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11:やっぱり暗記なんだ

「では、わたしの魔法を受け入れてください」

「あ、はい。受け入れるって、その、力を抜けばいいですか?」

「そんな感じです。手が暖かくなると思いますが、恐れずに」


 謎の黒い人の頼みで、私たちは大神殿へとやって来た。

 ここへ来た理由は簡単。


 彼の剣に掛けられた呪いを解くため、だ。


「この剣の呪いは複雑で、絡まった呪いの糸を解かなくてはならないのです」

「呪いの解き方にも、いろいろあるということでしょうか?」

「はい。一般的なものは、わたしどもの神聖力をぶつければ消すことが出来ます」


 神聖力というのも、魔法の一種。

 魔法の中でも、神に祈ることで具現化するタイプの魔法を総じてこう呼んでいる。

 祝福の魔法も神聖力の一つなの。


「呪いの糸は鑑定スキルや、鑑定眼でしか見ることが出来ません。ですので、我々神官だけでは、呪いを解除できないのです」

「それで私に、大神殿まで一緒に来てくれと仰ったのですね」


 謎の黒い人に視線を向けると、彼は不愛想な表情で頷いた。

 ぽつりぽつりと短い単語で彼は語り、実は一カ月近くずっと、呪いを解いてくれる人物を探していたらしい。


「わたしの聖なる手がちゃんと掛ったようです。これで呪いの糸に触れることが出来るでしょう」

「はい、やってみます」


 聖職者の中でも高位の階級である司祭様が、まず私の両手に『聖なる手』という魔法を付与する。

 それを付与されることで、呪いに触れられるようになる。そうじゃなかったら黒い糸を手がすり抜けて、呪いの解除も出来ない。

 絡まった糸を解くだけ──簡単だと思ったけど、これがまたずいぶんとごっちゃごちゃで難しい。


「これまではあの方の魔力で、無理やり呪いを抑え込んでいたのでしょう。時間の経過とともに、呪いはより複雑になりますから」

「確かに複雑です……いっそハサミで切ってしまいたいぐらい」

「それが出来れば、呪いの解除も楽なのですけどねぇ」


 つまりダメってことね。

 はぁ……ま、仕方ないわ。でもこれで恩を返せるんだもの、頑張んなきゃ。


 それに──


「し、司祭様っ。この方は確かに祝福の魔法の持ち主のようです」

「おぉ、そうですか! ご令嬢、もしよろしければ、我々が魔法の覚醒のお手伝いをいたしますが、どうでしょうか?」


 祝福の魔法は神聖力のひとつ。その中でもとても重宝される魔法。

 魔法陣の範囲内にいる人の体力を向上させ、怪我と疲れを癒してくれる力がある。

 恐怖といった感情も抑え、高揚感すら与えてくれるとも言われているのよね。


「は、はいっ。誰かのお役に立てるような魔法でしたら、ぜひ使えるようになりたいですっ」


 エリーシャがやる気を出している。

 大聖堂に来たことで、ダメもとで彼女の事を話してみたの。

 そしたら直ぐに調べてくれることになって、そのうえ彼女の魔法の覚醒にも協力して貰えることになった。

 結果として、ここに来てよかったみたい。


 しかし、呪いは簡単には解けず──


「数日かけて解くしかないようですなぁ」

「うぅ、すみません、直ぐに解除できなくって」


 ほんと、申し訳ない。

 ずっと鑑定スキルを発動させてなきゃいけないから、私の少ない魔力では三十分ごとに同じ時間休憩しなきゃいけない。

 今日一日で、糸の絡み具合からすると三割、解けたかなって感じ。


「……次、いつ……」

「明日も来れます」

「そうかっ」


 うっ。またぱぁっと表情が明るくなった。

 そして一瞬で元に戻る。

 ひ、表情、コロコロ変わるわね。


「迎えに行く」

「迎えにって、どこに来ればいいか分かるんですか?」


 謎の黒い人が頷く。


「カイチェスター侯爵令嬢。スリを捕まえた時」

「あぁ、衛兵さんに名乗ったんだっけ。んー、では明日の朝九時でよろしいでしょうか?」


 彼が頷く。

 すると剣を腰に差して、直ぐに行ってしまった。


「ルシアナ様、私も明日、また来ます!」

「エリーシャさんも頑張っているのですね」

「はい! 魔法陣の暗記、頑張ってますっ」


 あ、やっぱり暗記なんだ。

 が、頑張ってね。


お読みいただきありがとうございます><

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