第129話 敵対勢力への対策(政治AIアドバイザー)
西側諸国との協力が進む中、独裁国家などの敵対勢力の国々と西側諸国の間の溝は依然として深かった。
敵対勢力は冒険者ギルド株式会社を西側諸国の協力者として位置づけて、懐疑的だった。
リリィは仲間たちを集め、これからの方針について議論を始めた。
リリィ:「冒険者ギルド株式会社は、西側諸国の仲間だと思われている。でも、私たちの目的はそんな小さな枠に収まるものじゃない。」
彼女の瞳は真剣だった。
リリィ:「人類がもっと平和になり、人口を増やし、科学力を高めなければ、星の崩壊をまねく厄災を防ぐことなどできない。どうすればいい?」
場に静寂が訪れた。
仲間たちはそれぞれの立場から考えを巡らせ、慎重に口を開いた。
ジャックの意見:「バランスの取れた発展を」
ジャック:「まず、人口増加と科学技術の発展を促すには、単純な経済発展だけでは足りない。」
リリィ:「どういうこと?」
ジャック:「西側と敵対する国々は、それぞれ異なる問題を抱えている。政治的な不安定さ、宗教の影響、経済格差……すべてが絡み合っているんだ。」
ジャック:「もし、どこか一国だけが急速に発展したら、他の国々との間でさらなる対立が生まれる。」
リリィ:「つまり、発展のペースを均一にするべき?」
ジャック:「そうだ。国際的な格差を是正しながら、科学技術を共有する仕組みを作るべきだ。」
ガルドの意見:「軍事力も必要だ」
ガルド:「科学技術を発展させるだけじゃダメだ。敵対勢力が邪魔をするのは目に見えている。」
リリィ:「つまり、武力を背景にして交渉しろってこと?」
ガルド:「そうだ。現実問題として、平和は力で守るものだ。どんなに立派な理念があっても、それを脅かす勢力がいれば意味がない。」
ジャック:「でも、武力を前面に出せば、余計に敵対を煽ることになるぞ?」
ガルド:「抑止力の概念を考えろ。強い軍事力を持つことで、敵対勢力が下手に動けなくなる。交渉の場を有利に進めるためにも、軍事的な選択肢を用意することは必須だ。」
マーガレットの意見:「人の心を変えニャなければ」
マーガレット:「武力や経済だけで世界を変えられると思ってるのニャ? 一番大切なのは、人々の心ニャ。」
リリィ:「どういうこと?」
マーガレット:「どんなに技術が発展しても、それを使うのは人間ニャ。人々が平和を望むなら、戦争はなくなるニャ。でも、憎しみが残っている限り、どんなに科学を進めても争いは続くニャ。」
マーガレット:「だから、私は“認識を変える”ことが重要だと思うニャ。教育、文化交流、思想の共有……それらを通じて、お互いを理解することが必要ニャ。」
ジャック:「だが、それには時間がかかるぞ?」
マーガレット:「それでもやるべきよ。短期的な利益より、長期的な安定を考えニャくちゃ。」
コモンの意見:「経済からの接触がカギだ」
コモン:「人々の意識を変えるには、まず生活を豊かにするのが一番だ。」
リリィ:「つまり?」
コモン:「経済の安定なくして、人々の価値観は変わらない。冒険者ギルド株式会社との関係を深めるなら、まず経済的なパートナーシップを築くことが重要だ。」
ジャック:「でも、冒険者ギルド株式会社は西側との関係が強い。それにどう入り込む?」
コモン:「冒険者ギルド株式会社は“異世界技術”を持っているけど、それを地球の経済に適応させるには、多くの問題がある。流通、資材、エネルギー……イランが持つ資源と技術は、俺らにとっても価値があるはずだ。」
ガルド:「なるほど。単なる技術協力じゃなく、経済的な利害関係を作ることで、冒険者ギルド株式会社と敵対しにくくするわけか。」
コモン:「その通り。経済のつながりを強化すれば、西側諸国も簡単にはイランを敵視できなくなる。」
マモル「ひとつ、思いついた。」
リリィ「待っていたわ。マモル、言ってみて。」
マモル:「政治AIアドバイザーをイランに送り込む」
マモル:「どの意見も正しい。だけど、今すぐにできる最も効果的な一手はひとつ。幸い、日本に進めた政治AIアドバイザーはいい仕事をしてくれている。日本の少子化対策は改善した。」
マモル「だから、政治AIアドバイザーをイランに持ち込むことだよ。」
仲間たちは驚きながらも、その意図を理解し始めた。
ジャック:「つまり、イランをAI統治のモデル国家として確立し、冒険者ギルド株式会社との関係を強化する?」
マモル:「そう。イランにAI統治が浸透すれば、国家運営が安定し、経済や軍事、文化面での発展が加速する。そして、それを見た周辺国もAI統治を導入せざるを得なくなる。」
ガルド:「確かに……それが成功すれば、世界の勢力図すら変わるかもしれないな。」
マーガレット:「人々の意識も、少しずつ変わっていくニャ。」
コモン:「経済も動かしやすくなる。合理的な選択だ。」
リリィは微笑み、拳を握った。
リリィ:「よし、やるわよ! まずはイランに政治AIアドバイザーを送り込むわよ!」
すると、ジャックが腕を組みながら口を開いた。
ジャック:「でもさ……これ、絶対にうまくいくのか?」
リリィ:「え?」
ジャック:「AIがすべてを管理する。これは効率的だ。でも、それは同時に、『人間が不要になる』ということじゃないか?」
マーガレット:「確かに……人々がAIに頼りすぎれば、やがて自分で考えなくなるかもしれないニャ。」
ガルド:「だが、独裁よりはマシだろう。」
ジャック:「その独裁者すら、AIに管理される。もし、AIが間違った判断を下したら?」
リリィは息を飲んだ。
リリィ:「……じゃあ、私たちのすべきことは?」
ジャック:「AIを導入するのはいい。だが、それを完全に信頼するのではなく、人間の監視を組み合わせることが必要だ。」