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閑話 イワオの憂鬱 自殺者を止めたい     2021.2

ある夜、イワオはテレビを見ていて、衝撃が走った。

「女優の松内祐子さんが自殺した?なんで?」


深夜ニュースで、女優の松内祐子が自殺したという、驚きのニュースだった。彼女は日本を代表する有名な女優であり、映画やドラマで多くのファンを持つ存在である。東京都の自宅で亡くなっているのが発見されたという。享年40歳。


予期せぬ事件にイワオは不安な気持ちに包まれた。妻サクラも暗い顔で言う。

「あんなに活躍していた女優が自殺するなんて、信じられないわ。」


国際警察官として每日忙しく働いていたイワオだが、このどうしようもない想いを誰かに聞いてもらいたくて、マモルにメールした。電話だと上手く伝えられないからだ。


1時間ぐらいして、メールの返信があった。


マモルのメール

「僕も彼女のファンだったので、自殺のことを知って、とても驚いてます。僕は自殺する人は現実の何かから逃げるために自殺すると思っています。彼女は何から逃げていたのだろうか。何が辛かったのだろうか。僕はそれが知りたい。」


イワオ

「マモルらしいな。悲しむよりも原因を知りたいと思うなんてな。」


イワオは、そのメールを見て、少しだけ楽になった気がした。


・・・・・・・・・


翌日、イワオのもとに、都知事から「来てほしい」という連絡があった。

都知事とは特に親しいわけではないが、国際警察官としてさまざまな頼まれごとが多かった。

「また、あのおばさん、無理難題じゃないだろうな。」


都知事

「イワオさん、いつもありがとう。あなたの国際警察官としての意見を聞きたくて、呼んだのよ。」


イワオ

「はい、都知事。どのようなご用件でしょうか?」


都知事

「女優の松内祐子さんが自殺したこと、どう思う?」


イワオ

「とても残念に思います。」


都知事

「そうね。でも、私は政治家だから数字を見るの。有名人が自殺すると、同じように後を追う人が増えるのよ。これは統計的な事実なの。」


イワオ

「えっ、そんなことが?知りませんでした。」


都知事

「毎日、生きるのがつらいと思っている人たちが、『自分も、』と決断してしまうのよ。これは重大な問題よ。」


イワオ

「でも、国際警察官に自殺を止めることはできませんよ。」


都知事

「普通に考えればそうね。でも、あなたなら、何かできるんじゃないかしら?」


イワオ

「? 俺は普通の人間ですよ。何もできませんよ。」


都知事

「でも、国際警察官は魔法を使えるでしょう?」


イワオ

「いやいやいや、魔法といっても、この手帳にある機能の魔法で、小さな力ですよ」


都知事

「でも、魔法を使えるということは、何か閃くんじゃないかしら」


イワオ

「また無茶ぶりですね。俺には何もできませんよ」


都知事

「分かったわ。今はそう思うのね。じゃあ、またしばらくしたら、連絡するわ」


イワオ

「え?」


都知事

「今日は、お忙しいところ、本当にありがとう」


そう言って、都知事はデスクに向かい仕事を始めた。


イワオはため息を吐きつつ、執務室を出た。


「都知事のおばさんめ。すっかり俺の性格をつかんでいる。自分の悩みを俺に押し付けて、自分は忘れるというお得意の技だ。俺は断ったのに、なぜか、それが悪いことのように重荷になってしまう。」


イワオは、仕方なく、マモルに都知事からの話をメールで伝えた。


「こうでもしないと、俺が精神的に病みそうだからな。許せ、マモル。都知事に吐かれた毒を少し引き受けてくれ。」


マモルからの返信は短かった。


「何ができるか分からないが、考えてみる」


イワオ

「さすが、マモルだ。この無理難題をなんとかしようと考えるなんて。ごめんな、マモル」


1週間後


再び、都知事から連絡があった。


都知事

「マモルさんに連絡してくれてありがとう。なんとか、自殺者を減らす方法が見つかったわ。本当にありがとう。」


イワオ

「へ? どういうこと? 何かいい案が見つかったのですか? いや、マモルからは何も聞いてないけど?」


イワオはすぐにマモルにメールした。

「何か自殺予防のいい手を考えたのか? 都知事が喜んでいたけど。」


すぐに返事があった。


マモル

「自殺予防になるかは分からないけど、試してみてほしいと都知事に連絡した。うまくいったら説明するから。」


イワオ

「なんだよ、ちぇっ、秘密かよ。」


・・・・・・・・


さらに1週間後


ある日、コンビニボーソンで新商品が発売された。


「あなたの悩みに効く! ボー君人形をあなたに」


テレビコマーシャルには、有名な漫才コンビが出演していた。


A「このボー君人形にね、毎日悩みを話すと楽になるんですよ。」

B「ほんまか? 嘘ちゃうんか?」


A「このボー君人形を手に持って、辛かったことを思い浮かべると、、」

B「思い浮かべると?」


A「ちょっとだけ、人形が温かくなる。」

B「ほうほう、おっ、ほんまやな。」


A「すると、辛かったことがちょっとだけ軽くなる。忘れるわけじゃないけどね。」

B「わしは、なんも感じんで?」


A「悩みのないアホには効かんのや!」

B「さよか、・・・、ほっとけ!」


看板の下には、小さく「協賛東京都」の文字が。


イワオ

「なるほど、これか!」


急いでボー君人形を3つ購入した。手に収まるサイズで、説明書には『魔法で、あなたの辛い想いを軽くしてくれます』と書かれていた。小学生にも分かる内容だった。


試しに握りしめ、過去の辛い記憶を思い出してみると、人形がじんわり温かくなり、その記憶が薄れる感覚を覚えた。


イワオ

「なるほど、これは確かに魔法だな。マモルにお礼のメールをしよう」


・・・・・・・


マモル

「リリィさん、ボー君人形、うまくいきそうです。友達からお礼のメールが届きました。」


リリィ

「そう、良かったわ」


ジャック

「異世界では一般的なアーカイブ魔法の弱化版だよ。大量生産してボーソンで売れば、可愛いから売れるだろうな」


マモル

「アーカイブって、出会ったときに、リリィさんが、記憶をアーカイブしているって言ってたやつですか?」


リリィ

「そうよ。人形に入れたのは、あれの凄く弱いやつね。辛い記憶を想いながら、人形を握ると、その記憶が薄れるのよ。忘れるわけじゃなくて、小さくなっていく感じね」


コモン

「中の魔石は10年は使えるし、クリーン魔法も付加しているから、汚れないし臭くもならない。価格の100倍の価値があるが、まぁいいか」


リリィ

「お金は使わないと経済が回らないわ。いろいろな種類のキャラクターにして、世界中のコンビニボーソンで売りましょう」


ジャック

「効果があれば、それでいい。人が死ななきゃ、いいんだ。」


マモル

「確かに、そうですね。」

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