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橘咲記  作者: 猫主
3/3

祝いの使者

また遅いじゃんと思った数少ない読者の皆さん‥‥



まったくもってその通りです。本当にごめんなさい。

永禄元年3月 京 薄家屋敷


「もうし、楠木殿はご在宅であろうか!」


「権大夫、どこのものか見てまいれ」


「かしこまりました」


さて…手持ちの兵力は騎馬武者が1騎と徒歩武者が1人の少数も少数、挙句に騎馬は初陣という中で手に入るような領地が一体どこにあるというのか…


そもそも領地というが、よくある架空小説のように、どこそこの森なり谷なりを切り開き、田畑を作り、権力をもつ大貴族にどうのこうの…というのはなかなか厳しい。


というのも日本という国は、もとい朝廷は、古来から田畑を作ることを推奨してきた歴史がある。


つまるところ永禄の御代にもなれば、そう開拓ができる場所など空いていないし、空いていたら何かしらの問題がある土地なのだ。


さらに言えば権力や武力が土地からの税によって裏付けられる戦国時代において国、郡、郷、村、といったものには必ず顔役、もとい支配者がいる訳なのである。


ともなればどうやって土地を得るのか、世は戦国時代、結論は単純である。


居座って、文句を言ってきたら、ボコボコに痛めつけて認めさせる、この一手である。


当然朝廷なり幕府なりの権力を使った比較的平和な方法もないではないが、元手となる金銭もいるし、朝廷や幕府で権力者と会うには、名声や武力などアピールポイントが不可欠だ。


結局のところ殴って手に入れるしかないのである。


とはいえ戦にて手に入れるにしても、口実というのがいる。


何の口実もなく手に入れたとしても、周辺の領主は認めないことだろうし、元の持ち主の領主に分があるとみることだろう。


殴りかかる又は居座る理由を見つけねばならない、が、口実になるのは何だろうか?


血縁、血統、領地の安堵状、現領主への因縁といったものがあげられるが、今の自分が持ちえるのは…


「御免」


「む、権大夫か、誰であった」


「は、大饗長左衛門殿と松永弾正様でありました」


「霜台殿が?お通しいたせ」


「かしこまりました」




永禄元年3月 京 薄家屋敷茶室


「お初にお目にかかる、儂が松永弾正少忠久秀にござる、してこちらが…」


「お初にお目にかかりまする、某は大饗長左衛門正虎にござる」


「丁寧な礼痛み入る、某がいかにも楠木兵衛尉正元にござる」


この40いくつの人が松永久秀か…なんかギリワンとは茶器と爆死とか色々ぶっ飛んだ逸話がある人だけど実直な武士って感じの顔してる。

で、横の大饗正虎さんはお付きの家臣かな?


「兵衛尉殿、まずは元服の儀、実にめでたく、この弾正伏して祝い申しあげる」


「あいや、朝廷から位官を受けておられる霜台殿にかしこまられては…」


「いやいや、楠木氏の名跡をお継ぎになられた薄家の嫡孫殿に無体は出来ませんゆえ」


「はあ、して大饗殿と霜台殿は一体如何なる仕儀で?」


「ここにおります長左衛門殿は元々幕臣でございましてな、楠木公のひ孫、大饗西法入道殿の子孫にあたりまする。しかしながら楠木氏は逆賊、名を戻し祖先への手向けとしたくとも足利将軍家の元ではかなわぬとこの弾正の元に来ておるのです」


「つまるところ楠木姓を名乗る免状が欲しいということに相違ありませんかな?」


「しかり、主上は楠木と名乗らせるは楠木の預かり次第を申されたを伺っております」


「兵衛尉殿、お頼み申します。この長左衛門正虎、家祖へ楠木を名乗れると伝えたく…」


「ふむ…良いでしょう、では楠木の一門として楠木の姓を述べられるがよろしいかと…」


「ありがたく」


まあ言いたいことはわかる。


そもこの時代は家名というのがとてつもなく重いものなのだ。


敵に攻められて落城し、男は腹を切ったとしても女は助命されることが多い、これは西洋などと異なり、個人の武勇や栄光は、家や主家に帰順しする。


家運を上げることで乱世を生き残り、先祖より受け継いだ家というパワーを子や孫に引き継ぐという目的をもって、この時代は家の象徴で名である家名は誉がごとく、何よりも重いモノなのである。


「礼の品が後日必ず届けますゆえ…」


「ああ、大層なモノで無くて宜しいので」


そうして松永久秀と大饗正虎改め楠木正虎は帰っていった


家名、家名だ…土地を得る口実足りえるモノ


楠木氏が手に入れた、橘氏が手に入れた栄誉を取り戻す一手に成るかもしれない…

楠木氏というネームバリューは室町時代において大きな意味を持つでしょう

楠木氏が大暴れした南北朝時代は室町時代の直前、

歴史や有識故実に詳しい名門武家や公家、特に足利一門は忘れないし忘れてないでしょうね

なんてったって激戦の相手ですから

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