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 ウインドキルは成功したが、体毛はなくなっていた。

 難なく1匹目を討伐し終えた冷は、次に別のスキルを考える。

 

(体毛はもう無いから1匹しか撃てないわけか。使いどころを考えないと無駄に終わってしまうな)


 次にスキルストレージから選んだのは、インフェルノである。

 これはサイクロプスから習得したスキル。

 大変に強力であったのは記憶に新しい。

 同じくサイクロプスから習得した烈火拳との違いは何なのかも知りたかった。

 烈火拳は冷の拳術と組み合わせて、ガーゴイルを倒した決め手である。

 烈火拳は腕が赤くなり火属性となり拳の破壊力が増大した。

 インフェルノはどうなるか。

 ぜひとも試してみたいと思った。


(楽しみでもあった。俺もインフェルノには苦しんだ。危なく焼き死ぬ思いもした。かなり期待してる)

 

「次はインフェルノだ!!」


 スキルのインフェルノを選んで使用した。

 初使用となる。

 使用したと同時に冷の両腕は赤く染まる。


(腕が熱い)


 火属性が腕に宿ったのだった。

 だが完全に使える形ではなく、まだ不十分となる。

 インフェルノを使用するには、少し時間がかかるのが難点であった。

 火属性の付与能力は高い分、やや時間を要するのは仕方ない。


(スキルの発動までにスキが生まれるのが難点か)


 魔力を込めて完全に使用可能状態となる。

 ワームズは残り5匹。

 暴れまくり冷を見据える。

 駆け足でワームズに拳を撃ち込んだ。

 ワームズの頭に拳が直撃した。

 直撃した後には爆裂音が生じた。

 ワームズはその一撃で焼かれて破裂していた。

 火属性の効果は絶大であった。


(ワームズなど一撃で倒してしまうな。烈火拳よりも遥かに上のレベルの効果だな)


 冷が実感したのは正解であり、烈火拳よりも数段上のレベルの破壊力となっていた。

 しかし冷はこの後にスキルの特性も知ることに。


「あれ……インフェルノが付与されてないぜ?」


 先程まであった両腕の火属性は消えて無くなっていた。

 これはスキルの特性である。

 烈火拳は破壊力は低いが継続して使用状態となっていた。

 対してインフェルノは、継続性は低い。

 再び使用状態となるには、時間が必要となる。

 つまりは連続的に攻撃は出来ないスキルであった。

 

(インフェルノは単発しか使えないのか。破壊力はあるんだけどな)


 しばらくしてインフェルノは使用状態とかわり冷は準備する。

 1度目と同じくインフェルノの火属性は付与されていた。


(もう一度使うには時間が必要か。最初も準備時間が掛かったのだから当然か。烈火拳とは相手によって使い分けるのがベストだな)


 インフェルノを再び使用しワームズを討伐した。

 もちろん一撃である。

 やはり火属性の付与は消える。

 

(それならここで烈火拳は使えるかな)


 烈火拳のスキルを選択し発動してみると、問題なくスキルは使用状態となる。

 

(烈火拳でワームズを攻撃してみるか)


 残りのワームズに対しては烈火拳での攻撃を試してみることに。

 冷の拳の速度にワームズはまるでついてこれない。

 ただ殴られるだけに終わった。

 烈火拳でも問題なくワームズは討伐できるのが証明された。

 インフェルノでも討伐出来たが、やはり破壊力としてインフェルノが上のレベルであると判明し、準備時間がかかるのと、再使用にはまた時間を要するのがわかる。

 ただワームズが冷のスキルの能力の違いを比較できる程に強くはなかったのである。

 

(もう少し強い魔物じゃないとダメだな。ちょっと弱すぎた)


 今の冷からしたら、ワームズのクエストランク6などこの程度となる。

 クエストランク6は決して弱くはない。

 町の冒険者でもかなりの上級者向けのレベルとなり、相当な経験を要する。

 冷が余りにも上のレベルであったということで、見ていた彼女は、


「……なんなのこれ……」


 アリエルを驚かせた。


「……相手にならないってのは、この事を言うのですかね」

  

 ミーコも言葉にならない。

 自分達のレベルとはケタ違いであると思い知らされる。

 ワームズを全滅させて彼女達に近寄ると、息も切らせず余裕たっぷりであった。

 しかも冷は気づいていないが、実はワームズはスキルを持っていた。

 スキルはサーフェスマナといい、魔法攻撃防御力アップの効果となり、普通に魔法スキルを放っても効果を減らすはずであった。

 だが冷の魔法スキルはその効果を打ち消してしまい、殺してしまったのだった。

 余りにも攻撃力が高すぎてサーフェスマナがあるのすら気づかなかったわけだ。




柳生 冷


性別 男

種族 人族

 

ユニークスキル スキルストレージ 

職業 無職狂戦士バーサーカー

レベル4701←300アップ


体力  26109←900アップ

攻撃力 26109←900アップ

防御力 26109←900アップ

魔力  26109←900アップ

精神力 26109←900アップ

素早さ 26109←900アップ


剣術レベル2239←200アップ

柔術レベル2239←200アップ

槍術レベル2239←200アップ

弓術レベル2239←200アップ

斧術レベル2239←200アップ


サーフェスマナを覚えました。




 ワームズを討伐しても余裕で彼女達に近寄った。

 

「今回のクエストはこの辺にしておくか。スキルを確認できたから良しとしよう」


(感じはつかめたな)


「お前のおかげてワームズは全滅しちゃったぞ。他の冒険者だってクエストするだろ。どうするのだ、もうワームズのクエストは出来ないぞ」


 リリスが冷にやり過ぎだと忠告した。

 誰が見てもその通りと言えた。


「あはは、俺はまだまだ余裕なんだけど。それと君たちのレベルが上がってるのはわかった。俺としてはそのことが1番の褒美だ。ワームズなどどうでもいい。君たちが強くなってくれれば嬉しい」

 

 彼女達の成長がなによりも嬉しい冷は、生粋の武術家であった。


(成長著しいとはこのことだな)


「お前の考えには、ついていけないところが有りすぎる」


「リリスの意見に賛成します。もっと大切にしてください。ワームズは強かったですよ。もし誰かが大怪我してたら、どうしますか?」


 ミーコが怒り気味に言った。

 それでも冷は謝ることなく、


「そうじゃなければ成長はしないのだ。自分を高めるとは危険は付き物なのさ。俺も何度死にかかったかしれない。今まで生きてこれたのが不思議なくらいだ。君たちも俺の経験を教えたいんだよ」


「……ダメだこりゃ。ついていけません」


 アリエルはがっくりと肩を降ろした。

 そのアリエルの背中を押してミーコが、


「それでは町に帰りましょう」


 クエストを終えて冷達はピルトの町に帰ることに。

 冷はなぜ彼女達ががっかりしているのか、わからなかった。

 かなりの痛い性格と言えた。

 いつものように冒険者ギルドにクエストの結果報告をする。

 受付けのユズハ店員と目が合うと、


「えっ、ちょっと待ってください冷さん。クエストランク6をもう終えたのですか?」


 毎回ではあるが今回も驚いて言う。

 普通に冷は、


「はい終えました。ちょっと早すぎたかな」


(ランク6だともっと時間かけた方が良かったのか、もう遅いけど)


「早すぎです。確かお仲間に今回は任せてレベル上げをしたいんだとか言ってましたよね。それならもっと時間がかかるかと思ったのです」


 冷ならともかくアリエル達では難しいし、相当に困難を極めるとおもった。

 そこでアリエルが、


「ユズハさん、今回は私達が倒しました。本当です」


 完全に嘘ではない。

 事実、倒してもいる。


「アリエルさん、素晴らしいです。では、ワームズ1匹の素材を渡してください」


 ユズハ店員はアリエル達が倒したと聞いて1匹と思いこんだ。

 数匹倒す必要ない。

 クエストの条件は1匹でオッケーであった。

 アリエルはやや申しわけなさそうに、


「あのね、素材は1匹じゃないのよね」


「えっと……どういう意味ですか?」


 アリエルの説明には伝わりづらい部分があり理解できないところもある。 


「全部で6匹分あるから、はい、どうぞ!」


 ミーコがユズハの目の前にドカンと置いた。

 するとユズハはその量に圧倒されて、


「はあっ! これ全部アリエルさんとミーコさんとリリスさんの?」


「ちょっと違うかな、いい忘れたけど、1匹は私達の分。残りの5匹は別」


 いくら何でも変だとは思ったがユズハは、


「あ、あの、てことは、5匹は冷さんがってことかな」


「ああ、そうだよ俺が討伐してしまったんだ。なんかあそこにいたワームズ全部倒したかもな」


 言わなくてもいいが言ってしまった。


(黙ってた方が良かったのかな)


「全部ですか! ははは、は、それはどうもありがとうございます。私が提示したのは1匹だけなのを全部倒していただいて……」


 ユズハ店員はワームズが倒せるかどうかと悩んでいたのに、この結果には喜んでいいのか、わからないのだった。

 ただわかったことはアリエル達の成長が目覚ましいということ。

 今回のクエストを終えて、ギルドとしては冷は特別扱いしてある。

 それにプラスしてアリエル達も普通以上の扱いをするのを検討しなければならなくなった。

 つまり彼女達の冒険者としての評価値を上げる必要がある。

 成長期なのかそれとも潜在能力が高いのか、レベルの上がる速度が著しいと感じた。

 周りにいた冒険者達も彼女達の活躍には驚いていた。

 冷だけでなく美少女にも冒険者の素質があるとわかったからだ。

 

 人族が誰も寄り付かない地。

 霧がかかり魔の臭いが漂う。

 とあるダンジョンでは魔人のひとりであるゴーレムがいた。

 ゴーレムはガーゴイルと同じく中級魔人と評価された魔人。

 慌てた様子の配下の魔族がやって来て報告する。


「ゴーレム様、大変なことになりした!!!」


「どうした?」


 この様な配下の慌てように、ゴーレムも気になる。


「が、が、ガーゴイル様が冒険者に負かされたと噂が入りました。王都に潜入している配下の者からの情報、間違いありません」


 それは魔人からしたら信じられない情報であった。

 聞いた途端にゴーレムは、


「な、何!! ガーゴイルが負かされただと! あり得んな。あのガーゴイルがそうやすやすと負けるわけないっ」


 いきなりガーゴイルが負けたと聞かされても信じられないとなった。

 ガーゴイルの強さを知ってるゴーレムからしたらふざけた話となる。

 それでも話を続けて、


「本当に負けたのですゴーレム様」


 配下の魔族は恐れつつも反論する。

 

「何を根拠に言うのだ!」


 嘘と決めつけてゴーレムは大声で言ってしまう。


「ひえっ! すみません。でも、でもあの冒険者が関わっているとしたら……」


 怯えながらも冷の名前をちらつかす。


「あの冒険者だと、確か名は冷とか言ったな。サイクロプスを倒した奴か……。それはガーゴイルにも言ってあったはずだ。まだ情報も少ないし、近づくのはこちらが不利だとな。どうして接触したのだ」


 ガーゴイルには魔人達が集まった際にも言ってあった。

 特にガーゴイルはサイクロプスと仲が良かったからゴーレムも心配していた。

 その心配が的中したのだった。


「どうして冷が、ガーゴイル様と接触したかは不明です。たぶん偶然だと思われます。なぜかあの冷が動くと魔人様達と接触します。不思議ですが」


 ゴーレムをこれ以上怒らすと命が危なくなると感じつつ話した。


「ぐぐ、ガーゴイルは死んだのか」


「いいえ、生きて王都の牢獄に。サイクロプス様と同じく」


 実際には同じ部屋ではなく、別々の部屋に牢獄されていた。

 同じ部屋に入れたら危険だと判断されたから当然である。


「そうか、生きていればいい。いつか奪還してやろう。それまで待ってろよ……」


 ゴーレムは生きていると知りホッとした。

 同じ魔人として必ず取り戻すと心に誓う。

 声には冷に対する復讐の気持ちがこもっていた。

 

「ゴーレム様の気持ちは痛くわかります」


「手始めに、冷って冒険者を半殺しにして食ってやろう」


 ゴーレムはグラスを叩き割り冷を憎んだ。

 魔族は殺されると思い体が固まった。

 冷には良いことなのか悪いことなのか。

 魔人を倒す為に異世界に来た。

 魔人から冷に接触するのは、話が早い。

 しかし相手は国からも敬遠される魔人であった。

 

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