第99話 定例会議 2020.1
【ニューヨーク拠点・会議室】
リリィが立ち上がり、静かに一言。
リリィ「定例会議を始めましょう。2020年、最初の会議ね。」
朝食を終えたメンバーが次々と席に着き、テーブルには温かいお茶と蒸気を立てるスープが並ぶ。軽い空気の中、リリィが一歩前に出た。
リリィ「昨年末、中国の新型ウイルスの発生と、隕石群の接近という、2つの地球規模の危機が明らかになったわ。今月からは、いよいよ本格的な対応が必要になる。」
ジャックがうなずき、資料を整えながら言う。
ジャック「リリィ、まずは進捗報告からだな。コモン、お願い。」
コモンが立ち上がり、見えないタッチパネルを操作しながら淡々と話し始めた。
コモン「それでは、各項目の現在の進捗について報告する。意見があれば、都度、どうぞ。」
■ 廃炉事業
コモン「福島の廃炉作業は順調。アメリカからは“スリーマイル島原発”の廃炉依頼が1件。さらに、チェルノブイリ(ウクライナ)1件、イタリアをはじめとした欧州各国からも脱原発の流れで相談が来ている。対応可能。」
■ 人工魔石の生産
コモン「異世界の“魔素だまり”での生産は順調。年間1000万個の目標に向かって順調に推移中。」
■ ミスリルの生産
コモン「ミスリルはプルトニウムに依存している。今は廃炉解体で賄えているが、中長期的には供給が不安定になる可能性がある。」
ジャック「培養技術で安定供給できるようにしたいところだ。」
■ AIゴーレムの生産
コモン「アーロンの主導による量産体制が確立。年間100万体を目標に現在稼働中。AI搭載型の遠隔操作モデルが、全世界で高評価を得ている。」
■ 国際警察官の育成
コモン「現在512名が各国に配置され、一定の成果を上げている。2020年中に1000名増員予定。研修体制を強化しつつ、特殊任務対応型も開発中。」
■ コンビニ・ボーソン事業
コモン「AIゴーレムによるVR遠隔アルバイトシステムが好調。特に発展途上国の雇用創出と教育にも貢献している。世界展開を視野に1000店舗の拡大計画を継続中。物流拠点は菱紅商社が統括中。」
■ 核融合プラントの受注
コモン「受注数は95基。地域別ではアメリカ・ヨーロッパ・アジアが中心。今後は、アフリカとインドでの受注を目指す。特にインドでは、人口増加に伴うエネルギー需要が急増している。」
ジャック「核融合炉の素材、火炎ドラゴンの鱗はどうなった?」
コモン「グネルの研究が進み、ホムンクルス培養技術による量産に成功。既に300枚以上のストックがあり、当面の建設には支障なし。」
ギルス「グネルの“鑑定解析”が大活躍した。今後は培養炉そのものを製造できる見込みだ。」
ジャック「南極の備蓄施設についても、AIゴーレムが建設を完了し、石油と天然ガスの貯蔵が可能になった。」
リリィ「盗難の心配が無く、環境への影響もゼロ。あとは、運用体制の整備ね。」
マーガレットが手を上げる。
マーガレット「ニャ、ちょっと補足ニャ~。未来の私からのメッセージニャ。あれから何も届いていないけれど、新型ウイルスの拡散は止まっていないニャ。」
マモル「各国の空港にも無症状感染者が入っているかもしれないってこと?」
ジャック「その可能性は高い。今後は“感染者の治療”に注力するべきだな。回復魔法の自動発動装置を病院に配備する案も進めている。」
リリィ「じゃあ、ここまでを一度まとめるわね。」
■ 会議まとめ(2020年1月)
廃炉事業:各国からの依頼増加。技術支援体制を強化予定。
人工魔石・ミスリル生産:順調。ミスリルは中長期的対策が必要。
AIゴーレム・国際警察官:生産・配備拡大中。1000人目標。
コンビニ・ボーソン:1000店舗計画を継続。雇用創出に貢献。
核融合プラント建設:95基受注。インド・アフリカ開拓中。
火炎ドラゴンの鱗:ホムンクルス培養により量産化成功。
南極備蓄基地:建設完了。天然資源の貯蔵開始。
新型ウイルス対策:感染拡大継続。回復魔法装置を病院へ配備計画中。
巨大隕石群対策:宇宙エレベーター建設を推進。素材確保済。
リリィ「各プロジェクト、加速させましょう。次の一手は――人類の未来を守る設備の構築よ。」
ジャック「となると、次は宇宙エレベーター建設と、迎撃システムの設計だな。」
ガルド「よし、コンテナゴーレムとAIゴーレムの大量投入だな。」
マーガレット「お風呂の時間は忘れずにニャ!」
マモル「それ重要! 人類のためにも風呂は必要!」
リリィ「……じゃあ、今日はここまでにして、お風呂にしましょうか。」
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