27:鬼
気丈な娘。
己のことを冒険者と称するリンという娘。
ただ一人でこの場に乗り込んで来た娘。何か策があってのことか、奇襲、奇策、単機の先駆けなど褒められた策ではない。
数々の戦場を見てきた蘭丸の立てた策。几帳面で抜け目の無い蘭丸の策に対抗したのであろう。事実、蘭丸の鼻を明かしているそれだけでも暁光。
策も無くただ死ににきただけとしても、その歌舞伎、面白い。
しかし、
片腕を飛ばされつつも声も上げずに此方を冷静な目で見上げる娘、その目は何も諦めていない者の目だ。……どの様な策があるというのか、面白い。
忍びの術に糸使いという技があると聞いた。認識出来ないほどの鋭利な糸を四方八方から飛ばす、絶技である。
その技と、鍛えられた精神、そして強さを感じさせぬ立ち居振る舞い。並の相手ならばその腕を飛ばされる事もなく四肢を切断出来ただろう。
圧倒的な絶望。しかしその視線は片時もこちらをはずさない、その揺るがない信念の様な意志は何を持ってのものか、
名ばかりの神を信仰する生臭坊主どもと一味違う、その曲者さ。
歩き巫女。遊女の類とは違う口寄せを行う素破の類。それとも違う、真の神仏の信奉者か?
それとも違うようだ。何をも恐れぬその態度、そしてその度量、面白い。
唐突に娘の左腕が落ちる。
三左を見るも首を振り娘の様子にただただ驚いている。
その鋭利な傷口は己の糸で切断したものか、降伏の意思表示か、否、蘭丸が認めた者、その様な甘い者では無い。
意識が飛んだのか、前のめりに倒れ込む娘。さもありなん、武士でさえも両の腕を落とされて意識を保ってられる者の方が稀だ。その激痛で命を落とす者さえもいる。
だが、倒れない。
立っている事さえ難しい身体で気丈に立つその姿。
そして、、ああ、そうか。
あれは、京の都で見たモノ達。
陰と陽を操り、【式神】を使役せしモノ。
だがこの娘、リンの行なっている事は、契約の行使ではなく、まるで生け贄の儀。
神にその身体を捧げる巫女のそれだ。
面白い。
ぞぶりっ…
と、闇に蹲り、リンから斬り離されたその白い腕を喰らうモノ。
ぽりんっ…
と、その落ちた、まるで鋭利な糸に斬りおとされたような、何か札の様なものを握り締められた手から、札から生えた大きな牙が、その指を喰らう。
バキンッ!
肉を喰らい骨を噛み砕き、立ち上がるソレ。
面白い!
蘭丸を見れば、静かに笑っている。
面白い!!
「娘、気に入ったぞ、我がモノとなれ!」
「お断りします」
両腕を喰われ、いつ切れるかわからない意識の糸を必死につなぎ止めている娘がハッキリと断言する。
面白い!!!
暴力を体現した様な赤銅色のソレが立ち上がる。
暴力を体現した様な青銅色のソレが立ち上がる。
娘が此方を見上げる。その瞳が語る言葉は、、それが其方の策か!
愚かしい!
そして、面白い!
ならば、そう。
【是非も無し!】




