第143話 定例会議 2022年4月 株主総会兼定例会議
【ニューヨーク拠点・リビングルーム】
朝の陽射しが差し込むニューヨーク拠点のリビングルーム。テーブルにはコーヒーとパン、フルーツが並び、リリィたちが定例の朝食会議に集まっていた。
リリィ「それじゃあ、10月の定例会議を始めるわね。」
ジャック「最近は、地震対策の話題が多くなってきたな。」
マモル「プレートダンジョンのテスト、やっと安定してきたけど、問題もいろいろ見えてきましたよね。」
コモン「スンダ海溝では、圧力の偏りが出た。解体して再構築したが、ギリギリだったな。」
ガルド「むしろ、あれで制御の限界が分かったのは成果だ。今後の精密配置に活かせる。」
リリィ「……そうね。世界中にこの技術を広げていくには、もっと精密な調整と、社会的な合意形成も必要よ。」
【プレートダンジョンの再検討】
ジャックが立ち上がり、空中に魔法モニターを展開する。そこには、各国に設置されたダンジョンの一覧と、地質・振動データが表示されていた。
ジャック「この2ヶ月で地震を30%以上軽減できた地域が12ヵ国。しかし、一部で火山活動やプレートの歪み増大の兆候も出ている。」
コモン「対策として、以下を提案する。
1)各国ダンジョンの設計パターンを4タイプに分類し、地域ごとに適合性を分析
2)AIゴーレムの監視・補正ネットワークを常駐化
3)プレート境界ダンジョンには緊急自動解体機能を実装」
リリィ「3番目……ダンジョンを自動で潰す仕組み?」
ジャック「圧力異常やプレート変動を検知した際、ゴーレムがダンジョンを自壊させて負荷を逃がす。リスクはあるが、暴発よりはマシだ。」
マモル「その技術、僕が設計します!プレートの歪みグラフとAI予測、あと魔素流動解析も加えたい!」
リリィ「頼りにしてるわ、マモル。」
【地球外ダンジョン研究の報告】
ガルドが真顔で報告を始める。
ガルド「ところで、地球のプレート変動と、あの12個の巨大隕石群の接近に因果関係はないのか?」
マモル「軌道は変化なし。全部、海王星の衛星プロテウス由来。3年以内に地球へ接近。変化は……ない。」
リリィ「迎撃準備は?」
ジャック「レーザー衛星の配置は20%完了。宇宙エレベーターも第2段階へ。ガルド、資材転送スケジュールは?」
ガルド「アーロンから報告あり。建設速度は予定より10%遅れているが、調整可能だ。」
コモン「隕石迎撃だけでなく、宇宙ステーションと地上をつなぐ“超高出力魔導砲”の設計が進んでいる。試作1号は来月テスト予定。」
【新たなテーマ:地下都市計画】
リリィ「それと、今回の定例会議で話したいのはもう一つ。“地下都市”よ。」
マーガレット「ニャ? 隠れ里を作るのかニャ?」
リリィ「違うわ。災害時の避難だけでなく、都市機能を地下に分散させることで、エネルギー効率、防災、物流、すべてに新しい可能性が出てくる。」
マモル「植物工場、蓄電システム、AI交通網、全部ダンジョン内に構築できれば、地上の負担が減る……!」
ジャック「地上都市が有事で壊れても、地下が生き残る。第2都市計画だ。」
コモン「つまり、地下都市というより“リリィ都市”だな。」
リリィ「ちょっと、名前勝手に決めないでよ。」
【結論と次回までの課題】
リリィ「じゃあ、今回の定例会議のまとめよ。」
・地震対策ダンジョンの国際調整と4分類の導入
・プレート境界ダンジョンの自動解体機能の開発
・地下都市の構想検討チームの発足
・隕石迎撃準備の加速と超高出力魔導砲のテスト計画
アンサ(通信で登場):「素晴らしい議論だ。国連としても支援を惜しまない。」
リリィ「ありがとう、アンサ事務総長。次回は来年1月ね。年末年始は、少し休みましょう。」
ジャック「うん、温泉でも行きたいな。」
マーガレット「ニャー!お餅も食べるニャ!」
マモル「年越しは、ダンジョン都市の中でするのもアリですね!」
皆が笑い合いながら、4月の会議は終わっていった。
・・・・・・・・・
【その夜、SNS配信】
マモルがアップした「定例会議の舞台裏と地下都市計画」の特別映像は、世界中の注目を集め、再生数は2350万人を突破した。
マモル「科学と魔法の融合で、人類はまだまだ進化できる……よね、リリィさん。」
リリィ(映像越しに):「もちろんよ。だって、私たちは未来のために戦ってるんだから。」