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18/33

18:チート級

 魔法陣……でかっ!

 え、ちょっと待って。この修練の間って、そんなに狭い部屋じゃないんですよ?

 なのに魔法陣の外周が、完全に壁を貫通しているんですけどどういうこと?


 これ、直径五十メートル超えてるわよね。


「ぁわ……お、下りて来てる。魔法陣下りて──って、エリーシャさん聞こえてない!?」


 一心不乱に祈るエリーシャには、周りの声も届いていないようで。


 黄金色の魔法陣がすぅーっと下りてきて、まるで体をスキャンされているかのように光った。

 で、足元に着地すると、魔法陣の中にいた人たちの体が光に包まれた。


 眩しい。凄く眩しい。

 室内には神官さん司祭様、そして私たちと、総勢十五人。

 その全員が光っているのだから、お互い眩しくて仕方ない。


 でもこの光……


「温かい」

「えぇ、これこそが祝福の魔法なのですよ」

「でも司祭様、これ眩しくて何も出来ないんじゃないですか?」

「そ、それは……本来ここまで光るものではないのですが……エリーシャ様はもしや……」


 司祭様がそう口にした時、眩しいのがすぅっと消えた。


「エリーシャさんっ」


 もしかして魔力切れ!?


「はい? あの、どうでしたか?」


 ん? んん? 魔力切れじゃない。それにさっきの魔法陣のこと、気づいてない?


「す、すっっっごく大きな魔法陣が出ましたよ!」

「本当ですか! わぁ、嬉しい。ルシアナ様に見て頂けて、とっても嬉しいです」


 ん、そこ、喜ぶところちょっとズレてる。

 私に見て貰えて嬉しいの? え、ちょっとこの子可愛いんだけど。


「エリーシャさん、本当に気づいていないの?」

「え、なにがですか? な、なにかおかしなとろこありましたでしょうか?」

「まぁ、ある意味おかしいと言えばおかしい?」


 と周りに同意を得ようと振り返ると、全員が頷いていた。

 それを見てエリーシャさんが、手で顔を覆って不安そうな顔になる。


「エリーシャさん、よく聞いてね」

「は、い……」

「さっきあなたが出した魔法陣ね」

「は、ぃ」

「この部屋に入りきらない大きさだったの」

「そう、なんです……へ?」


 ま、そういう反応になるわよね。

 じゃあ次、目を開いたままお祈りいってみよー!






「わ、わわわ、わ、わ、わた、私、ここ、こ、こんな巨大な!?」


 今再び、巨大魔法陣降臨!

 だけどさっきのような、ピッカピカではない。


「司祭様、さっきと色が」

「はい、先ほどはエリーシャ様の完全覚醒による最初のものだったのでしょう」

「最初って、眩しいんですか?」

「えぇ。最初は誰でもキラッキラなんです。まぁ規模が大きかったので、一般的なキラキラよりも凄かったですが」


 五十前後の司祭様の口から、キラッキラなんて言葉が出て来るなんて。

 おちゃめな司祭様だわ。


 自分が出した巨大魔法陣を見つめたまま、エリーシャは茫然と立ち尽くしている。

 うん、ビックリよね。

 原作しってる私もビックリだもん。


 それにしても、


「さっきからずっと体がぽかぽかしているのだけど、私だけ?」


 そう尋ねると、室内にいる全員が同じ状態だった。


「ぽかぽかするのは、祝福の魔法が付与されているという証です。効果が消えれば、元に戻りますので」

「これって、魔法陣の範囲内ですよね?」

「いえ、魔法陣の中に入れば、その効果が付与されるのです。中にいる間、効果を得られるタイプではありませんよ」


 つまり一度魔法陣の中に入れば、外に出てしまっても効果は残ると。

 ってことは持続時間方式の魔法ってことね。


「はっ!? この魔法陣、どうやって消せばいいんで──あれ? 消えちゃった」

「あぁ、魔法陣を解除するのは難しくはありません。術者が不要だと思ったり、今のように意識を別の所へ向けると消えますので」


 へぇ、魔法陣の出現時間は、任意なのね。

 そして魔法陣が消えた今も、私の体はぽかぽかしている。

 なんだか内側から力が湧いて来る感じ。


「はぁ、やっぱり魔法ってカッコよくて綺麗でいいなぁ」

「す、すません、ルシアナ様。私、ルシアナ様も気持ちも考えず、自慢するようなことしちゃって」

「え? なに言ってるのよエリーシャさん。羨ましいとは思うけど、じゃあエリーシャさんは、鑑定スキルが使える?」

「いえ、私にはそんな凄いスキルは!」

「ない物ねだりなのよ。気にしちゃダメ」


 魔法は派手だし、羨ましいと思う。だけど私には鑑定スキルがある。

 魔法は使えるけど、鑑定スキルを羨ましいと思う人だっているはず。


「まぁ、エリーシャさんみたいな特大魔法陣は、ちょっと……いらないけど」

「えぇーっ!?」

「ふふ。神官さんぐらいのサイズが、お手軽だと思うわよ」


 エリーシャの魔法陣って、サイズ調節できないのかしら?

 直径……せめて半径二メートルぐらいでいいわよ。

 あんな超巨大な魔法陣──魔法陣──魔法陣──魔法陣。


 何故だろう。なんだが凄く、あの形が頭に浮かぶ。

 うぅーん……魔法陣が頭から離れなーい。


「あぁん、もう!」


 どっか行って!

 とばかりに手を振る。

 あ、消えた。というかスッキリした。

 ふぅ。


「お、おお、お、お嬢様?」

「ん、なにローラ」


 ローラが驚いたような声を上げ、私の頭の上を指差した。

 なぁにぃ? さっきのエリーシャが特大魔法陣出した時みたいな反応しちゃってぇ。

 それにみんなまで。


 私の頭の上に、何かあるの?


 恐る恐る見上げると、そこにはキラッキラ光る魔法陣が──浮かんでいた。






「神眼……」


 司祭様に言われて、自分の掌を見つめながら鑑定を行った。

 その結果、鑑定スキルだと思っていたものは『鑑定眼』だったことを知る。


「神眼とは、稀に鑑定眼から覚醒した者が得る力です」

「か、覚醒!?」

「これまた極稀なのですが、覚醒時の祝福の魔法には他者を覚醒させることもあるのです」


 そ、そんなご都合主義な効果が……。


 と思ったけれどそもそも祝福の魔法そのものが、潜在能力を引き出すとか、身体能力を向上させるとかの効果だものね。

 最初の一発限定で、覚醒を促す効果がある──と言われても納得しちゃうか。


「あ、でも私、元々鑑定眼っていうのがあって、覚醒しているじゃないですか」

「二段覚醒です。それに関しては、祝福の魔法以外でも覚醒の余地はあるのですよ。簡単ではありませんが」

「血のにじむような努力であったり、死に瀕して力を求めたりすることで、二段覚醒を経験することもある──と聞き及んでおります」


 アッシュ卿も、その二段覚醒については知っているらしい。

 じゃあここにいる人たちも……そう思ってひとりずつ鑑定してみた。


「アッシュ卿!? 風の魔法の他に、疾走という能力が見えるわ」

「ほ、本当ですか!? 疾走というのは、使用すると一時的に素早さが二倍に跳ね上がる魔法なのです!」

「じゃあ、今までは使えなかったってこと?」

「もちろんです! まさか自分も二段覚醒していたとは」

「エ、エリシアお嬢様、わたくしも見てくださいませんかっ」

「俺も、お願いしますっ」

「もちろん」


 アッシュ卿含めた五人の騎士たちは、全員が二段覚醒。

 そして元々魔法を使えなかったローラも、なんと水の魔法に覚醒していた。


 それだけじゃない。


「司祭様は……『神なる手』? なんだか凄そうな名前の魔法が……」

「な、なんと!? 神なる手は、聖なる手の効果に加えて、浄化と、そして癒しの効果が加わった魔法ですっ」

「すご!?」


 まさか……室内にいる人全員、覚醒してるんじゃないの!?

 もともとここにいた人は、ローラと私以外、全員魔法を使える人たちだった。

 ローラは一つの魔法に覚醒し、他は二つ目の二段覚醒。


 凄すぎるわ、エリーシャの祝福。

 幸運にも最初の一発を付与された私たち全員が、上位クラスにジョブチェンジした感じ。


 ところで神眼って、何かしら?


「司祭様、神眼ってなんでしょう?」

「あ、そうですね。ご説明いたしましょう」


 司祭様から聞かされた神眼の効果は、


 チート級のものだった。


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