第127話 宇宙防衛会議 〜巨大隕石群迎撃作戦〜 2021.2
国連本部・特別会議室
ニューヨークの国連本部。厳重な警備が敷かれる中、世界各国の宇宙開発機関と軍事専門家が一堂に会していた。
「宇宙防衛会議」
それは、人類が初めて直面する、宇宙規模の脅威に対処するための緊急会議だった。
スクリーンには、12個の黒い小天体の映像が映し出されていた。海王星の衛星プロテウスが分裂したこれらの天体は、まるで意図的に地球を狙うかのように、確実な軌道で接近していた。
アンサ国連事務総長は、深刻な表情で口を開いた。
「諸君、現在、小天体12個が約3年後に地球へ衝突する可能性があることが確認された。これは自然現象ではなく、何者かによる意図的な攻撃である可能性が高い。これからは巨大隕石群と呼ぶ。」
会議室に緊張が走る。リリィたちは、最前列に座り、各国の科学者、軍事関係者と共に作戦の策定に参加していた。
迎撃計画の提案
① 軌道変更作戦(NASA & ESA)
NASAの主任技術者がスクリーンを指し示しながら説明する。
「まず、DART(小惑星軌道変更ミッション)の拡張版を計画している。質量の大きいロケットを高速で衝突させ、軌道をずらすことで、地球から逸らす作戦だ。」
ESAの科学者が続ける。
「さらに、核爆発を用いた軌道変更も検討している。ロシアの核技術を活用し、核爆発エネルギーで巨大隕石群を吹き飛ばす。」
ロシア宇宙庁(Roscosmos)の代表がうなずく。
「しかし、これは大きなリスクを伴う。失敗すれば、地球に向かう破片が増えてしまう可能性がある。」
リリィは腕を組んで考えた。
「破片が増えるなら、それを防ぐ手段も必要ね。」
② 迎撃レーザー衛星(JAXA & RocketX)
JAXAの代表が前に出て、新技術の提案を行う。
「日本は、現在開発中の高出力レーザー兵器を宇宙空間に配置することを提案する。」
会場がざわめく。
「これまでのレーザー兵器では、威力が足りなかった。しかし、核融合炉用のレーザーを改良することで、戦略レベルの高出力を実現できる。」
RocketXのイーロン・マスクが前のめりになる。
「それは面白い。レーザー衛星を大量に配置すれば、隕石を小規模な段階で粉砕できるな。スターシップを使って、一気に軌道上に展開しよう。」
リリィはうなずいた。
「迎撃網を構築して、地球に届く前に撃ち落とす。有効ね。」
③ 宇宙エレベーター建設(ジャック & AI連携)
ジャックがスライドを切り替え、新たな提案を行う。
「だが、最も持続的かつ効率的な方法は、宇宙エレベーターの建設だ。」
会場が静まり返る。
「宇宙エレベーターがあれば、安価に物資を宇宙に送り出せる。レーザー衛星、迎撃ミサイル、さらには質量投射兵器も宇宙空間で運用できるようになる。」
アンサ事務総長が慎重に尋ねる。
「しかし、現状の技術では、宇宙エレベーターの建設はまだ実現していないのでは?」
ジャックが頷いた。
「我々冒険者ギルド株式会社では、カーボンナノチューブの10倍の強度を持つワイヤーが開発できた。これがあれば、建設は可能だ。」
会場がどよめく。JAXAの技術者が冷静に分析しながら言う。
「理論的には、超高強度のワイヤー素材があれば、建設は可能。問題は、エネルギー供給と資材の運搬だ。」
リリィが言った。
「それなら、魔法の転送技術で一部の資材を送れるかもしれない。地球と宇宙をつなぐ橋を作るのよ。」
アンサ事務総長が深く頷いた。
「なるほど、それならば、国連としても、この計画を正式に承認する価値がある。」
最終決定
国連宇宙防衛会議は、以下の作戦を実行することで合意した。
NASA & ESA → DARTの進化版 & 核爆発による軌道変更
JAXA & RocketX → 高出力レーザー迎撃網の構築
宇宙エレベーター建設 → 長期的な防衛拠点の確立
アンサが静かに言った。
「これが、地球防衛のための最初の一歩だ。
リリィが立ち上がる。
「この戦いは、地球と宇宙の未来を決める戦いよ。」
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会議が終わり、リリィたちはニューヨークの夜空を見上げていた。ビルの谷間で、マモルはギターを手にしていた。
「宇宙規模で戦うって、すごい話だよな。」
彼は静かに弦を弾いた。
「でもさ、何かが襲ってくるってことは、俺たちがどこかで何かを見落としてるってことなんじゃねえの?」
彼は夜空を見上げた。
「"あいつら"はまた来る気がする。」
マーガレットが猫耳をピクリと動かす。
「それは、確かにそうニャ。」
夜空に輝く星々は、何かを語りかけるように瞬いていた——。