18:チート級
魔法陣……でかっ!
え、ちょっと待って。この修練の間って、そんなに狭い部屋じゃないんですよ?
なのに魔法陣の外周が、完全に壁を貫通しているんですけどどういうこと?
これ、直径五十メートル超えてるわよね。
「ぁわ……お、下りて来てる。魔法陣下りて──って、エリーシャさん聞こえてない!?」
一心不乱に祈るエリーシャには、周りの声も届いていないようで。
黄金色の魔法陣がすぅーっと下りてきて、まるで体をスキャンされているかのように光った。
で、足元に着地すると、魔法陣の中にいた人たちの体が光に包まれた。
眩しい。凄く眩しい。
室内には神官さん司祭様、そして私たちと、総勢十五人。
その全員が光っているのだから、お互い眩しくて仕方ない。
でもこの光……
「温かい」
「えぇ、これこそが祝福の魔法なのですよ」
「でも司祭様、これ眩しくて何も出来ないんじゃないですか?」
「そ、それは……本来ここまで光るものではないのですが……エリーシャ様はもしや……」
司祭様がそう口にした時、眩しいのがすぅっと消えた。
「エリーシャさんっ」
もしかして魔力切れ!?
「はい? あの、どうでしたか?」
ん? んん? 魔力切れじゃない。それにさっきの魔法陣のこと、気づいてない?
「す、すっっっごく大きな魔法陣が出ましたよ!」
「本当ですか! わぁ、嬉しい。ルシアナ様に見て頂けて、とっても嬉しいです」
ん、そこ、喜ぶところちょっとズレてる。
私に見て貰えて嬉しいの? え、ちょっとこの子可愛いんだけど。
「エリーシャさん、本当に気づいていないの?」
「え、なにがですか? な、なにかおかしなとろこありましたでしょうか?」
「まぁ、ある意味おかしいと言えばおかしい?」
と周りに同意を得ようと振り返ると、全員が頷いていた。
それを見てエリーシャさんが、手で顔を覆って不安そうな顔になる。
「エリーシャさん、よく聞いてね」
「は、い……」
「さっきあなたが出した魔法陣ね」
「は、ぃ」
「この部屋に入りきらない大きさだったの」
「そう、なんです……へ?」
ま、そういう反応になるわよね。
じゃあ次、目を開いたままお祈りいってみよー!
「わ、わわわ、わ、わ、わた、私、ここ、こ、こんな巨大な!?」
今再び、巨大魔法陣降臨!
だけどさっきのような、ピッカピカではない。
「司祭様、さっきと色が」
「はい、先ほどはエリーシャ様の完全覚醒による最初のものだったのでしょう」
「最初って、眩しいんですか?」
「えぇ。最初は誰でもキラッキラなんです。まぁ規模が大きかったので、一般的なキラキラよりも凄かったですが」
五十前後の司祭様の口から、キラッキラなんて言葉が出て来るなんて。
おちゃめな司祭様だわ。
自分が出した巨大魔法陣を見つめたまま、エリーシャは茫然と立ち尽くしている。
うん、ビックリよね。
原作しってる私もビックリだもん。
それにしても、
「さっきからずっと体がぽかぽかしているのだけど、私だけ?」
そう尋ねると、室内にいる全員が同じ状態だった。
「ぽかぽかするのは、祝福の魔法が付与されているという証です。効果が消えれば、元に戻りますので」
「これって、魔法陣の範囲内ですよね?」
「いえ、魔法陣の中に入れば、その効果が付与されるのです。中にいる間、効果を得られるタイプではありませんよ」
つまり一度魔法陣の中に入れば、外に出てしまっても効果は残ると。
ってことは持続時間方式の魔法ってことね。
「はっ!? この魔法陣、どうやって消せばいいんで──あれ? 消えちゃった」
「あぁ、魔法陣を解除するのは難しくはありません。術者が不要だと思ったり、今のように意識を別の所へ向けると消えますので」
へぇ、魔法陣の出現時間は、任意なのね。
そして魔法陣が消えた今も、私の体はぽかぽかしている。
なんだか内側から力が湧いて来る感じ。
「はぁ、やっぱり魔法ってカッコよくて綺麗でいいなぁ」
「す、すません、ルシアナ様。私、ルシアナ様も気持ちも考えず、自慢するようなことしちゃって」
「え? なに言ってるのよエリーシャさん。羨ましいとは思うけど、じゃあエリーシャさんは、鑑定スキルが使える?」
「いえ、私にはそんな凄いスキルは!」
「ない物ねだりなのよ。気にしちゃダメ」
魔法は派手だし、羨ましいと思う。だけど私には鑑定スキルがある。
魔法は使えるけど、鑑定スキルを羨ましいと思う人だっているはず。
「まぁ、エリーシャさんみたいな特大魔法陣は、ちょっと……いらないけど」
「えぇーっ!?」
「ふふ。神官さんぐらいのサイズが、お手軽だと思うわよ」
エリーシャの魔法陣って、サイズ調節できないのかしら?
直径……せめて半径二メートルぐらいでいいわよ。
あんな超巨大な魔法陣──魔法陣──魔法陣──魔法陣。
何故だろう。なんだが凄く、あの形が頭に浮かぶ。
うぅーん……魔法陣が頭から離れなーい。
「あぁん、もう!」
どっか行って!
とばかりに手を振る。
あ、消えた。というかスッキリした。
ふぅ。
「お、おお、お、お嬢様?」
「ん、なにローラ」
ローラが驚いたような声を上げ、私の頭の上を指差した。
なぁにぃ? さっきのエリーシャが特大魔法陣出した時みたいな反応しちゃってぇ。
それにみんなまで。
私の頭の上に、何かあるの?
恐る恐る見上げると、そこにはキラッキラ光る魔法陣が──浮かんでいた。
「神眼……」
司祭様に言われて、自分の掌を見つめながら鑑定を行った。
その結果、鑑定スキルだと思っていたものは『鑑定眼』だったことを知る。
「神眼とは、稀に鑑定眼から覚醒した者が得る力です」
「か、覚醒!?」
「これまた極稀なのですが、覚醒時の祝福の魔法には他者を覚醒させることもあるのです」
そ、そんなご都合主義な効果が……。
と思ったけれどそもそも祝福の魔法そのものが、潜在能力を引き出すとか、身体能力を向上させるとかの効果だものね。
最初の一発限定で、覚醒を促す効果がある──と言われても納得しちゃうか。
「あ、でも私、元々鑑定眼っていうのがあって、覚醒しているじゃないですか」
「二段覚醒です。それに関しては、祝福の魔法以外でも覚醒の余地はあるのですよ。簡単ではありませんが」
「血のにじむような努力であったり、死に瀕して力を求めたりすることで、二段覚醒を経験することもある──と聞き及んでおります」
アッシュ卿も、その二段覚醒については知っているらしい。
じゃあここにいる人たちも……そう思ってひとりずつ鑑定してみた。
「アッシュ卿!? 風の魔法の他に、疾走という能力が見えるわ」
「ほ、本当ですか!? 疾走というのは、使用すると一時的に素早さが二倍に跳ね上がる魔法なのです!」
「じゃあ、今までは使えなかったってこと?」
「もちろんです! まさか自分も二段覚醒していたとは」
「エ、エリシアお嬢様、わたくしも見てくださいませんかっ」
「俺も、お願いしますっ」
「もちろん」
アッシュ卿含めた五人の騎士たちは、全員が二段覚醒。
そして元々魔法を使えなかったローラも、なんと水の魔法に覚醒していた。
それだけじゃない。
「司祭様は……『神なる手』? なんだか凄そうな名前の魔法が……」
「な、なんと!? 神なる手は、聖なる手の効果に加えて、浄化と、そして癒しの効果が加わった魔法ですっ」
「すご!?」
まさか……室内にいる人全員、覚醒してるんじゃないの!?
もともとここにいた人は、ローラと私以外、全員魔法を使える人たちだった。
ローラは一つの魔法に覚醒し、他は二つ目の二段覚醒。
凄すぎるわ、エリーシャの祝福。
幸運にも最初の一発を付与された私たち全員が、上位クラスにジョブチェンジした感じ。
ところで神眼って、何かしら?
「司祭様、神眼ってなんでしょう?」
「あ、そうですね。ご説明いたしましょう」
司祭様から聞かされた神眼の効果は、
チート級のものだった。




