第134話 ドイツ・ベルギー豪雨災害 その1 2021.7
ニューヨークの拠点
マーガレット「リーダー、、また未来の自分からメッセージが来たニャ。今度は1週間先からニャ。」
リリィ:「了解。マーガレット。みんな集まって、会議するわよ。」
朝食後、くつろいでいたメンバーが集まってきた。
マーガレット:「2021年7月中旬、ドイツとベルギーを中心に西ヨーロッパで大洪水が発生するニャ、集中豪雨で河川が氾濫して、広範囲で土砂崩れや浸水が発生するニャ。200人以上の死者、数百人の負傷者が出るニャ。数千棟の家屋が壊されたり流されたりするニャ。」
ジャック「二か国にまたがる豪雨と洪水って、凄い規模だな。」
リリィ「日本の豪雨災害での経験が役立つかもしれないわ。」
コモン「富士樹海の沼ダンジョンに放しているマッドゴーレムが300体に増えている。テイム魔法の一般化ができたから全てテイム済みだ。今回、役立つと思う。しかし、ウッドゴーレムはまだテイムできていない。今回は投入できないな。」
リリィ:「じゃあ、いつものように国連に行きましょう。」
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ニューヨーク - 国連本部
アンサ:「リリィさん、また大変なことが起きるのだね?」
リリィ:「1週間後に、ドイツとベルギーを中心に西ヨーロッパで大洪水が発生する予知が出ました。集中豪雨で河川が氾濫し、広範囲で土砂崩れや浸水が発生するようです。200人以上の死者、数百人の負傷者。数千棟の家屋が壊されたり流されたりします。」
アンサ:「西ヨーロッパの複数国で発生する大洪水ですか。それは深刻な災害だね。」
リリィ:「私たちは、河川の氾濫を防ぎ、土砂崩れや浸水を抑えることを考えています。」
アンサ:「サイクロンやハリケーンの経験をいかすのだね。」
リリィ:「そうですね。いままでの災害対策の経験を生かして、豪雨災害を防ごうと考えています。」
アンサ:「すばらしいね、成功すれば、世界中の豪雨災害の防止に役立つね。」
リリィ:「そうです。いずれは世界中の豪雨災害防止に役立つレベルにしたいと思います。」
アンサ:「それで、私に頼みたいことは?」
リリィ:「このプロジェクトを国連の公式事業として立ち上げていただきたいのです。資金はすべて私たちが負担します。」
アンサ:「わかった。国連のスタッフと相談し、国連の公式事業としてまとめよう。」
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リリィ達一行はドイツの首都ベルリンにあるコンビニボーソンの駐車場に転移した。そこから店長に用意してもらった車で移動、連邦首相公邸に降り立った。待っていたのは レムケ連邦首相とその補佐官たちだった。
連邦首相「リリィさん、国連のアンサ事務総長から連絡がありました。豪雨による洪水の防止にご支援くださるとお伺いしました。」
リリィ「首相、はじめまして。今、降っている雨はさらに激しさを増して、甚大な被害が発生すると予想されます。ぜひ私たちの力をお役立て下さい。」
連邦首相「ありがとうございます。異常気象の影響で豪雨が続いています。このまま続けば被害は深刻です。ご支援助かります。」
ジャック「私たちの魔法によるダンジョン技術で河川の氾濫を防ごうと考えています。」
連邦首相「なるほど、確かにそれが可能なら、素晴らしいことだ。」
リリィ「現場の州政府や防災組織に、私たちが河川に立ち入る件を連絡しておいて下さい。」
連邦首相「分かりました。リリィさんたちのご支援の件を各州政府と防災組織に連絡しておきます。」
会議室に案内されて、大きな地図をもとに、豪雨の状況説明をうけた。
ヴェストファーレン州が降水雨量が多く、河川氾濫が危惧されている。このままでは、広範囲で土砂崩れや浸水が発生する可能性もある。他の地域の河川も河川水量が急速に増えていた。
リリィ「なるほど、複数個所で河川氾濫の可能性があるのね。」
リリィ「首相、ここに私たちの拠点を設置しますので、駐車場の一角をお借りしたいのですが。」
連邦首相「ここの庭と駐車場とこの会議室をお使いください。」と連邦首相公邸の建物地図をもらった。
リリィ「みんな拠点を設置するわよ。」
皆がマジックバッグから、庭と駐車所にコンテナハウスを建てていく。それを見ていた首相と政府スタッフは、唖然とみるしかなかった。
コンテナハウスの拠点の中には、既に気象観測用の巨大モニターが設置されていて、ドイツ周辺国の衛星画像が表示されていた。
リリィ「ジャック、指揮をお願い。」
ジャック「ガルド、コモン、ドイツの洞窟が多い場所はここだ。この洞窟にダンジョンコアを設置して、貯水場にしよう。」
ガルドとコモンが転移していった。10分後、帰ってきた。
コモン「沼ダンジョン設置完了、展開中だ」
ジャック「了解、ガルド、氾濫が予想される全ての河川堤防の低い個所に土ゴーレムとコンテナゴーレムを設置してくれ。」
コモン「マッドゴーレムをそれぞれの場所に配置して、コンテナゴーレムが流されないようにマッドゴーレムに補助を命令しよう。」
ガルドとコモンが転移していった。
ジャック「黄金虫ゴーレムを飛ばして、監視させよう。」といって、ジャックのマジックバッグから、召喚用の魔法陣を大量に取り出して、AIゴーレムに展開するように指示した。黄金虫ゴーレムが認識阻害と物理結界をかけて大量に飛び立っていく。
ジャック
「大きな河川にコンテナゴーレムを沈めて設置できた。余分な水を全部、ダンジョンの貯水場に転移しよう。」
黄金虫ゴーレムが現場の状況を映像で送ってくる。その様子をモニターで確認する。
マッドゴーレムが、泥水から、泥だけを体に取り込みながら、濾した水をコンテナゴーレムに送る。コンテナゴーレムは入口に網を張って濁流のゴミをろ過しながら、雨水を取り込んでいく。その水は渦を巻きながら沼ダンジョンに転移していく。
コンテナゴーレムは氾濫しかけている河川の護岸に並んで、次々と同じ作業をしていく。現場は大雨で、人影はないが、コンテナゴーレム達には全て認識阻害魔法をかけている。
マッドゴーレムは体に取り込んだ泥で膨れ上がり、分裂し、子供のマッドゴーレムを増やしていく。増えたマッドゴーレムは親のマッドゴーレムの命令にしたがい、河川内の泥をさらに吸収していく。これにより、土石流を防ぐ。
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テレビニュースでは、豪雨による土砂崩れが発生しているところが映し出された。市内では、すでに避難指示が出され、多くの住民が高台の避難所や公共施設に移動していた。しかし、家を離れられない高齢者や、ペットを連れて避難をためらう人々もおり、状況は混乱を極めていた。
そして、「避難所はもう満員だって、、」、「水がここまで来るなんて、信じられない。」などの市民の会話シーンがテレビで流された。
リリィ達一行は、急いで、土砂崩れの場所に行き、大雨が続く中、認識阻害と結界を張りながら、周辺にゴーレム魔法陣を展開していく。土砂が次々と50cm程度の小さな土ゴーレムとなって、土砂崩れ場所から歩いて、退いていく。
小さな土ゴーレム達は、まるで小さなレンガのように、河川に向かって歩いていき、堤防を補強していく。。
マッドゴーレムも召喚し、土砂崩れの泥を取り込んでいく。コンテナゴーレムが転移魔法陣で雨水を沼ダンジョンに転移させる。
ヴェストファーレン州の作業が軌道に乗ったと判断した段階で、周辺のアール川沿いのアールヴァイラー郡、プファルツ州にも同様の対策をAIゴーレムを使って広く展開していく。
その様子が、拠点の大型モニターに表示されていく。もちろん、モニターには認識阻害のない映像が映し出されている。
連邦首相と政府スタッフは、信じられない映像の連続に唖然として、言葉がない。