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第54話 国際警察組織の創設  2019.4

~魂の選考と世界の変化~


【ニューヨーク・国連本部 特別会議室】


晴れやかな春の日差しが、大理石の床に斜めの光を描いていた。国連本部の巨大な会議室には、各国の代表が並び、緊張と期待を抱えた眼差しで壇上を見つめていた。


壇上に立つのは、事務総長アンサ。長年にわたり国際秩序の再構築に尽力してきた人物であり、今日の発表は、その集大成でもあった。


アンサ事務総長

「本日をもって、国際警察組織の創設が正式に承認されました。この組織は、国境を越えて世界の秩序を守る、まったく新しい警察機関です。」


会場には拍手が広がったが、その奥には、静かに歯を食いしばる代表たちもいた。特に、旧来の治安機関の力に依存してきた国々の代表たちは、その意味を痛感していた。


リリィはその場で静かに立ち上がり、控えめに礼をした。その姿は華やかではなく、むしろ清廉さを象徴していた。


彼女の胸には一つの決意があった。


【選考の方法 魂の色】


会議後、リリィ、ジャック、クロシャは採用方式の最終確認を行っていた。


リリィ

「私たちが用いるのは、勇者ギルドでも使われてきた“魂の鑑定”です。これなら、汚職も裏切りも、魂の濁りとして見抜ける」


ジャック

「だがそれは現実世界の“常識”を覆す方法でもある。FBIやMI6、国家警察、諜報機関、その多くは反発するだろう」


クロシャ

「甘さを許せば、数年後に腐敗する。最初から骨まで清らかな者だけを集める。それが唯一の正道だ」


そうして決定された採用方法は、魂の鑑定と、虹色の風メンバーによる面談の二段階選考だった。


【世界各地で始まる選考】


水晶に手をかざすと、魂の色が浮かび上がる。純粋な魂は白く、正義感ある者は金色や銀色、純白に。だが、欲にまみれた者や、他人を犠牲にしてきた者の魂は黒ずみ、濁っている。


国際警察採用試験会場、


ある会場で、怒号が飛ぶ。


ベテラン警官A

「俺は二十年、最前線で命を張ってきたんだ!なぜ俺が落とされる!」


リリィ

「あなたの実績は否定しません。しかし、魂の光がそれを裏付けていないのです。ここでは肩書きも勲章も意味を持ちません」


ベテラン警官B

「何だこれは。白人の合格者がほとんどいないじゃないか!これは逆差別じゃないのか!」


リリィ

「魔法陣は、肌の色を見ていません。あなたの魂が“差別心”に曇っていることを、自分で気づいてください」


会場がざわめく中、若い黒人の候補者が一言、静かに口を開いた。


黒人候補者

「たとえ不満があっても、僕たちはこの試験にかけるしかない。俺はただ、本物の悪人を捕まえたい」


その言葉が、場の空気を変えた。誠実な想いが、魂の光よりも人々の心に届いたのだ。


ジャックは噂を否定する者の前に立ち、冷静に言った。


ジャック

「“不採用”を他人のせいにしている限り、あなたは正義に立てない。魂は、それを見抜いている」


【採用者、わずか512名】


数万人の応募の中から、清い魂の光を放った者たちは、わずか512名。FBI、CIA、各国のエリート警察機構の多くは、その魂が濁り、ほとんどが不採用となった。


ジャック

「これは、思った以上に厳しい現実だな」


リリィ

「でも、だからこそ、意味があるのよ。信頼は“まっさら”から築くもの。過去に縛られる必要はない」


アンサ事務総長が各国代表に告げた。

「選ばれた彼らは、まさに新しいキャンバスです。皆さんの国が持つ知識と経験を、どう育てるかは、各国の責任でもあります」


代表者たちは沈黙し、しぶしぶではあったが、協力を申し出た。


【世界が変わり始める】


世界各地で採用された新警察官たちは、各国の訓練施設で研修を受け始めた。彼らは年齢も国籍も様々だったが、一つだけ共通していた。


“魂が澄んでいる”ということだ。


クロシャが、インドネシアから戻ってきたリリィに小声で報告した。

「面白いことになってきたな。世界の警察組織の中で、“濁っていない”人間がこんなに少ないとは」


リリィ

「それでも、集まった512人が、やがて世界を変えていく。そう信じてる」


国境を越えて、魂の、“真の正義”が芽吹こうとしていた。


◆国際警察官の装備


【ニューヨーク・国連本部 事務総長室】


春の陽光が差し込む大きな窓からは、静かに咲く桜の並木が見えた。アンサ事務総長の執務室には、リリィの姿があった。彼女は、国際警察官たちの運用開始を目前に控え、その装備と待遇について説明を行っていた。


リリィは一冊の黒い手帳を開き、淡々と語り始める。


「配属先の国の警察官に準じた装備品は全て支給されます。必要であれば、制服の着用は不要とし、任務の内容や環境に応じて柔軟に対応できる体制です」


「給与面については?」


アンサが問いかけると、リリィは即答した。


「その国における“警部”相当の報酬を基本とし、国際警察としての責務に見合う処遇を整えます。さらに、次の8つの特別装備を貸与します。」


彼女は指を折りながら、ひとつひとつの装備を説明していった。


1.ガス銃

外見は拳銃に近いが、引き金を引くと魔法陣が飛翔し、命中した対象を5分間放心状態にする。

大きさは調整可能で、集団対象にも対応。個人識別機能により、貸与者以外は使用不可。


2.拘束手錠

装着された相手は放心状態が継続し、取調べにおいて虚偽の証言ができなくなる。


3.判別手帳

開くことで、相手の言葉が真実かどうかが自動で表示される。瞬時に判別可能。


4.視界強化眼鏡

夜間でも昼と同等の視野を確保。赤外線や魔素反応の視認も可能。


5.回復ベルト

緩やかな毒耐性と、行動中の自然回復促進効果を持つ。戦闘や捜査の長時間行動に最適。


6.跳躍靴

ジャンプ力が30%上昇し、高所からの着地にも衝撃吸収効果あり。都市部や山岳地帯での捜査支援に有効。


7.通信マイク&イヤフォン

国際警察本部との常時接続が可能。緊急時には位置情報と映像データも送信される。


8.国際警察バッジ

このバッジを提示すれば、その国の“警部”相当の権限が認められる。政府の承認印が魔法的に刻印されており、偽造不可。


「これら全てに魔法陣が組み込まれており、小型の魔石が魔素を供給しています。傷ついても自動修復機能が働き、耐久性にも優れています。」


一通りの説明を終えると、アンサは深く頷いた。


アンサ

「素晴らしい装備だね。これなら、512名の国際警察官たちが各国で信頼を勝ち取れるだろう。平和の礎となる存在になるはずだ。次の第2期の募集にも弾みがつく」


リリィ

「はい。ですが装備だけでは足りません。私たちも彼らを継続的に支援し、訓練や精神面でのケアも怠らないつもりです」


【同時刻・国際ニュース】


その頃、世界中のメディアでは、ある話題が大きな波紋を呼んでいた。


『細胞活性装置、第3個目がメキシコの大富豪によって、3978億ドルで落札される』


画面には、豪華なオークション会場と、落札した笑顔の富豪の姿が映し出されていた。人々の反応は賛否両論だった。


肯定派:

「これで大きな資金が国連に流れ、世界平和に貢献できる」


否定派:

「結局は金持ちの延命装置じゃないか。貧しい者には一生手が届かない」


リリィはその意見に耳を傾けながら、冷静に答えた。


「この資金は、国際警察組織を含む公共プロジェクトを支えるもの。そして、富裕層のお金が回り回って人々の手に届くと信じている」


【暗躍する闇】


だが、世界が前進を続ける中で、それを快く思わない存在も動いていた。


クロシャが、地下の作戦室で報告を行っていた。

「闇一族が動き出しました。彼らが、国際警察官の名簿を狙っています」


ジャック

「今動くか。だが予想通りだな。奴らの動きを読んでいなければ、こちらが後手に回るところだった」


リリィは短く命じた。


「各国に配属された警察官たちに警戒態勢を敷かせて。自身の身を守るようにと。私たちは闇一族の拠点を封じる準備に入る」


【各国の警察官たち】


世界各地に配属された国際警察官たちは、今日も現地の警察官と共に巡回を始めていた。


ある者は人身売買組織の摘発に。

ある者は民族対立の暴動を未然に防ぐ交渉に。

ある者は深夜の麻薬密輸ルートを追跡しながら、


世界の裏と表で、彼らの戦いが静かに始まっていた。

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