第136話 新ダンジョンコア誕生 2021.7
ニューヨークの拠点
グネルがニューヨークの拠点にやってきた。
グネル「こんにちは、リリィさん。」
リリィ「いらっしゃい。グネルさん、どうされたの?突然、地球に来るなんて。あなたが、勇者ギルド星の研究所を出て、旅行するなんて信じられないわ。」
グネル「私の画期的な研究成果のお披露目と、自分へのご褒美ね。」
ギルス「画期的な研究成果?まさか完成したのか。ホムンクルス培養神器の複製が?」
グネル「それは、もう少しの所まで来たのよ。今日の成果はこれよ。」
グネルは青いダンジョンコアを取り出した。通常のダンジョンコアは白いばすだ。
コモン「この青いダンジョンコアは、あの渡した小さなダンジョンコアが育ったものか?」
グネル「そうよ。コモン、操作タッチパネルを開いてみて。」
コモン「青いダンジョンコアに向けて、両手をかざして、見えないタッチパネルを開く。」
コモンが驚愕の表情をして、
「これは、凄い凄すぎる。いや、半分は意味も分からないが。」
グネル「これは、ダンジョンコアの進化した機能よ。広さは以前の10倍の能力があるわ。そして、凄いのは、その自由さよ。従来のダンジョンコアの制約がなく、あらゆる形のダンジョンを形成できるわ。まさに、立体の芸術キャンバスよ。」
ガルド「広さ10倍が凄いのは分かるが、あらゆる形のダンジョンを形成できるって、凄いのか。どう利用するんだ。」
グネル「それを生かすのは、利用者の才能によるわ。」
リリィ「そうなのね。これは、今までのダンジョンコアを使った防災テクニックをさらに改良できる可能性がでてきたわね。」
ジャック「つまり、そういうことだな。」
グネル「残りの9個も渡しておくわ。」
そういって、青いダンジョンコア9個をマジックバッグから取り出して、コモンに渡した。
コモン「凄い、ありがとう。戦力アップになるよ。」
グネル「残りのダンジョンコアも、渡してもらえるように、富士樹海の沼ダンジョンのコアに頼んでみたいわ」
コモン「残り全部の卵を渡せと言ったら、怒って暴走するのが怖いな。」
グネル「一応、試してみたいわ。」
そういって、リリィさん、コモンさん、グネルさん、ギルスさん、ガルドさんと僕マモルの6人は、富士樹海の沼ダンジョンに転移した。
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薄暗い、湿度が高い、富士樹海の沼ダンジョンに転移した。足元は、小島になったところだ。足元はぬかるんでいる。コモンが見えないタッチパネルを操作して、ダンジョンコアを呼び出す。
真っ赤になったダンジョンコアにゴルフボールぐらいの玉が100個近くブドウの房のように付いていた。
コモン「これを見てくれ。」と、そういって、青い新ダンジョンコアを10個をマジックバッグから取り出して、足元に置いていく。
真っ赤なダンジョンコアが、ピンク色になった。優しい気持ちが伝わってくる。
リリィ「もしかしたら、コモンに取り上げられて、心配していたのかもしれないわね。」
コモン「そうかもしれないな。」
グネル「この子たちは、凄いのよ。能力が格段にアップしているわ。残りの卵も渡してくれると、同じように能力アップできるのよ。私に預けてくれないかしら。」
ピンク色のダンジョンコアが突然、真っ赤になり、キーンという音がなり始めた。その音がさらに大きくなり、耳が痛い程、大きくなっいく。
リリィ「どうやら、嫌の意思表示ね。」耳を抑えながら言う。
グネル「残念だわ。」
グネルが見えないタッチパネルを開いて、青いダンジョンコアを持ち上げ、赤いダンジョンコアにくっ付けた。
青いダンジョンコアが、赤いダンジョンコアに融合するように侵食していく。
コモン「なっ、何をしている?」
グネル「説得よ。新ダンジョンコアに親を説得してもらっているのよ。」
コモン「まるで、食べているように見えるが。」
グネル「しばらくは、この状態が続くと思うわ。ここから引き揚げましょう。」
コモンは足元の新ダンジョンコア9個をマジックバッグにしまった。
リリィ「グネル、このウッドゴーレムなんだけど、あなたの力で、テイムできるように出来ないかしら。」
グネル「ウッドゴーレム?呪い系の魔物ね。初めての研究素材だわ。分かった。小さな苗木を一つ、貰っていくわ。」と、足元のウッドゴーレムの子供を取り上げ、手に巻き付けだ。
グネル「可愛いわね。」といいながら、苗木をくすぐっている。
全然、可愛くは見えないとマモルは思った。
リリィ「じゃあ、引きあげましょう。」
リリィ達一行は、ニューヨークの拠点に転移した。
グネル「1週間ほど、地球でのんびりしたいわ。」
リリィ「グネルさん、グネルさんように一部屋用意しましょう。あなた専用の部屋として使ってね。」といって、リリィさんがグネルさんに拠点内を案内している。
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その日、グネルさんの研究成果を聞いていたメンバーは、多分、ギルスでも半分も理解できていなかったと思う。
しかし、一つ、気づいたことがあった。
マモル「あの、グネルさん、一ついいですか。」
全員「「「「「おっ、マモル、いつものか!」」」」」
マモル「いつものって何ですか?」苦笑しながらいう。
マモル「さっきの図、らせんの形をしていたものですが、それは遺伝子のらせんですか?」
グネル「遺伝子のらせんって、何のことだ?これは魔素のらせんというものだ。魔物のコアを形成する情報だ。」
マモル「地球の生物は全て、遺伝子のらせん構造で作られています。遺伝子はDNAと呼ばれる物質でできていて、人の体をつくる「レシピ」のようなものなんです。同じような仕組みが魔物にもあるんですね。」
グネル「いや、多分、違うと思う。魔物の体も同じような遺伝子で形成されていると思う。こちらの魔素のらせんは魔物のコアの情報だ。」
マモル「そうなんですか。なぜ、魔物にはコアに情報が詰め込まれているのですか?」
グネル「それは、その魔物が魔法を使うときに、魔素を制御するためだと考えられている。」
マモル「魔素を制御するため、まるで機械のようですね。」
グネル「人間の科学では、遺伝子の研究は盛んなのか?」
マモル「肉体の再生医療という分野が、日本で最先端でした。武漢の細菌研究所でも遺伝子レベルで研究されていたし、地球では遺伝子工学は盛んに研究されていますね」
グネルが急にマモルにしがみついた。目が異様に輝いてる。
「そうなのか。地球では、再生医療を世界的に研究しているのか?素晴らしい。それはつまり、ホムンクルス研究と同じではないか。」
グネル「リリィ、日本の遺伝子研究所にコネはないか。私は遺伝子研究を知りたい。」
リリィ「勇者ギルド星の研究所の方はいいの?」
グネル「いや、休暇の1週間だけでいい。研究所の人間と語りたい。」
リリィ「分かった。ジャック、前回のシンクタンクのときに、レポートを出してくれた研究所の中に、遺伝子の研究所からのはあったかしら。」
ジャック「日本の研究所からもあったぞ。これだ。良かった。前回、7位で表彰している。立派なコネがあるじゃないか。」
リリィ「いいわね。私が電話するわ。」
そういって、リリィさんが日本の超有名な遺伝子研究所の所長に気安く電話し始めた。
リリィ「グネル、いつでも来てくださいって、言ってるわ。」
グネル「きゃほーい、すぐに行きたい。」
リリィ「ガルド、グネルを連れて行ってあげて。」
ガルドさんが、グネルさんを連れて、日本の超有名な遺伝子研究所の近くのコンビニボーソンの駐車場に転移していった。
リリィ「休暇に来ているのに、研究熱心ね。」とため息をついている。
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翌日朝、ニューヨーク拠点のリビングルームにて
マーガレット「コモン、いいこと思いついたニャ。これ見て?」と傘を差し出す。
コモン「傘がどうした?」
マーガレット「この前の豪雨災害で家屋浸水を防げなかったのを、この傘があればする救えるニャ。」
コモン「なるほど、大雨の降っている地域に傘の形をしたダンジョンをさしかけて雨を防ぐということか。」
ガルド「傘の形をしたダンジョン?新ダンジョンコアはそんな形を指定できるのか?」
コモン「それが出来る。形も素材も自由だ。巨大なビニール傘の形したダンジョンも作れるだろう。」
ガルド「そっ、そうなのか。凄いな。」
コモン「でも、ためだな。」
マーガレット「何がダメなのニャ?」
コモン「傘に守られた町はよくても、傘の外の町が浸水するだろ。」
マーガレット「そうなのニャ~、あううぅ。ダメニャ~」
ジャック「いい線いってたのにな。」
リリィが苦笑しながら「それにしても、新ダンジョンコアの機能は自由度が凄いわね。」
マモルが何かを言いかけたとき、グネルが帰ってきた。
グネル「リリィ、ただいま。頼みがある。」
リリィ「お帰りなさい。グネル。早かったわね。もう、遺伝子研究所の方はいいの?」
グネル「いや、また、遺伝子研究所の方に行くぞ。それよりも手に入れて欲しいものがある。だめなの」
グネル「遺伝子を調べる装置が欲しい。勇者ギルド星に持って帰る。DNAシーケンサーといわれる装置だ。大型の冷蔵庫サイズのやつで、大量のDNAを短時間で解析できる。遺伝子研究所にあるが気に入った。きっと、魔素のらせんを調べるように改良できる。」
リリィ「分かった。菱紅商社の三田部長に言ってみる。」
リリィさんが菱紅商社の三田部長にスマホで連絡している。途中からグネルに替わって、DNAシーケンサーといわれる装置について、詳しく説明した。スマホに映像が送られてきて、確認している。
リリィ「手配したら、受注生産で1カ月もかかるらしいわね。」
グネル「1か月か、大丈夫だ。その間に遺伝子研究所で、遺伝子のことを根こそぎ習得しておこう。」
リリィ「根こそぎ習得って、凄いわね。」
グネル「じゃあ、もう一度、遺伝子研究所に行く」、といって転移していった。なんでもポータル転移陣という、神器を持っいるらしい。座標を覚えさせると、そこに転移できるのだという。
リリィ「相変わらず、忙しいわね。」
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その夜、マモルは、パーティのSNS専用チャンネルを見ていて、豪雨対策の様子の動画が爆発的に視聴回数を伸ばしているのを見ていた。視聴者数も順調に伸びていた。1850万人を超えている。
マモル「思い出した。あの傘のダンジョンの使い方、あれは凄い利用方法があるんだ。忘れないようにメモしておこう。