第125話 定例会議 2021.1
【ニューヨーク拠点・リビングルーム】
暖炉の前でくつろぐリリィたちに、リリィの静かな声が響いた。
リリィ「そろそろ、今年最後の定例会議を始めましょう。皆、準備はいいかしら?」
ガルドがポーションの瓶を片付けながらうなずき、マモルはノートパソコンを閉じた。
ジャック「今年は、災害対応も戦闘も多かったな。まるで冒険者ギルドじゃなくて、地球防衛軍だ。」
コモン「実際、そうなってきているから困る。」
リリィは微笑しながら、魔法スクリーンを起動した。
リリィ「それじゃあ、コモン。進捗とまとめ、お願い。」
【2020年 最終進捗報告】
コモン「2020年の主要プロジェクトを振り返ります。」
■ 1.砂漠緑地化計画の進行
コモン「9月、国連総会で正式採択された“地球全土の砂漠緑地化計画”は、10月の実行メンバー決定を経て、各地で実行に移されています。」
・オアシスの配置:北アフリカ、中東、中央アジアに初期設置済み。
・海水淡水化と転送:ボツワナ、サウジアラビア、アルジェリアにて海水の真水転送を稼働中。
・地下貯水層:初期型は8か所稼働中、10億トン規模の水保有。
・AI農業:VR操作による自動農地管理が拡大中。
マーガレット「広がってるニャ~、緑の未来ニャ!」
■ 2.フィリピンのタイフーン対策成功
ジャック「フィリピンでは、泡の冷却作戦とコンテナゴーレムの固定配置によって、今年の台風上陸をすべて阻止した。」
・クジラゴーレム回遊300体 → 常駐部隊100体+定点配置300体へ再構成
・深海泡冷却作戦成功、タイフーン発生阻止率:90%以上
・土砂崩れ対策:山岳地帯3000か所に岩ゴーレム&土ゴーレム展開
ガルド「やっぱ岩ゴーレムは頼りになるな。ドカッと構えてるのがいい。」
■ 3.闇将軍との戦闘と対抗策
リリィ「9月末、熱海拠点への闇将軍の襲撃――。あれは、想定以上の戦力だった。」
ジャック「魔素吸収攻撃、闇獣の大群、闇ジャイアントワーム。まともに食らったら全滅だったな。」
マモル「殺虫剤が効くとは思わなかったけど……次は通じないでしょうね。」
リリィ「ええ、でもあの戦いで弱点も見えた。AIロボットや電気で動く兵器、ネバネバ素材も研究を進めているわ。」
コモン「そして――あのワームの内臓から、新素材が生まれた。」
■ 4.新素材の発見と宇宙エレベーターへの応用
グネル(魔法通信で中継)「おーい、聞こえてる? こっちは順調よ。あのワームの内臓とミスリル、シリコンを使った“らせん型超高張力ワイヤー”、完成してるわよ。」
ボードの声(通信越し)「ふははは、我が容器にかかれば当然の結果だ。」
リリィ「ありがとう、グネル。これで、宇宙エレベーターの建設が本格化できるわ。」
ジャック「アーロンにも連絡済みだ。月面と赤道上に同時に建設する段取りで進めている。」
【外交・経済・社会面】
コモン「各国の対応だが――」
・日本:中国:タイフーン拠点譲渡を進め、自己管理へ。プライド重視対応。
・韓国:技術流出懸念により、全取引停止。新規契約打ち切り。
・アメリカ:ダンジョン刑務所運用拡大中。自給自足型囚人管理システムは高評価。
・宗教詐欺団体:取り締まり完了。教祖たちは“誠実で質素な聖者”へ強制転生。
マーガレット「ニャフフ、女神教の教祖たちが、ちゃんと信者の世話してるニャ~!」
【新たな社会対策】
シノブ「“ボー君人形”が世界中のコンビニボーソンで販売好調です。現在、販売数は270万個を超えています。」
リリィ「自殺防止、精神安定への支援に魔法を応用した初めての民間商品ね」
【締めくくり】
リリィ「これが2020年、私たちの軌跡。災害対策、環境回復、宇宙進出、魔法の社会応用、いずれも確実に前進している。」
コモン「新年は、宇宙エレベーターの建設、隕石迎撃体制の構築、闇将軍への次の備え。やることは尽きないな。」
ガルド「まぁ、正月ぐらいはゆっくりするか。」
マーガレット「初詣ニャ~!」
リリィ「ええ、今夜は少し休みましょう。そして、また走り出すの。」
マモル「……そうですね。」
全員「乾杯!」
2021年の正月、ニューヨーク拠点に笑い声が響いていた。
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第59-9話 定例会議
【ニューヨーク拠点・リビングルーム】
雪が窓の外にちらつくなか、暖炉の前に集まった仲間たちは、温かいお茶を片手に静かに座っていた。ホログラムのスクリーンがふわりと浮かび上がり、リリィが口を開いた。
リリィ「それじゃあ、新年初の定例会議を続けましょう」
ジャック「去年は地球全体で災害と戦って、闇将軍ともガチでやり合ったからな……本当に一年だった。」
マーガレット「今年も、いっぱい動くことになりそうニャ。」
マモルは静かに手を上げた。
マモル「リリィさん、今年の目標って、何ですか?」
リリィは少し微笑み、仲間たちを見回してから答えた。
リリィ「“宇宙の脅威への備え”よ。マーガレットの予知と、観測網が一致した以上、もう現実なの。隕石群は、確実に、来る。」
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【進捗確認と2021年の優先課題】
コモンが立ち上がり、スクリーンに資料を展開する。
コモン「まずは2020年の成果まとめから。」
◆ 2020年の成果(要約)
地球全土の砂漠緑地化計画、開始。AI農業モデル構築、地下水供給網の運用開始。
フィリピンでのタイフーン対策成功。深海冷却装置とゴーレム網による自然災害の抑制。
闇将軍との初の直接戦闘。魔素吸収攻撃・闇ジャイアントワームに苦戦。
闇ジャイアントワームの体内から、新素材を発見。宇宙エレベーター建材として活用へ。
女神教問題と詐欺宗教団体の“改心”。奴隷書による再教育完了。
自殺予防として「ボー君人形」販売開始。精神魔法の民間応用に成功。
リリィ「それに加えて――“プロテウスの破片”の接近が明らかになったわ。」
ジャック「地球に向かってくる、12個の黒い小天体。接近完了は3年後……つまり、2024年末か、25年の頭。」
マモル「じゃあ、今年から3年が勝負ってことですね……。」
リリィ「そう。時間はあるようで、実は少ない。だから2021年のテーマは、“宇宙防衛体制の構築”よ。」
【2021年の行動計画】
コモンが項目をまとめて提示する。
■ 1.宇宙エレベーターの建設開始
ワイヤー素材は完成済み(ワーム内臓+ミスリル+シリコンの合成繊維)。
月面側および赤道直下の拠点にて同時建設開始予定。
貨物用エレベーター、迎撃レーザー設置の準備。
ジャック「アーロンに連絡済み。地上からの運搬ルートの設計も順調だ。」
■ 2.隕石迎撃装備の構築
高出力レーザー衛星の設計開始。
推進ロケットの配備。弾頭型も含む(小型核融合弾頭も検討)。
ゴーレム式迎撃機の開発。魔法と物理の融合兵器のプロトタイプ設計。
ガルド「やっぱ、物理でぶっ叩く装備も必要だな。」
■ 3.観測網の強化
ATLAS(最終警報システム)の拡張。宇宙転移による望遠鏡配置。
ESAのガイア技術、JAXAの高感度センサーを融合。
小天体の自動トラッキングAIの導入。
マーガレット「私の予知はぼんやりしてるから、こういう装備があると安心ニャ。」
【社会的対応】
ジャック「宇宙開発に集中するにあたって、地球側の災害管理・社会安定は引き続きAIゴーレムネットワークと国際警察官制度で対応する。」
コモン「あと、各国との契約更新と、知財保護の再確認も必要だな。」
リリィ「一つ、今年は“地球人の宇宙意識”を高める必要があると思ってるの。」
マモル「意識、ですか?」
リリィ「災害や経済の問題は“地球の中の話”。でも、今の時代は、地球の外から危機が来る。だから、目線を変えなければならないのよ。」
【結び】
リリィ「さて、今年は大変な年になるわよ。地球防衛の本格化、技術と魔法の融合、国際協調――」
マーガレット「忙しいニャ~」
ガルド「でも、俺たちがやらなきゃ、誰がやる?」
ジャック「正義の味方ってのも、たまには悪くないな。」
マモル「僕は、みんなと一緒なら、どんなことでも乗り越えられる気がします。」
リリィ「よし、今年も、命を守るために。未来を創るために――走るわよ!」
全員「おう!」
ニューヨークの寒空の下、仲間たちの声が、静かに新たな年を照らしていた。