第128話 世界の混乱 〜巨大隕石迎撃計画の発表〜 2021.2
ニュース速報世界に衝撃が走る
「緊急速報です!」
テレビ画面に赤いテロップが流れる。
『国連、NASA、ESA、JAXA、RocketXが合同で巨大隕石迎撃計画を発表』
アナウンサーが沈痛な表情で言葉を続ける。
「本日、国連宇宙防衛会議において、約3年後に地球に衝突する可能性のある12個の巨大隕石の迎撃作戦が正式に決定されました。NASAとESAは小惑星の軌道変更を目的としたDARTの進化版、JAXAとRocketXは高出力レーザー迎撃網の構築、さらに、宇宙エレベーター建設計画が同時進行することが発表されました。これにより、地球防衛のための新たな時代が幕を開けます。」
人々はテレビ画面にくぎ付けになった。
「ちょ、待てよ、隕石ってマジなのか?映画みたいな話だろ?」
「迎撃計画が発表されたってことは、本当にヤバい状況ってことじゃ?」
「政府は隠してたんじゃないのか?3年後って近すぎるだろ!」
SNSはパニック状態になり、「#地球終わった」「#宇宙戦争」「#最後の3年」などのトレンドが急上昇。YouTubeにはすぐに陰謀論を唱える動画が乱立し、「政府は知っていたが発表を遅らせた」「エリート層はすでに地下シェルターに避難している」「迎撃作戦はただの口実で、宇宙開発を進めるための陰謀だ」などのコメントが飛び交った。
世界各国の反応
〇アメリカ
ホワイトハウスは緊急会見を開き、大統領が国民に向けて声明を発表した。
「国民の皆さん、冷静になってください。私たちはすでに迎撃計画を進めており、全世界が協力してこの危機に立ち向かっています。NASAと民間企業は、100%の成功率を目指し、全力で任務を遂行します。」
しかし、ウォールストリートでは株価が急落し、一部の投資家がパニック売りを始めた。特に、観光・航空業界は大きな影響を受け、「もう宇宙開発どころじゃない!」と怒る企業幹部の声が報道された。
〇 ロシア
ロシア政府も声明を発表し、「ロシアは地球防衛の最前線に立つ!」と強調。しかし、国内では一部の過激派が「核で迎撃するのは危険だ!」と抗議活動を始めた。
〇 ヨーロッパ
ヨーロッパ各国は賛同の意を示したが、市民の間では不安が広がる。フランスでは「終末前にバカンスを!」という理由で、南仏への観光客が急増。イギリスでは「王室はもう逃げる準備をしているのでは?」というデマが拡散された。
〇 中国
中国政府は慎重な姿勢を取りながらも、独自に「小惑星迎撃兵器の開発を加速する」と発表。しかし、国内では「国際協力よりも独自の防衛計画を進めるべきだ」との意見も出ていた。
〇 インド
インドはISRO(インド宇宙研究機関)を通じて、「国際連携の強化を支持」すると発表。一方、宗教団体の一部が「これは神の試練だ」として、断食や祈りを呼びかけた。
〇日本
日本政府は国民向けの説明会を開いた。
「JAXAはすでに迎撃計画を進めています。国民の皆さんは日常生活を送りつつ、政府の指示に従ってください。」
しかし、テレビではすぐに討論番組が始まり、専門家たちが口々に意見を述べた。
「迎撃できるとはいえ、リスクがゼロではない」
「もし失敗したら?どこに隕石が落ちるかわからない」
「宇宙エレベーターの建設も急ぐべきだ」
そして、スーパーやコンビニでは「買い占め騒動」が発生した。
「水と食料を確保しろ!」
「ガソリンを満タンにしないと!」
SNSには、「あと3年しかないなら好きに生きる!」と豪遊する人々の投稿も増えていった。
宗教団体や陰謀論者たちの暴走
「これは人類滅亡の前兆だ!」
「政府は真実を隠している!」
一部のカルト宗教団体は、「3年後に世界が終わる」と信じ込み、信者たちに山奥への移住を呼びかけ始めた。
また、陰謀論者たちは、「宇宙エレベーターは支配層の脱出手段」と主張し、計画に反対するデモが発生した。
リリィたちの視点
ニューヨークの夜空を見上げながら、リリィはため息をついた。
「やっぱり、こうなるわよね。」
マーガレットが猫耳を揺らしながら呟く。
「ニャ~地球人って、こういう時に冷静でいられないものニャ~。」
ジャックは冷静に言った。
「混乱するのは仕方ない。しかし、時間は限られている。我々は計画を進めるしかない。」
マモルはギターをポロンと鳴らしながら、少し遠い目をした。
「それにしてもさ。"地球を救う"ってのがどれだけ大変なことか、まだ実感がないんじゃないか?」
リリィは頷いた。
「本当の危機感を持つのは、たぶん迎撃が始まる時かもね。」
暗い宇宙空間を、12個の影がゆっくりと近づいていた。