第135話 ドイツ・ベルギー豪雨災害 その2 2021.7
翌日、
リリィ「ドイツから、ベルギーの方も救うことはできるけれど。ベルギーの方にも行かないとダメよね。」
ジャック「ベルギーの首都ブリュッセルは、EU本部・NATO本部がある国際都市だから、今後も重要な場所になる。拠点を置いてもいいぐらいだ。」
リリィ「そうよね。分かった。ベルギー連邦首相にもコネを作っておきましょう。」
コモンの分身体とAIゴーレムをドイツに残し、リリィ達一行はベルギーの首都ブリュッセルに転移した。
国連のアンサ事務総長に依頼して、ベルギーの政府にアポをとってもらったのは、いうまでもない。
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リリィ達一行はベルギーの首都ブリュッセルにあるコンビニボーソンの駐車場に転移した。そこから店長に用意してもらった車で移動、連邦首相公邸に降り立った。待っていたのは ランベルモン連邦首相とその補佐官たちだった。
連邦首相「リリィさん、国連のアンサ事務総長から連絡がありました。豪雨による洪水の防止にご支援くださるとお伺いしました。」
リリィ「首相、はじめまして。そのとおりです。私たちは 豪雨による洪水の防止のためやってきました。今発生している豪雨はさらに激しさを増して、甚大な被害が発生すると予想されます。ぜひ私たちの力をお役立て下さい。」
連邦首相「ありがとうございます。ヨーロッパ上空に停滞した低気圧が豪雨をもたらしています。このままでは被害は深刻です。ご支援助かります。」
リリィ「首相、ここに私たちの拠点を設置しますので、駐車場の一角をお貸しください。」
連邦首相「ここの庭と駐車場とこの会議室をお使いください。」と建物地図をもらった。
リリィ「みんな拠点を設置するわよ。」
皆がマジックバッグから、庭と駐車所にコンテナハウスを建てていく。それを見ていた首相と政府スタッフは、唖然とみるしかなかった。
コンテナハウスの拠点の中には、既に気象観測用の巨大モニターが設置されていて、ベルギーと周辺国の衛星画像が表示されていた。さらに、ドイツの拠点との連絡もここでできるようになった。」
リリィ「ドイツのコモン(分身体)、聞こえるかしら、こちらの準備はできたわ。」
コモン(分身体)「聞こえるぞ。混乱をさけるため、俺のことはコモンBと呼んでくれ。」
リリィ「コモンB、了解。」
リリィ「ジャック、指揮をお願い。」
ジャック「ガルド、コモン、ベルギーの洞窟が多い場所はここだ。この洞窟にダンジョンコアを設置して、貯水場にしてくれ。」
ガルドとコモンが転移していった。10分後、帰ってきた。
コモン「沼ダンジョン設置、展開中だ。」
ジャック「了解、ガルド、氾濫が予想される全ての河川堤防に土ゴーレム、コンテナゴーレム、マッドゴーレムを設置してくれ。」
ガルドとコモンが転移していった。
ジャック「黄金虫ゴーレムを飛ばして、監視させよう。」といって、ジャックのマジックバッグから、召喚用の魔法陣を大量に取り出して、AIゴーレムに展開するように指示した。黄金虫ゴーレムが認識阻害と物理結界をかけて大量に飛び立っていく。
1時間後、ガルドとコモンが転移で帰ってきた。
ジャック
「河川にコンテナゴーレムを沈めて設置できた。余分な水を全部、地下の沼ダンジョン貯水場に転移できている。」
黄金虫ゴーレムが現場の状況を映像で送ってくる。その様子をモニターで確認する。
マッドゴーレムが、泥水から、泥だけを体に取り込みながら、濾した水をコンテナゴーレムに送る。コンテナゴーレムは入口に網を張って濁流のゴミをろ過しながら、雨水を取り込んでいく。その水が渦巻きながら沼ダンジョンに転移していく。
コンテナゴーレムは氾濫しかけている河川の護岸に並んで、次々と同じ作業をしていく。現場は大雨で、人影はないが、コンテナゴーレム達には全て認識阻害魔法をかけている。
マッドゴーレムが泥を取り込み膨れて、分裂し、子供のマッドゴーレムを増やしていく。増えたマッドゴーレムは親のマッドゴーレムの命令にしたがい、河川内の泥をさらに吸収していく。これにより、土石流を防いでいく。
ドイツのコモンBから緊急連絡が入った。
コモンB「マッドゴーレムの数が増えすぎて、マッドゴーレムの統制が難しくなってきた。マッドゴーレム達が暴れたら大変だ。」
リリィ「コモン、マッドゴーレムのテイムはどうなっているの?」
コモン「子供のマッドゴーレムは親のマッドゴーレムの命令を聞くから、問題ないと思っていたのたが。」
マモル「氾濫した川の泥が多すぎて、孫とか、ひ孫とかの世代になっているのかも。」
コモン「まるほど、孫とか、ひ孫とかの世代になれば、あまりに数が多すぎて、親の統制も難しいかもしれない。」
リリィ「子供、孫、ひ孫の世代、全てにテイムをかけていって、統制をとるのよ。」
ジャック「もっと機動力のあるゴーレムを増やそう。これを使う。」
ジャックがマジックバッグから、大きな虫のゴーレムを取り出して言う。
ジャック「カブト虫ゴーレムだ。これらに、テイム魔法陣を持たせて、川から出ようとするマッドゴーレムをテイムして回らせよう。」
リリィ「そんな奥の手を用意していたのね。」とサムズアップする。
ジャック「俺のプランBだ。」と笑顔で言う。
ジャックが大量の召喚魔法陣を展開して、多数のカブト虫ゴーレム達を召喚して、テイム魔法陣を持たせる。
そのカブト虫ゴーレム達を、ガルドがドイツの拠点にまとめて転移させる。ドイツでは、それらのカブト虫ゴーレム達に認識阻害と物理結界をかけてから、次々と河川に向けて、飛ばしていく。
やがて、大きなモニターに、カブト虫ゴーレム達が次々とマッドゴーレムにテイム魔法をかけている様子が上空映像で確認できた。
コモンB「マッドゴーレム達の統制がとれてきた。成功だ。」
リリィは、ほっとため息をついて「本当に良かった。もしマッドゴーレム達が暴れたら、川の氾濫以上の災害になっていたかもしれないわ。」
マモル「そんなに危険な魔物なのですか?不測の事態って怖いですね。」
リリィ「たしかに想定外だったわ。」
ジャック「こちらのマッドゴーレム達にもカブト虫ゴーレムを付けておこう。」
ジャックはもう一度、大量の召喚魔法陣を展開して、多数のカブト虫ゴーレム達を召喚し、テイム魔法陣を持たせて、認識阻害と物理結界をかけて、河川に向けて、飛ばしていく。
ベルギーのマッドゴーレム達も泥を体に取り込みながら、数を増やしていき、それらをカブト虫ゴーレム達がテイムしていく。
ドイツとベルギー以外の西ヨーロッパでも豪雨が続いていたので、ベルギーとドイツの拠点から、河川氾濫対策を続けた。
周辺各国には、アンサ事務総長から連絡してもらったのは、いうまでもない。
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リリィ達の数日間の不眠不休の活動により、河川氾濫は阻止され、多くの命が救われた。
ベルギー連邦首相官邸での報告
リリィ「豪雨対策は終わりました。河川水位も平常に戻りつつあります。
河川の氾濫:平常時の2倍以上だったが、現在は55%まで低下
土砂崩れ:土石流は封じ込め済み
ランベルモン連邦首相「あなたたちのおかげで最悪の事態は避けられました。ベルギーの河川は溢れる寸前でしたが、防ぐことができました。今回の被害がこれほど抑えられたのは、リリィさんたちのおかげです。浸水被害は600件以上の家屋が影響を受けましたが大規模な倒壊は回避できました。」
リリィ「浸水被害は残念でした。さらに、豪雨対策を改良を重ねていく予定です。」
続いて、ドイツ連邦首相官邸でも報告
リリィ「豪雨対策は終わりました。河川水位も平常に戻りつつあります。
河川水位:平常時の2倍以上だったが、現在は60%まで低下
土砂崩れ:土石流は封じ込め済み
レムケ連邦首相「「あなたたちのおかげで最悪の事態は避けられました。ドイツの河川は溢れる寸前でしたが、防ぐことができました。600件以上の家屋が浸水影響を受けましたが、大規模な倒壊は回避できました。ありがとうございました。今後も協力を仰げますか?」
リリィ「もちろんです。家屋浸水の被害は防げなかったのは残念です。今後も防災のレベルをあげていきます。」
国連での報告
リリィ「というような状況で、ドイツとベルギーおよび周辺国の豪雨災害を防ぐことができました。」
アンサ事務総長は頷きながら言った。
「お疲れさまでした。あなた方の技術が豪雨災害にも有効であることが証明されました。世界には豪雨災害が毎年、多く発生しています。長期的にどう対策していくか、考えねばなりません。」
リリィが静かに微笑んだ。「もちろんです。これを機に、世界各地の豪雨災害対策にこの技術を活用できるよう、改良を重ねていきます。」
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ニューヨークの拠点、
リリィ「さて、今回のドイツとベルギーの豪雨災害について、反省会をするわよ。」
ジャック「マッドゴーレムの増殖スピードは、予想以上だった。もしマッドゴーレム達が暴れたら、川の氾濫以上の災害になっていた。」
コモン「日本の河川よりも幅が広く、流れは遅いが、流量は5倍はあったな。」
ジャック「もっと、効率的に対策しなければ、このままでは、対処しきれない場面があるかもしれない。」
リリィ「でも、河川の氾濫個所はほとんど抑制できたわね。確実に防災能力は向上しているわ。」
マーガレット「家屋の倒壊がほとんどなかったから良かったニャ。」
ジャック「土砂崩れは発生しても土石流をマッドゴーレム達で防げたのが大きいよな。」
リリィ「マッドゴーレム達の投入は正解ね。」
マモル「テイム魔法を一般化できていて、本当に良かったですね。カブト虫ゴーレムも大活躍でした。」
ジャックが笑っている。「まったく、そのとおりだ」
ジャック「家屋浸水の被害を無くすには、まったく別のテクニックが必要だな。」
リリィ「今回は、木造の瓦礫の問題がなかったから、良かったけれど、今後に備えて、ウッドゴーレム達のテイムも確実にしておきましょう。」
ジャック「ウッドゴーレムは、呪い系の魔法だから、一般化は難しい。暴走することも多いから、テストを十分にしておこう。」
マーガレット「マッドゴーレムは、ウッドゴーレムと仲がいいって、聞いたことがあるニャ。マッドゴーレムに使役してもらえばいいニャ。」
コモン「富士樹海の沼ダンジョンでそれも試してみよう。」
リリィ「それで、思い出した。富士樹海の沼ダンジョンのダンジョンコアの卵はどうなったの?」
コモン「ダンジョンコアの卵は100個ほどに増えていた。10個獲っても、ダンジョンコアに異常はなかったので、その卵をグネルの所に持って行ったよ。今、グネルが研究中だ。」
その後も反省会は続いた。
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マモルは、パーティのSNS専用チャンネルに今回のドイツとベルギーの豪雨対策の様子を動画アップした、爆発的に視聴回数を伸ばしているのを見ていた。視聴者数も順調に伸びていた。1810万人を超えている。
しかし、それと同時に別の話題も急浮上していた。「ベルギーの空に巨大な虫の影?」「堤防が勝手に動く?」「政府は何を隠している?」など。
ニュース番組でも、専門家が困惑した表情で語っていた。
「通常、土砂崩れは自然に流れ落ちるものですが、これはまるで意図的に動いているように見えます。」、「未確認飛行生物がベルギー上空に飛び交っている」。
マモルは苦笑していた。「豪雨の中でも人は見ているんだね。」
リリィが肩をすくめる。「まあ、バレてもいいのよ。人助けだもの。」