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閑話 アメリカ大統領の悩み ダンジョン刑務所の誕生 その2 2020.10

アメリカのテレビ局 ― 世紀のスクープ


プロデューサーの決断

深夜のニュース編集室。

テレビ局のプロデューサーは、モニターに映る映像をじっと見つめていた。


「これは、とんでもないスクープだ。」


彼の手元には、匿名の情報提供者から送られてきた映像データがあった。

映像には、「無期懲役囚が自由に暮らしている異質な刑務所」の様子が映されていた。


ディレクターが緊張した面持ちで確認する。

「本当に放送して大丈夫ですか?」


プロデューサーはにやりと笑った。

「こんなネタ、見逃せるわけがない。 すぐに放送しよう。」


全国放送 ― 衝撃のインタビュー

アナウンサーは真剣な表情でカメラを見つめる。


「皆様、これからある映像をご覧いただきます。内容は驚くべきものです。」


画面には、洞窟の中でくつろぐ囚人が映し出された。

彼の名前は、チャールズ・M。

無期懲役囚であり、本来ならば外界と接触することはないはずだった。


インタビュー開始


「チャールズさん、あなたは無期懲役ですが、ここで何をしているのですか?」


チャールズはオノを肩に担ぎながら笑った。

「ここは『ダンジョン刑務所』ってやつさ。ここでは魔物を狩って、自給自足で暮らしてるんだ。」


「無期懲役なのに、自由に暮らしているということですか?」


チャールズはニヤリと笑う。

「自由と言えば自由だな。ただし、毎日命がけだけどな。何度も魔物に食い殺されたぜ。」


「死んでも生き返ったのですか?」


チャールズは誇らしげに頷く。

「そうだ。ここでは無茶しても生き返れるんだ。何度でもな。」


その瞬間――


映像が突然途切れた。


スタジオに戻ったアナウンサーは視聴者に向かって語りかけた。


「皆様、映像はここで途切れました。しかし、どうやらこれは本当のことのようです。」


「この件について、政府の正式な発表をお待ちください。」


全米が騒然となった。


・・・・・・・・・・


ホワイトハウス ― 衝撃の公式発表

ホワイトハウスの記者会見室には、多くの報道陣が詰めかけていた。

登壇したのは、アメリカ政府報道官。


「本日放送されたダンジョン刑務所について、お答えします。」


「この内容はすべて真実です。囚人たちは本人の希望により、ダンジョン刑務所へ移送されています。」


記者が手を挙げる。

「人権侵害の懸念があるのでは?」


報道官は冷静に答えた。

「ダンジョン刑務所は囚人の希望に基づいて設置されており、人権は守られています。また、刑務所運営コストの大幅な削減に貢献しています。」


「今後も、囚人をダンジョン刑務所へ収容する方針です。」


この発言に対し、人権団体や国際社会は激しく反発した。


ダンジョン刑務所のルールと経済システム

テレビ報道によって世間の注目を集めたダンジョン刑務所。

しかし、その内部システムについての詳細は報道されていなかった。


そこで、政府は追加情報を公表することにした。


〇ダンジョン刑務所の基本ルール

収容者は刑の軽減の代わりに、ダンジョン内で自由に暮らせる。

ダンジョンからは決して出られない。

生存のためには、魔物を狩ることが必要。

死亡しても復活するが、死の苦痛は避けられない。

収容者の監視は特殊な首輪で行い、所在と健康状態を把握。

犯罪行為(仲間への襲撃・金品の奪取など)は即座に対処される。


〇ダンジョンでの経済システム

囚人は魔物を狩ることで生計を立てる。

魔物の肉・骨・毛皮は、異世界で販売され、地球の通貨に変換。

その資金で、食料・衣類・道具を購入可能。

すべての取引はダンジョン内のコンビニを通じて行われる。

無理に奪おうとすると自動防衛システムが作動する。


・・・・・・・・


メディア報道後の市民と人権団体の反応

ダンジョン刑務所の実態が明るみに出ると、アメリカ国内外で賛否が巻き起こった。


〇一般市民の反応

「税金の節約になるなら、別に問題ないんじゃないか?」(30代男性)

「生きる自由もあるし、本人の選択ならいいと思う。」(20代女性)

「刑務所よりマシだろ。働かないと食えないのは当然。」(40代男性)


〇人権団体の反発

「囚人を見世物にし、奴隷労働させるのか!?」(国際人権団体)

「死ぬ苦痛を何度も味あわせるのは非人道的!」(アメリカ人権団体)

「人間を魔物と戦わせるなんて、正気の沙汰じゃない!」(国連関係者)

こうした議論は世界的に広がり、国連でも取り上げられることとなった。


・・・・・・・・・


ホワイトハウス ― 大統領とリリィの会談

アメリカ大統領はコーヒーを片手に、リリィを見つめた。

「リリィさん、思っていた以上に囚人のニーズに合っていたようだ。」


リリィは微笑んだ。

「地球人は、異世界人よりも好戦的な者が多いですね。だからこそ、こういう環境には適応しやすいのです。」


アメリカ大統領は考え込みながら言った。

「無期懲役の囚人だけでなく、他の囚人にも適用できないだろうか?」


リリィは即答した。

「可能です。罪の軽い者には、死ぬ危険の少ないダンジョン刑務所を用意しましょう。」


大統領は満足げに頷いた。

「それは良いな。では、規模を拡大しよう。」


リリィはウィンクして答えた。

「分かりました。どんどん増やしていきましょう。」


こうして、ダンジョン刑務所の制度はさらに拡大され、世界各国にも影響を与えていくのだった。

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