第１０７話 定例会議と株主総会 2019.4
【ニューヨーク拠点・リビングルーム】
リリィがいつものように皆を見渡しながら口を開いた。
リリィ「今月は株主総会よ。２０２０年度の第１四半期の報告と、昨年度の決算を兼ねた会議になるわ。もちろん、定例会議も兼ねてるから、みんな気を抜かずにお願いね。」
ジャックがうなずき、手元のタブレットを開く。
ジャック「了解。それじゃあ、三田部長、今年も監査をお願いできますか？」
三田部長「もちろんだ。例年通り、すべて確認させてもらうよ。」
リリィ「じゃあ、コモン、今年度の決算と進捗報告、お願い。」
【進捗報告】
コモンが立ち上がり、透明な魔法スクリーンに次々と資料を映し出す。
コモン「それでは、２０１９年度決算、および２０２０年３月末までの第１四半期の進捗を報告する。」
■ 資金収支
コモン「資金収入は主に以下の３本柱。」
金塊売却収益：菱紅商社を通じた売却で年間約６０億円。前年より+１２億円増。
細胞活性装置のオークション：第３号機が４９８０億ドルで落札。累計１兆５７０億ドル。収益はすべてWHO・国連経由で世界保健機関や食糧支援に分配。
災害対策関連契約：インドネシア・マダガスカルとの協力により、評価報酬型契約で年３億ドル分のクレジットが発生。
コモン「収益のほぼ全額は国際支援に投入されており、会社としての利益はほぼゼロです。」
ジャック（苦笑しながら）「相変わらず健全な非営利経営だな。」
三田部長「ふむ……またか。」
■ 核融合プラント計画
ジャック「核融合炉の建設は、試験炉３基を完成。四菱重工との提携により、２０２０年末までに量産型７基が完成予定。受注数は９５基。うち、アメリカ３５、欧州３０、アジア２５、その他５。」
ガルド「建材用の火炎ドラゴンの鱗は、グネルのホムンクルス培養によって量産可能になった。３００枚以上の在庫がある。計画は支障なく進む。」
■ 人工魔石・ミスリルの量産
コモン「魔素だまりによる人工魔石の量産は、年間１２００万個ペースに増加中。ミスリルはプルトニウムからの錬成に依存しており、廃炉事業と連動して安定確保を目指す。」
■ 国際警察官と災害対応部隊
コモン「国際警察官は現在５１２名が各国で活動中。今年度中に１０００名体制に強化予定。あわせて、災害・疫病・戦争対応専門部隊の育成を検討中。」
■ コンビニ・ボーソンの展開
コモン「試験運用中の東京店舗は営業開始から４カ月が経過。ＶＲアルバイトは稼働率９５％以上で好調。現在、世界展開のため、ロンドン、ニューヨーク、ケニア・ナイロビに２号店～４号店を設置済み。」
マモル「ナイロビ店の野外カフェ風テラス、めっちゃ人気出てるよ！」
マーガレット「ニャ～！あの魚サンドは最高ニャ！」
■ 医療崩壊と新ウイルス対応
ジャック「２０２０年２月から始まった世界的な医療崩壊に対し、回復魔法陣の紙をWHO経由で世界中の病院に配布。現在、世界の感染者数は減少傾向。」
リリィ「病院の負担を軽減し、ワクチン完成まで時間を稼げたのは大きいわね。」
コモン「魔法陣の大量印刷は、転移陣の迅速展開と共に、供給に支障なし。VR遠隔地アルバイトのブースにも魔法陣を設置しており、軽症者の外出自粛が成功しつつある。」
■ その他トピック
ジャック「宇宙監視システムATLASの拡張によって、１２個の巨大隕石群を検知。プロテウス衛星の分裂によるもので、３年以内に地球へ接近予定。現在、宇宙エレベーター建設を正式決定。」
ガルド「資材運搬用に、宇宙港の大型転移陣も整備中。責任者のアーロンが本格設計に入っている。」
リリィ「闇将軍の活動も活発化している。魂の収穫目的による疫病拡散の疑いあり。監視と対抗策を講じていく。」
【監査報告】
ジャック「それでは、監査報告をお願いします。」
三田部長が席を立ち、分厚いファイルを閉じた。
三田部長「……相変わらず、常識外れの財務報告だ。利益はゼロ。経費は魔法で圧縮。税制も無視の構造。しかし、帳簿に不正なし。資金フローは全て透明。監査結果は――適正と認める。」
リリィ「ありがとうございます。じゃあ、株主総会はこれで終了。」
マーガレット「ニャ～、その後は～？」
ガルド「打ち上げだろう？ アフリカのバッタも片付いたしな。」
マモル「ケニア産ビールとコーヒーを用意してるよ！」
リリィ「じゃあ、みんなで乾杯しましょう。今年度もよろしくね！」
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