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第126話 小惑星監視システムの強化    2021.2

リリィは静かに目を閉じた。彼女の胸に響くのは、未来を感じるマーガレットの言葉だった。


「、何かが来る。でも、いつかはわからない。私の予知はぼんやりしているの。」


マーガレットの猫耳がぴくりと動き、彼女は遠くを見つめていた。


「けれど、確かに来るの。巨大なものが。光の速さではなく、じわじわと地球へ向かっている、。」


その言葉が、リリィの心に重くのしかかる。何かが地球に接近している。それが、小惑星なのか、彗星なのか、それとも別の脅威なのか——彼女たちには、確証がなかった。


「だったら、私たちがやるべきことはひとつ。」


リリィは立ち上がり、力強く言った。


「人類がそれを知るためのシステムを強化するのよ!」


国連への提案

 リリィたち一行は、ニューヨークの国連本部へと向かった。事前に、アンサ国連事務総長に巨大隕石群接近について話し合いたいと連絡していたことから、国連主導で各国の宇宙開発関係者がTV会議で集まっていた。


「リリィ、君たちの協力には感謝している。しかし、現時点で衝突の確証はない。君の仲間の予知だけでは、国際的な動きを起こすのは難しい。」


アンサ事務総長は慎重な口調で言ったが、リリィは引き下がらなかった。


「確証がないからこそ、準備するべきなの!」


アメリカ航空宇宙局NASAの代表が腕を組みながら考え込む。


「現状、『小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)』は、数日から数週間前には小惑星の接近を検知できる。しかし、現時点では探知精度が限られている。直径100メートル以上のものは事前に把握できるが、それ以下のものは完全ではない。」


欧州宇宙機関ESAの科学者も補足する。


「また、太陽の影に隠れた小惑星は見つけにくい。私たちが探査できる範囲には限界があるんだ。」


「だったら、それを改善するのよ!」リリィが力強く言う。「隕石がどこから来るか分からないなら、すべての方向を監視すればいいわ!」


アンサは目を細め、ゆっくりとうなずいた。


「つまり、ATLASの精度を向上させるため、新たな観測技術を導入すべきだと?」


「ええ、宇宙の四方八方を360度監視できるようにするの!」


新たなる監視システムの構築

NASA、ESA、JAXA(日本宇宙航空研究開発機構)、ISRO(インド宇宙研究機関)、そして民間企業のRocketXとGrey Originが協力し、新たな監視ネットワーク構築のプロジェクトが始動した。


ハワイ大学が開発しているATLAS望遠鏡を10機増設し、すべてを転移魔法陣により宇宙空間に設置することで、建設コストを削減する。


ESAのガイア衛星の技術を活用し、小惑星の精密な軌道計算を実施。


JAXAが開発した高感度センサーを搭載し、微弱な光を捉える新システムを導入。


監視ステーション

NASAが地球公転軌道上に小惑星監視用の宇宙望遠鏡を配備。

太陽の影になりがちな小惑星も検出可能に。


AIを活用したデータ解析

RocketXのAI技術を活用し、観測データを即座に解析。


ESAのスーパーコンピュータで、小惑星の軌道シミュレーションを高速化。


プロジェクトが進む中、マーガレットがそっとリリィに言った。

「これで、未来が変わるかもしれないニャ~」


最初の警報

新システムの運用が始まって数週間後、最初の異変が検出された。


ATLASの改良版システムが、通常の監視範囲外から接近する小惑星を捉えた。


「NASA、本部、応答してください!」


観測チームが騒然となる。


「直径3kmの小惑星が、地球に向かっている可能性がある!」


これまでのシステムでは見つからなかったはずの天体が、新技術によって発見されたのだ。

その天体の表面は黒く、光を反射しづらい成分で、視認性が悪かった。


リリィは息を飲んだ。

「やっぱり、来るんだわ。」


NASAの科学者は深く頷いた。

「君たちのおかげで、数週間の猶予を得た。今なら、対策が間に合うかもしれない。」


リリィは仲間たちと顔を見合わせ、満足げに微笑んだ。


「じゃあ、次はどうする?」


リリィ

「もっと発見されていない小天体があるかもしれないわ。探査を続けましょう。」


ジャック

「さあ、地球を救うための戦いの始まりだ。」


・・・・・・・


その後、3km~10kmの黒い小天体が海王星の方向から、地球を目標としているかのように、12個、接近してきているのを発見されたのだ。


調べると、海王星の2番目に大きい衛星(直径約420 km)、プロテウスが分裂していたのだ。プロテウスは暗くて反射率が低い。ほぼ炭素のような成分であった。


ATLASの関係者は息を飲んだ。

「何という数と大きさだ。」


ジャック

「これは、根本的に小天体を迎撃する宇宙の設備が必要だ。つまり、宇宙エレベーターが必要だ。宇宙エレベーターがあれば、宇宙空間に物資を運び、小天体を迎撃できる高出力レーザ-光線の事項衛星や核搭載のロケットを沢山作ることができる。」


・・・・・・・・・・


リリィたちはニューヨークの夜空を見上げていた。冷たい風が吹き抜けるビルの谷間で、マモルはギターを手にしていた。


「リリィさん、宇宙規模で地球を救おうとしてるんですね。」

彼は、軽くギターの弦を弾く。


リリィが静かに微笑んだ。

「そうね。でも、私たちの力だけじゃできなかった。みんなが協力してくれたおかげよ。」


ギターの音が止まり、マモルはふと口をつぐんだ。これから地球が迎える運命に、ほんの少しだけ恐怖を覚えた。


マモルは、夜空に浮かぶ月を見上げた。

「でもさ、宇宙ってすっげえ広いんだよな。今回の小惑星は見つけられたけど、まだまだ俺たちが知らないものが、あの暗闇の向こうにたくさん潜んでるんでしょ」


マーガレットが、猫耳を揺らしながら頷く。

「そうニャ。いつかまた、予知できない何かがやってくるかもしれないニャ。」


マモルは肩をすくめて。

「宇宙には、危険なことが一杯あって、僕たちは、それを知らないか、忘れているだけなんですね」


彼は、静かにギターを奏で始めた。その音は、夜空に広がる宇宙のように、どこまでも広がっていくようだった。


リリィは微笑みながら、仲間たちとともに夜空を見上げた。


・・・・・・・・・


闇将軍の拠点


闇将軍

「あははははは、地球の魂を全部いただくよ。どうだい、この作戦は!」


闇幹部

「お見事でございます。ここに漂っていた黒い天体を、スペースデビルワーム数百体を使役して、12個に分解し、地球に投げつけるなど、我々には考えられません。」


闇将軍

「そうだろ。そうだろ。前回までの作戦は規模が小さすぎた。これがワシの本来のスケールだ。」


闇幹部

「ところで、なぜ、12個に分解されたのですか?大きいまま衝突させればよかったのでは?」


闇将軍

「理由は二つだ。小さい方がコントロールしやすい。それに、大きすぎると惑星が溶岩の海になってしまう。そうなれば、また、生命が繁殖するまで長くかかりすぎるからだ。生物だけが死ぬ、そういう大きさがよいのだよ。」


闇幹部

「ご慧眼でございます。恐れ入りました。」


闇将軍は不気味に笑いながら、

「そうだろ。そうだろ。」


闇将軍は、いまや宇宙空間でも大丈夫となった巨大な体をくねらせながら、海王星の衛星トリトンから、遠ざかっていく、スペースデビルワーム数百体が潜んだ小天体群と、小さな青い点の地球を眺めながら、満足げに笑った。


闇将軍

「あの小天体群が地球に衝突するまで3年はかかる。それまでの間、ワシは他の惑星の魂の収穫を確認してくる。後は頼んだぞ。」


闇幹部

「はっ、お任せください。」


闇将軍は、「3年後にまた来る」と言って、宇宙の闇の中に消えた。

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