じっと教師の話を聞いてるなんて退屈であった。
魔法使いの授業というのもあって、多少は興味を持って聞いてられた。
「魔法には種類がある。火、水、土、雷、光、闇の属性などに別れている。レベルが上がると新たに魔法を覚えていくのですが、属性はひとりにつき一つと決まっています。生まれつきの属性なので成長していけばわかります。魔法は無限に使えるわけではない。魔力が尽きると使えないので自分の魔力量を普段から知っておく必要があるのです」
黒板に書かれた魔法の説明文。
自分がどの属性なのかわからないが冷は話を聞くよりもイリサの体のラインに興味を持っていた。
生徒達は真剣に授業を聞く者もいれば、すでに寝ている者もいて、義務教育の学校と変わらない風景であった。
だがそこに油断があって、
「冷くん! 今、寝てたでしょ!」
「はい、気をつけます〜」
油断して居眠りしていたところを、指摘された。
「冷くん、廊下に出なさい」
「え?」
冷はイリサから強い口調で命令されてしまい、厳しい視線を浴びる。
(なんだか嫌な予感するな〜)
予感は当たっていた。
生徒は知っていたのであり、冷がこの後どうなるかを。
それで残念に思っての沈黙であった。
怖がりながらながら出ると、廊下で座らされた。
なぜかわからないが、縄でぐるぐる巻にされ、
「ここで反省しなさい」
「はい」
素直に謝ったのは理由があった。
直ぐに縄など抜けられるからで、幼少期からいつ敵に縄で巻かれても抜けられるように訓練していたのだ。
関節を少しずらして緩くすると、縄を抜けられる技。
少年であってもすでにマスターしていて実行する。
(あれ? 抜けられるはずなのにな〜〜)
[縄縛り]
言うことをきかない生徒を縄で巻いてしまう。
縄に魔力を込めるので簡単には抜けられない。
その後、縄で縛られたままじっと我慢して座学の授業は終わる。
教室から出て屋外にいき、魔法の訓練となった。
座学と違い体を動かせるため、冷は眠気が取れて元気が出てきた。
(外での授業は面白そうだな)
イリサはまず自ら魔法を披露しお手本を示すことにした。
用意したのは油。
これは魔力に対して反応する特殊な油であった。
「さあ、魔法を使うためには魔力が必要となります。その為の魔力を増やす訓練が要ります。魔法を覚えるよりも地味ですが大切な訓練です。この油は魔力を込めると反応しますが、もちろんあなた達は見習い、ほとんど反応はないでしょう。規格外の生徒もひとり居ますが、私のを見ていて」
油の入った樽。
樽にイリサは手をかざした。
油はゆっくりと波打ちだしていく。
「おお、油が触れてもいないのに動いているぞ」
生徒達は樽の油に注目する。
油は激しく動いていくと棒状に形が変化していったら、上に伸びていき噴水のようになった。
「うわ〜噴水だ! さすが先生だな」
生徒達は感心してイリサを見つめる。
「では樽を用意しますから油が変化するよう魔力の鍛錬してください」
「はい」
樽が用意され生徒達はイリサの真似をする。
手をかざして努力はするが変化はなかった。
まだ見習いの生徒にはとうてい無理な作業であり、時間をかけて習得していくので、誰も油は変化しなかった。
「だめだ、何も動かないや」
「俺もだ」
「私もピクリともしないわ」
生徒達が苦労しても成果がでないのを見て、当然だと思っていたが最後の冷が気がかりであった。
何といっても規格外な生徒である。
魔力は無いといえどんな結果になるかは、読めなかったし注意深く観察することに。
冷は様子を見てから、自分でも実戦してみる。
手をかざしてみて、手に力を込める作業はイメージ出来た。
あくまでイメージであり実際に魔力など使った経験はない。
冷の思いとは違い全く油は変化しなかった。
(あれ〜おかしいな〜〜。難しいもんだな)
「へ〜〜さすがの冷さんでも魔力はないんだね」
「うん、難しいさ。みんなも誰も動かないみたいだ」
「みんな初めてなんだから無理だよ」
生徒が冷になぐさめるように言った。
規格外の生徒と呼ばれて持ち上げられただけに、生徒達はやや落胆していた。
所詮同じ生徒なんだと思う生徒もいた。
冷はがっかりしてはいなかった。
現世では魔法など存在しないのだから、出来なくて当然である。
しかしなぜ出来なかったのかの分析を開始していたのだった。
「冷くん、気にすることはない。それが普通なのだし、毎日通って訓練するのが大事だから。最低でも1年は覚悟しててね」
「はい、そうします」
それから何度も訓練したが、結局冷は魔力を得ることなく授業は終了した。
(コツが掴めないなあ〜)
世界最強の武術家にとって、魔力の訓練は想像以上に壁が高かった。
魔力が使えれば武術と魔法が両方使える。
2つ合わされば魔人との戦いで活躍するだろうと冷は期待した。
[冷]
縄縛りを覚えました。
養成所を出るとアリエル達は待っていた。
「訓練を拝見してました。魔力は初めは少なく徐々に増えていくもの。継続が大事です。特に転生時に魔力を授けたわけじゃないので」
「俺も気長にするつもりさ。明日も通うぞ」
「それでいいです」
養成所では魔力は無く、何も成果は得られなかった。
やや気落ちして宿屋に帰った。
部屋ではネイルが待っていたので、安心した。
(宿屋から逃げてなくて良かった)
もしかして逃げてるとも、考えてしまい笑顔で待っていた。
「おかえりなさいご主人様、どうでしたか」
「いやあ、難しいものだな、魔法どころか魔力さえ無くて、いちから訓練さ」
「それは大変でした」
全員揃ったところで食事を取ることにした。
近くの飲食店に決めた。
「なあミーコ、キミも養成所に通って盗賊に職業を得たのだろ。何日くらい通ったのだい?」
「1年は通いました。授業料だってバカになりませんので、そう何度も通う人はいません。ただ人によって個人差があり早く習得した人は早く終えられますが、普通は1年、早くて10か月でしょう。そのくらいは考えていた方がいいかと」
「そんなに長いのか、俺はせいぜい1カ月と思っていた」
「いくら超規格外の新入生といえ、それはあり得ません。1カ月で魔力が増えてくるくらいでしょう。半年で魔法使いのレベルが2か3になれるにでは。そうなれば初級魔法の1つは覚える感じですかね」
「う〜〜〜ん、そんなに長いの無理だな〜〜」
「普通です、普通」
「俺にとっては長い」
「お前はどれだけ飽きっぽいんだよ!!!」
子供のような冷に、リリスは両手を広げて苦笑いした。




