第133話 株主総会兼定例会議 2021.4
【ニューヨーク拠点・会議室】
春の柔らかな日差しが窓から差し込む中、ニューヨーク拠点の会議室では恒例の「株主総会兼定例会議」が開かれていた。リリィが中央の椅子に腰掛け、仲間たちの顔を順に見渡した。
リリィ「では、2021年4月の定例会議と、前年度決算報告を始めましょう。三田部長、今年も監査をお願いできますか?」
三田部長「もちろんだ。今年も相変わらず“常識外”の活動を見届けさせてもらうよ。」
ジャックが頷き、タブレットを操作しながら話し始める。
ジャック「では、まずリリィ、報告を頼む。」
リリィ「分かったわ。では、2020年度の実績と、今期の進行中のプロジェクトについて説明します。」
【前年度の総括】
●収益構造と決算報告
コモン「収入の柱は以下の通りだ」
・金塊売却:菱紅商社を通じて年間約65億円 ・細胞活性装置オークション:第4号機が6740億ドルで落札。累計2兆ドルを突破。 ・廃炉事業:アメリカ、イタリア、ウクライナで進行中。プルトニウム回収は順調。 ・ダンジョン農場:世界14地域に展開。食料供給と難民支援の要に。
コモン「すべての収益は国連を通じて医療・教育・宇宙開発へ。純利益はゼロ。例年通りの“利他運営”だ。」
三田部長(苦笑しながら)「またそれか……よく潰れないもんだな、君たちの会社は。」
●回復魔法陣の配布と医療支援
ジャック「2020年後半のパンデミック対応により、回復魔法陣の活用が世界で定着した。」
マーガレット「ニャ~、おかげで病院が空いてきたニャ。」
●政治AIアドバイザー・アケミの拡張導入
コモン「イラン、ベネズエラ、カザフスタンへの政治AI導入が成功した。」
ジャック「国家レベルで改革が進行中だ。AIと人の協働モデルが定着しつつある。」
リリィ「そして、私たちの影なる支援……クロシャやゴーレム部隊のおかげで、密輸・汚職・インフラ問題もかなり改善されたわ。」
クロシャ「……影の動きは、表に出る必要はない。」
【新たな脅威への対応】
●小惑星監視システム強化(ATLAS拡張)
リリィ「12個の黒い巨大隕石群の接近が確認され、ATLASの拡張により事前察知が可能になった。」
ジャック「海王星衛星プロテウスの分裂。意図的な攻撃と断定され、地球防衛計画を正式発足。」
●宇宙防衛計画と宇宙エレベーター建設
リリィ「核融合レーザー迎撃衛星、DART強化版、宇宙エレベーター。この3つを柱に、迎撃計画が始動したわ。」
ジャック「宇宙エレベーター建設はエクアドル政府の承認を得て、本格始動した。転移魔法による輸送、シリコンナノチューブ素材、結界防護。全て整っている。」
コモン「丸林組と菱紅商社が全面協力中。地上のアース・ポート建設も順調。」
マモル「祝賀会で披露した3Dホログラム映像、SNSで1400万人に届きました!」
【監査報告】
ジャック「では、三田部長、監査をお願いします。」
三田部長が静かに立ち上がる。
三田部長「財務上の不備は一切なし。むしろ財務報告が透明すぎるほど透明。……ただ、常識というものが通用しない会社に、私は何年連続で“適正”を出しているんだろうね。」
マーガレット「ニャ~、褒めてるのか皮肉なのか分からないニャ~」
三田部長「両方だ。」
【締めと次の目標】
リリィ「次は、迎撃システムの構築と宇宙エレベーターの早期完成。12個の隕石群を迎え撃つには、地球全体の力が必要になるわ。」
ガルド「3年以内に撃破体制を作り上げる。それが現実になった今、甘えは許されない。」
リリィ「私たちにできるのは、準備。そして世界を導くこと。やるわよ、みんな。」
全員「「「おう!」」」
リリィ「では、株主総会兼定例会議、閉会します。」
マーガレット「ニャ~!その後は打ち上げニャ?」
マモル「宇宙エレベーターの模型ケーキ、作ってあります!」
ガルド「ほう、今日は甘党か……」
ジャック「乾杯の前に、マモルのギター、頼むぞ。」
マモル「はいっ!」
ギターの音が響き、仲間たちは笑顔で乾杯のグラスを掲げた。
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