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第101話 ワクチンが出来るまでの対策 2020.2

各国の製薬会社がワクチンの開発に奔走する中、世界の病院は新ウイルスの急激な感染拡大により、崩壊の危機に瀕していた。患者の数は日に日に増し、病院の廊下は満床の病室から溢れた人々で埋め尽くされ、医療従事者の疲弊は限界に達していた。


そんな中、突如として WHO から各国の病院に、大量の袋詰めにされた「紙」の入った箱が届いた。箱には「回復魔法陣」と書かれ、同封されたマニュアルには次のような指示が記されていた。


WHO指示マニュアル


・新ウイルスの患者専用の待合室を設置する。

・発熱が37℃以上の者はすべて専用の待合室に誘導する。

・新ウイルスの患者を選別する必要はない。

・回復魔法陣の紙を椅子に貼り付け、患者にはそこに座ってもらう。

・座った瞬間に回復魔法陣が自動で起動し、患者を回復させる。

・症状が改善したら熱を測り、平熱に戻った者は帰宅させる。

・回復魔法陣が起動しなくなれば、新しい紙を貼り替えること。

・病院の支払いは待合室利用のみとし、無料とする。

・発熱以外の症状がある者、もしくは治らなかった者のみ医師が診察すること。


このシンプルな指示が、世界中の医療現場を劇的に変えていった。


ニューヨーク総合病院

ニューヨーク総合病院の待合室では、溢れ返っていた患者が次々と新設された専用の待合室に誘導されていた。


「ここが新ウイルス専用の待合室です。こちらの椅子に座ってください。」


看護師の声に従い、混乱した様子の患者たちが次々と椅子に腰掛ける。その瞬間、椅子に貼り付けられた回復魔法陣が、淡い光を放った。


「えっ、なんか暖かい……? さっきまでの寒気が消えた……。」


「すごい、体が軽くなった! 咳が止まったぞ!」


驚きの声が次々と上がる中、看護師たちは冷静に対応する。


「はい、では皆さんの熱を測りますね。36.5℃、平熱ですね。お帰りください。」


わずか数分で、数十人が回復し、病院を後にしていく。その光景を目の当たりにした医師たちは、ただただ目を見張るばかりだった。


「信じられない……これが回復魔法陣の力なのか?」


ローマ中央病院

イタリア・ローマ中央病院でも、同様の対応が取られた。


「神よ、これは奇跡か……?」


座った患者が呟いた直後、魔法陣が発動し、彼の顔には安堵の表情が浮かんだ。


「あなたの熱を測りますね。はい、平熱になりました。お帰りください。」


通常なら入院を必要とするはずの患者が、次々と回復し、病院の負担が劇的に軽減されていく。


「これは革命的だ。もう患者の選別をする必要がない。重症者の治療に集中できる。」


医師の声には、確かな希望が込められていた。


ムンバイ市立病院

インドのムンバイ市立病院では、酸素不足が深刻な問題となっていた。しかし、回復魔法陣が導入されると状況は一変した。


「信じられない……! こんなに早く症状が改善するとは……!」


さっきまで息も絶え絶えだった少女が、母親の目の前で立ち上がり、走り回っていた。


「さっきまでぐったりしていたのに……ありがとう……ありがとう……!」


涙ながらに母親が感謝の言葉を繰り返し、病院の外で治療を待っていた人々も、希望を取り戻していた。


東京医療センター

日本の病院でも、ICU(集中治療室)の満床が問題となっていたが、回復魔法陣の導入により患者の回転率が大幅に向上した。


「ICUを待つ患者が激減した。このままいけば、より多くの重症患者を救えるぞ!」


現場で奮闘する医師たちは、この魔法のような光景に驚きを隠せなかった。


「政府に要請を出すまでもなく、ここまで改善するとは……」


「今まで疲れ切っていたけど、少し希望が見えてきました。」


ニューヨーク拠点にて

「中国の武漢病院の経験が役に立ったわね。」


リリィは、作戦が成功したことを実感しながら静かに呟いた。


「まったくだ。しかし、大量の魔法陣をコピー印刷する技術が確立していて、本当に助かった。世界中の病院に配布できる、あんな量を用意するのは、手書きじゃ無理だからな。」


ジャックは、今回の迅速な対応が可能だった要因を分析しながら頷いた。


「各国病院の座標を事前に WHO に準備してもらってよかったよ。どんどん、転移魔法陣で送れるからな。」


ガルドがそう言うと、コモンが補足した。


「黄金虫ゴーレムも一緒に送ったから、各国の病院の状況も分かるな。」


コンがモニターを見つめながら報告する。


「世界中の感染者数をリアルタイムで集計しています。一時期増えていた患者数は、急激に減少しています。」


「ずっとこれを続ければ、ワクチンは必要ないのではないですか?」


マモルの疑問に、ジャックは首を横に振った。


「いや、魔法による病気の回復だけではダメだ。いつまでも後手に回ってしまう。ワクチンを投与することで、世界中の人々に新ウイルスの耐性を持たせ、先手を打たなければならない。」


「なるほど、新ウイルスを撲滅するために、ワクチンの配布が必要なんですね。」


「新ウイルスが変異して強毒化すれば、回復魔法陣だけでは対応できなくなる可能性もあるわ。」


「じゃあ、コンビニボーソンの VR アルバイトの席にも回復魔法陣を設置すれば、新ウイルスの拡散をさらに防げるね。」


「いいわね、それやりましょう。コンビニボーソンの VR アルバイトの人気が出て利用者が増えれば、病院に行かなくても済むし、世界がもっと助かるわね。」


闇の世界

その頃、闇の世界では、異変が起こっていた。


「なんだ、魂が来ないぞ。どうなっている? 大量の死者が発生するはずだぞ!」


闇将軍の怒声が響き渡る。


「何が起こっている? 調べろ!」


「「「はっ!」」」


闇獣たちは慌てて散っていった。


「まさか……誰かがワシの計画を邪魔しているのか……? 逆らっているのか……? まさかな……。」


闇の世界に不吉な気配が漂い始めていた――。

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