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第111話 地球全土の砂漠緑地化計画を実行    2020.10

それは、地球上のすべての砂漠を緑地へと変え、生命を再生させる壮大な計画だった。かつて人類が失った森林と農地を取り戻し、地球の生態系を復活させるために、AIロボットと魔法技術が動き出した。


計画は大きく八つの段階に分かれ、①各国地元説明と了解、②オアシス設置、③河川コントロール、④海水からの真水生成、⑤地下貯水層の建設、⑥肥料生産、⑦土壌改良、⑧農地整備までを目指している。地球規模のプロジェクトにより、長年不毛の地とされていた砂漠が、再び緑に覆われる未来が描かれていた。


①各国地元説明と了解

農業開発には国際協力が不可欠だった。

国連の外交官達は、各国の利害を調整し、支援を獲得する。

アフリカ連合の調整官は、アフリカ諸国の協力を促進する。

彼らの尽力により、地球規模での協力体制が構築され、砂漠緑地化計画は着実に進行していった。


②オアシスの設置

静寂の砂漠を、AIロボットが無数に歩いていた。彼らは計算された座標に立ち止まり、小さな紙を地面に置く。


パァァァ、!


紙の上に輝く魔法陣が展開されると、現地の砂を材料にして土製の巨大なコンテナが出現した。その外観は岩のように固く、内部には乾いた砂漠の砂が詰められている。やがて、四方から水が染み出し、内部の砂をゆっくりと湿らせた。コンテナの中央には、現地の環境に適応する植物の種が次々と転送される。


さらに、コンテナの上部には結界が張られ、強烈な太陽の熱や砂嵐から水分を守る機能を備えている。世界中の砂漠に100m四方ごとにこのコンテナが出現し、広大な砂漠に無数のオアシスが生まれ始めた。


コンテナの横面には、どの国でも読めるようにこう書かれていた。


「国連 地球全土の砂漠緑地化計画」



③河川の水位コントロール

一方、世界中の主要な河川の岸辺でも、AIゴーレムが同じように動いていた。彼らは河川沿いを歩きながら、紙を地面に置く。


ボゴォン、!


すると、小さな祠のような岩のオブジェが川の端に現れ、ゆっくりと水中に沈んでいった。その岩は魔法の力で平均的水位に安定させる装置になっていた。洪水のときには水を吸収転移し、乾季には貯めていた水を放出転移する。


河川に泥や砂が堆積して川底が浅くなっているところは、AIゴーレムが泥と砂を掘り、泥と砂を砂漠に転移させて、川底を整えながら、河川の水を安定させ、砂漠へ向かう水の供給をコントロールし、安定した水資源を確保する仕組みが作られた。


④真水の生成

海岸沿いでも、AIゴーレムたちは活動を続けていた。彼らはまた小さな紙を地面に置く。


ザワァァァ、


海の中から、土製のコンテナが出現し、海流に乗って沖へと移動していった。そのコンテナの内部では、錬金魔法陣が光を放ち、海水を真水と塩に分解していた。


塩は海水に溶かしながら徐々に捨てられ、環境への影響をゼロに抑える。


生成された真水は、転移魔法陣を通じて地下貯水層へと送られた。


このシステムにより、砂漠地域に安定した水供給が実現した。


⑤砂漠の地下貯水層の建設

砂漠の一角でAIゴーレムが立ち、静かに動作を開始した。足元の砂が崩れ、ゴーレムが砂の中へと沈んでいく。


ズズズ、


やがて、砂漠の500m地下に到達すると、ゴーレムは慎重に作業を開始した。ゴーレムは手元の砂に小さな紙を貼り付けた。すると、魔法陣が浮かび上がり、周りの砂を材料にして岩ゴーレムが次々と召喚される。


ゴゴゴゴ、!


彼らは砂の下で結束し固まり、下部には粘土層を作り、その上にスポンジの網目のように緻密な構造を作り、水を効率的に保持する貯水層を形成していく。これが、海や河川から転送された真水を貯めるシステムとなる。貯水層が十分な広さになるとAIゴーレムは砂の中を移動し、貯水層の範囲を徐々に広げていく。


やがて、地下には数十億トン規模の水が貯められ、これが砂漠のオアシスと農地に転移供給されていく。


⑥肥料の生成

世界中の下水処理場にAIゴーレムが出現。


汚泥からアンモニア・リン酸・カリウムを抽出し、転移魔法で肥料製造プラントへ送られる。


ゴミ収集場では、農業廃棄物や食品ロスを回収し転移し、これも肥料製造プラントへ転移される。


⑦土壌改良


砂漠の広大な地に、AIゴーレムが静かに歩を進める。彼らは100メートルごとに立ち止まり、小さな紙を地面に置く。


シュン、!


魔法陣が輝き、紙の上に周りの砂を材料にして土ゴーレムが召喚される。土ゴーレムは単純な作業しかできないが、確実に任務を遂行する。彼らはオアシスから染み出してくる水を活用し、周辺の土壌に小さな畑を作り始める。


畑の面積は小さいが、数が膨大だ。肥料が溶け込んだコンテナの水によって、乾いた砂漠にも生命が芽吹き始める。小さな苗木も定期的に植えられる。菌根菌を導入し、植物の根と共生する微生物が、土壌を豊かにし、少量の水でも成長を促進されていく。


結界魔法が周囲を包み込み、水の蒸発を抑制する。その恩恵により、畑の土壌は一定の湿度を維持し、植物はゆっくりと根を張っていく。


⑧農地の整備


土壌が安定した地域では、芋・豆・トウモロコシ・麦・陸稲を栽培。


AIゴーレムが持続的な管理を行い、農地で出来た新鮮な作物は土ゴーレムが収穫し、AIゴーレムがまとめて市場の所定位置へ転移させる。


黄金虫ゴーレムの監視

砂漠の空には、黄金虫ゴーレムが飛び交い、害虫対策と監視を続けていた。


設備に損傷が加えられれば、即座に国際警察官に通報される仕組み。彼らは人間に対して敵意を持たず、単に異常を検知する役割を担っていた。


地元住民たちは最初、空を飛ぶこの奇妙な存在に驚いていたが、彼らが環境を守るための存在であり、人間には危害を加えないことを知ると、次第に受け入れるようになった。


・・・・・・・・・・


緑の未来へ


砂漠を行く旅人は、ふと足を止めた。そこには、青々と茂るオアシスが広がっていた。かつて不毛だった大地が、命を宿し始めた。


「地球全土の砂漠緑地化計画」


それは、ただの夢ではなく、確実に進行していた。


砂漠はもう死の地ではない。

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