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第132話 宇宙エレベーター建設 その2     2021.2

エクアドル・キト 丸林組との最終会談


エクアドル政府の承認を得たリリィたちは、そのまま、キトのホテルで、宇宙エレベーター建設計画の詳細を詰める最終会談を行った。


会議室の大テーブルを囲み、リリィ、ギルス、ジャック、三田部長、丸林専務、そして技術責任者達、エクアドルの官僚たちが集まる。


丸林専務は深く頷いた。

「前回、預かったシリコンナノチューブワイヤーの強度を調べたが、驚くべきものだった。カーボンナノチューブの10倍の強度があり、しかも軽い。素晴らしいものだった。」


リリィ

「ありがとうございます。製作者に伝えておきます。喜ぶでしょう。」

ジャック

「では、最終計画を確認しよう。」

丸林専務が腕を組むと、モニターには宇宙エレベーターの詳細な設計図が映し出された。


・建設用宇宙船の静止軌道への転移

ジャックが指し示したのは、36000km上空の静止軌道だった。


「通常、静止軌道に軌道ステーションの組み立て物資を運ぶには何十回ものロケット打ち上げが必要になります。しかし、転移魔法を使えば、一瞬で建設用宇宙船をこの軌道に送ることが可能です。」


丸林専務がうなずく。

「転移後、スラスター制御で軌道を微調整し、地球の自転と完全に同期させる。これで宇宙船は、常に同じ地点の上空に位置することになるわけだ。」


「その通りです。」ジャックが笑みを浮かべた。


・ケーブル展開とカウンターウエイトの上昇

「宇宙船が安定したら、ケーブルの展開を開始する。」


リリィが指し示したのは、大型ドローンを取り付けたケーブルの図面だった。


「宇宙船から大型ドローンを付けたケーブルを地上に向けて繰り出しながら、カウンターウエイトを上昇させていく。約1ヵ月後、地上に到達する計算です。」


「なるほど、それだけの時間が必要なのか。」エクアドルの官僚が問う。


「しかし、通常の方法では数年はかかる工程です。」ジャックが説明を続ける。


「転移魔法を活用することで、必要な設備を随時配置し、最速のペースで進めることができます。」


・静止軌道ステーションの組み立てと転移

ギルスが手を挙げる。

「地上でステーションを組み立てて、完成後に一度ブロックに分解し、それを転移魔法で建設用宇宙船の横に転送する。これなら効率的に建設できる。」


丸林専務が目を細める。

「宇宙空間での作業を極力減らす、というわけか。確かに、それなら安全性も高まる。」


リリィが続ける。

「その後、工事用クライマーを上昇させながら補強ケーブルを貼り付けていきます。これを約500回繰り返し、本格的なケーブルが完成した時点で、100tの物資を運べるクライマーが稼働できるようになります。」

「さらに、ケーブル全体に結界魔法で防御して、宇宙ゴミに対応します。」


・アース・ポートの建設計画

「地球側の発着場も重要ですね。」三田部長が資料をめくる。

「アース・ポートは、陸上と海上に分けて建設します。」


 陸上施設は、

  宇宙エレベーターの監視施設

  世界中から人や物資が集まる広大な空港

  宇宙開発関連企業の研究所・工場・ホテルなどを備えた都市エリア

 海上施設は、

  クライマー発着場

  出発・到着ロビー

管理施設、格納庫、修理工場、倉庫、研究開発センター


宇宙エレベーターの要となる直径4kmの海上プラットフォーム

「この海上プラットフォームは、海水を利用したバラスト調整システムを備えています。」


ジャックが説明する。

「ケーブルにかかるテンションをリアルタイムで調整できるので、安定性を確保できます。」


「これなら強風や海流の影響も最小限にできるな。」丸林専務が感心したように言う。


計画の最終決定

会議室が静まり返る中、リリィが最後に言葉を発した。


「この計画が成功すれば、人類は宇宙への新たな道を切り拓くことができます。そして、迫りくる巨大隕石への備えも万全になります。」


丸林専務は深く頷いた。

「分かった。我々は全力で協力する。」


三田部長が満足げに笑う。

「では、宇宙エレベーター建設計画を正式に始動しましょう。」


その夜は、会議に参加した全員で、宇宙エレベーター建設開始を祝って、ホテルでパーティを開き、エクアドル料理を堪能した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


エクアドルのキトにある高級ホテルの宴会場。広々としたホールには、豪華なシャンデリアが輝き、南米の情熱的な音楽が流れている。各国の要人やエクアドル政府関係者、リリィたち、菱紅商社の三田部長、丸林組の丸林専務が集い、宇宙エレベーター建設計画の正式承認を祝う祝賀会が始まった。


会場の中央には、大きな3Dホログラム映像が浮かび上がっている。ジャックが魔法を使い、宇宙エレベーターの完成予想図を立体的に映し出していた。エレベーターの巨大な構造が詳細に再現され、地上の発着場から静止軌道へと伸びる壮大なスケールがひと目でわかる。


「これが、我々が建設する宇宙エレベーターです。」ジャックが説明を加える。


ホログラムの中で、エレベーターを登るクライマーの動きがリアルタイムで再現され、軌道上のステーションが輝く光を放っていた。出席者たちは感嘆の声を上げ、興味深そうにホログラムに見入っている。


「これが本当に実現するのか……」とアンドレス大統領が呟く。


「はい。ここにいる皆さんの協力があれば、夢ではなく現実になります。」リリィが力強く答える。


司会者が壇上に立ち、マイクを手に取る。

「本日は、歴史的な瞬間を祝うために、ここエクアドルの地で皆さまをお迎えしました。宇宙エレベーターの建設は、人類にとって大きな飛躍であり、エクアドルにとっても新たな未来への第一歩です!」


会場は拍手に包まれる。美しいカクテルと色鮮やかなエクアドル料理がテーブルに並べられ、出席者たちは談笑しながら祝杯をあげる。

アンドレス大統領の挨拶


エクアドルのアンドレス大統領が壇上に立ち、グラスを掲げる。

「皆さん、今夜は特別な夜です。我々の国が、宇宙への扉を開く重要な役割を果たすことになりました。このプロジェクトが成功すれば、エクアドルは世界の宇宙開発の中心地となり、新たな産業と雇用が生まれます。また、この技術革新は、我々の国民にとって未来への大きな希望となるでしょう。この偉大なプロジェクトに関わる全ての皆さんに感謝し、成功を祈って乾杯しましょう!」


「乾杯!」


グラスがぶつかり合い、会場は歓声に包まれる。


リリィのスピーチ


続いて、リリィが壇上に上がり、静かに微笑む。

「私たちの旅は始まったばかりです。宇宙エレベーターの建設は決して簡単な道のりではありませんが、私たちはその挑戦を受け入れました。この計画が成功すれば、人類は宇宙をもっと身近に感じることができるでしょう。そして、地球を守るための第一歩にもなります。もちろん、このプロジェクトには多くの課題が待ち受けています。技術的な問題、資材の確保、そして安全対策。しかし、ここにいる皆さんの力を借りれば、きっと乗り越えられると信じています。エクアドルの皆さん、協力してくださり、本当にありがとうございます。」


会場から大きな拍手が送られる。


三田部長と丸林専務の言葉


菱紅商社の三田部長が笑顔で立ち上がる。

「リリィさんたちが持ち込んだこの壮大な計画、我々も全力で支援していきます。エクアドルの皆さん、共に未来を築いていきましょう!」


丸林専務も続く。

「技術的な課題はまだありますが、我々の力を合わせれば乗り越えられる。エクアドルと共に、新たな歴史を作りましょう!」


祝宴と交流


エクアドル伝統の料理が振る舞われ、出席者たちは舌鼓を打つ。新鮮なセビーチェ、ホルタード(肉の炒め物)、エンパナーダが並び、エクアドルの特産であるカカオを使用したチョコレートデザートが提供される。


マモルはギターを持ち、即興で南米のリズムに合わせた演奏を始める。

「せっかくだし、楽しまなきゃな!」


ジャックは微笑みながら指を鳴らし、コモンは手拍子を打つ。ガルドは「お前、なかなかやるじゃねえか」と感心しながらリズムを取り、マーガレットはその場で軽やかに踊り始める。


エクアドルのダンサーたちがサルサやバチャータを披露し、会場の雰囲気がさらに盛り上がる。


マーガレットの魔法と子供たちとの触れ合い


祝宴の最中、マーガレットはふと会場の端にいた子供たちに目を向ける。彼らは興味津々な表情で祝宴を眺めていた。


「ちょっとした魔法を見せてあげるニャ~」


マーガレットが軽く手を振ると、ふわりと金色の光が舞い上がり、テーブルの中央に美しい花が次々と咲き始める。子供たちは驚き、歓声を上げた。


「すごい!」「お花が咲いた!」


マーガレットは微笑みながら子供たちと一緒に遊び始め、彼女のリラックス効果のある魔法を使うと、子供たちは満面の笑顔を浮かべた。


「君たちも踊ってみるニャ~?」


すると、子供たちは手を取り合い、音楽に合わせて楽しそうに踊り出した。リリィも笑顔でその光景を見守り、マモルがギターのリズムを少し速めると、さらに活気づいた。


アンサ事務総長の総括


最後に、アンサ国連事務総長が壇上に立つ。

「これは国境を超えた協力の象徴です。科学と魔法、技術と情熱が交わることで、新たな未来が開かれるでしょう。我々は人類の未来のために、この壮大な挑戦を支え続けます。」


盛大な拍手が響き渡り、祝賀会は夜遅くまで続いた。


こうして、エクアドルの地で新たな歴史が刻まれた。


・・・・・・・・・・


【ニューヨーク拠点】


 その夜。


 マモルは、パーティのSNS専用チャンネルにエクアドルの宇宙エレベーター建設祝賀会の華やかな動画をアップした。動画は瞬く間に拡散され、爆発的に視聴回数を伸ばしていた。視聴者数も順調に伸びていた。1420万人を超えている。


彼は画面を見つめながら、ふと呟く。

マモル「祝賀会の3D映像、素晴らしかったです。」


ジャック「そうかい。本物が完成して映すと、もっと素晴らしいだろうね。」


【国連での発表】


リリィは国連の場で、宇宙エレベーターの建設計画を発表した。建設予定地は、地球の赤道直下であることが必須条件であるため、太平洋の赤道上、エクアドルの西に位置する海域を選定した。


「建設予定地の選定にあたって、国際的な摩擦を最小限に抑え、技術的・環境的に最適な場所を選びました。」


国連事務総長アンサは慎重な態度を崩さず、各国代表の反応を見守った。


各国の反応と交渉


宇宙エレベーター計画に対して、各国の反応は分かれた。


アメリカ: 「国際的な協力が不可欠だ。我々も技術提供を検討するが、エクアドル政府の承認だけでは不十分ではないか?」


中国: 「国際的な管理下で進めるべきだ。我々は独自の宇宙開発を行っており、一国が独占するのは問題だ。」


ロシア: 「軍事的な利用を排除する明確な条約が必要だ。」


エクアドル: 「経済的な恩恵が期待できるので、前向きに協力したい。ただし、環境問題や安全対策についても議論が必要だ。」


ジャックはこれらの意見を整理し、最適な交渉プランを立案した。


交渉と調整


エクアドル政府との協議: エクアドルへの経済的支援と環境保護策を提示。


国際協力の確立: 技術提供と国際条約の策定を進める。


安全保障問題の解決: 宇宙エレベーターを軍事目的に使用しない条約を締結。


コモンの分身体は、各国の政治家や実業家との調整を進め、経済的観点から利益を最大化する方法を模索した。



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