26:危機
ドクン、ドクン、ドクンと心臓の音と共に右肩に激痛が走る。
純白に変化した魔王のローブが、鮮血に染まっていく。
こぼれ落ちそうな意識を繋ぎ留めながら、前を見る。
ぞぶりっ…
信長が静かに私を見下ろしている。
その隣には攻めの三左が地に十文字槍をつきこちらを睨んでいる。
そしてその背後の壁際にただ黙ってこちらを見つめている森蘭丸。
「悲鳴もあげず、か、見上げたものよ。ソレでも我に屈せぬか? 娘よ」
「……」
口を開けばそこから意識がこぼれ落ちそうな気がして、歯を食いしばったまま口の端を少し吊り上げる。
私の様子を見た攻めの三左こと森可成は、
「ッ!!」
ドンッと憤怒の形相で槍を地面に叩き付けつつこちらを睨む。
「クックック、面白い。して、その外套、先程と違い癒しの効果を発揮している様だが此の世にはその様な物が存在するのか?」
「……」
よく喋る。
信長の目を見れば、愉しそうに嬉しそうに、しかし冷静に此方を見ている。
魔王のローブの治療効果で痛みは多少和らいできたが、以前実験して解っている事だが、斬り飛ばされた右手が存在している限り新しい腕が再生される事はない。
「娘、我が配下に加われ」
いきなりの勧誘、面白ければ、興味が湧けば出自貴賎を問わず配下に加える、か。
「お断りします」
当然断る。誰の下にもつく気はない。そのためにここに来たのではないし、そのための冒険者だ。
また、突撃しそうな森可成を制し、信長が話しかけて来る。
ぽりんっ…
「娘、お前も神仏を信仰するものか?」
先ほど言った巫女と言う言葉から、私が既に信仰の道に入っていると判断したのか、
「だとしたら?」
「クックック、面白い!」
ポトリ、と綺麗な断面を見せ、硬く手を握り締めた左腕が地に落ちる。
………………
一瞬の空白の後、頭の天辺から足の先までを、天から地へと稲妻が駆け抜ける様に、意識を根こそぎ持ち去る様に、激痛が鋭い痛みを全身に撒き散らしながら駆け抜ける。
「 ッ!」
意識が一瞬飛んだのか、目の前に地面が迫ってきている。
倒れない様に足を前に出し、一歩、二歩……五歩、ふらつきながら前によろめき、それでも、
ダンッと足を踏ん張る。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
荒い息が、まるで他人の息遣いの様に自分の耳に届く。両腕が無いと、バランスを取るのも難しく、立っていることで精一杯となる。
バキンッ!




