表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻の住人  作者: 昼行灯
23/43

23:思惑

 ヤンの組織は国家が資本の為、資金は潤沢だ。

 そのほとんどが命を懸ける任務の為、装備に妥協をしない。


 遠隔地との通話を可能にするための魔道具。その交換機の役目をする装置がこの屋敷に置いてある。

 本来ならばここで通話する相手の魔道具へ通信先を切り替えて使う所だが、ここにいる事で全ての通信に対応することができ迅速に指令を出す事ができる。

 これがヤンが王都を離れられない理由のひとつでもある。

 

 五人でひと部隊とし、そのリーダーに通信の魔道具を装備させ各地点へ向かわせた。


 ローラン王都内は、貴族街、市民街、冒険者ギルド、主要交通の交わる地点、管理迷宮、そしてリン様の宿。

 魔の森。入る事のリスクを鑑み、外からの見張りのみとした。

 次元の迷宮を主とした王都そばにある各迷宮とその街道各所。


 定時連絡は十分間隔とし、細かな気付きでも随時連絡を上げさせている。


 現時点での懸念事項は次元の迷宮が入れなくなっているという事。

 次元の迷宮は入口から下る階段を降りた広場に立つ事で転移が行われランダムな迷宮へと移動する仕組みとなっている。

 しかし今現在、その広場に入れなくなっている。何か見えない壁のようなものが邪魔をし広場への立ち入りができなくなっているという。

 事象としては空間魔法のロックのようなモノが次元の迷宮自体にかけられており、外からの侵入は不可能だというが、迷宮自体にそのような大掛かりな魔法をかけることが可能なのか?

 迷宮自身がボス部屋にかけるロックの魔法を迷宮自体に展開していると見たほうが自然では無いか?

 それは何故?


 「なあ、俺はイマイチ状況が飲み込めていないのだが、説明してもらってもいいか?」

 実働部隊の指揮を主としているヤンが聞いて来る。

 「ああ、そうだね」

 自分の頭の中を整理する意味も兼ねてヤンに説明をする。


 今回、敵と想定している相手について。

 魔人かそれに類する存在。根拠は魔人であるギルバートを探し求めていた為、同じ魔人としてか、または魔人を必要としているからか、目的は不明だが実力は当然魔人と同等か上をいくと見なくてはならない。

 確認されている人数は一名。しかしリン様の会話を考慮すると複数名存在する可能性が高い。


 目的。

 対象は魔人ギルバートと解ってはいるが目的は不明。現在その関係者であるフジラワを拉致。その後の動きは無し。


 拠点。

 次元の迷宮。ほぼ確定と見てよい。


 「具体的な強さについてはどう判断すれば良いんだ?」

 「そうだね、魔人ギルバートについてはどう考えているんだい?」

 「質問で返すなよ。そうだな、アイツが管理迷宮の建物で暴れ回った時にいたやつから聞いた話だと手も足も出ないという事だったが、やってみないとわからんな」

 「そうだね、彼は剣士だったからね。魔人となったとしても対個に関してはスバ抜けた強さを発揮するだろうけど、あくまで前衛職だからね」

 「だな、魔人というのが消耗するかが鍵となりそうだが、対策は幾つか立てられそうな感じだな。しかし、」

 「残念ながら今回の相手は魔法に関しても博識のようだね、しかも意識を向けただけで相手を殺してしまうほど気の扱いにも長けている」

 「戦って勝つというのは無理そうだな」

 「戦わずに済ませるというのが理想だね」

 「戦わずに勝つというわけにはいかんのか?」

 「無理だね。我々としてはリン様が無事なら勝ちとしても良いのだろうけど」

 「そうもいかんか?」

 「リン様に関わりの深い人物が多過ぎる」

 「多すぎると言っても、どうにかなる問題なのか?」


 そう、そこが問題なのだ。

 どうにか出来るほどの実力を持っていたとしたら。

 フレデリック王はそう判断した。私もおそらくだがそう判断している。

 それほどの制御出来ない力を鈴を着けただけで野放しにしておけるか?


 彼女にはまだ甘さが残っているように見て取れる。


 その甘さが判断を誤る要因となるならば。チャンスはある。


 「お前、悪い顔してるぞ」

 「そうかい」

 「ああ、最低の顔だ。リン様が相手に殺された方が都合が良いとか思ってただろ?」

 ああ、その通りだ。

 「そんな酷いこと思ってないさ」

 ヤンが私の顔をマジマジと見つめ呆れ顔をする。

 「最低だなお前」

 「ひどいな、お前もそうなったらなったで受け入れるのだろう?」

 「……ホント最低だなお前」





 「次元の迷宮の部隊から定時連絡がありません!」




 何かが動き出した。

 近くの街道にいる部隊を次元の迷宮へ向かわせる。 


 「次元の迷宮の部隊から緊急連絡です」

 向かわせた部隊が到着する前に連絡が入る。

 「状況を」

 何かが起きたことは確実だ。何が起きて今現在どうなっているかを報告させる。

 「何者かが次元の迷宮に入っていきました」

 「どういうことです?」

 「黒い何者かが急に広場に現れ、我々はそこで意識を失いました」

 「中から現れたのですか?」

 「解りません。急に現れたとしか」

 報告は憶測を混えずにするよう指導してある。つまり本当にわからないのだろう。いや、憶測が入っている。

 「意識を失った状況を詳しく説明してください」

 「立ちくらみをおこしたかのようになんの前触れもなく急に意識が途絶えました」

 状況的には先日死んだ隊員と似ているが、、

 「迷宮に入っていったと判断した理由を聞かせてください」

 中から現れたのかも判断出来ないのに迷宮に入っていったというのは矛盾している。

 「迷宮の外に待機していた隊員は意識を失わず、迷宮から出てきた人物はいなかったと報告を受けています」

 確かに、それならば入っていったと判断してよい状況だ。


 「なあ、」

 ヤンが口を挟んでくる。

 「?」

 「リン様が宿に居るか確認させたほうがいいんじゃねーか?」

 「!!?」

 まさか!




 宿に忍び込んだ隊員がリンの部屋のドアを開けると、そこには誰もいない。妙に整理された綺麗な部屋がただ存在するだけであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ