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夢幻の住人  作者: 昼行灯
21/43

21:風雲ゴブリン城

 魔術の間。

 「我の番だな! 尻尾が鳴るぜ!」

 俺の肩の上でネコが荒ぶっている。ついでに尻尾も荒ぶっている。


 ピターン、バシーン! 


 「イテェ、痛てーよ! ヤメロ!」

 尻尾が鳴ってるんじゃなくて叩かれてる俺が鳴ってるだけじゃねーか!


 扉が閉まり、部屋の奥に魔術師風のゴブリン達が現れる。


 「小僧、見てれ、我が今からすごい事をしてやるのだ!」

 「おーう、期待してるわ」

 「ふっ、吠えずらかくなよ小僧」

 「ワンワン」

 「先に殺そうか?」

 「断る!」


 ネコが赤い目をして睨んでくる。魔眼だ、口惜しくて目が赤いわけでは無い。


 「キキーッ!」

 ゴブリン達が呪文を詠唱しはじめる。


 ふよ、ふよ、ふよとネコが宙に浮きながらゆっくりと進んで行く。何する気だ?


 最初に呪文が完成したゴブリンから火の矢が飛んで来る。火魔法の初歩中の初歩の呪文だ。


 スッとネコのツメ。一本だけ長く伸びたツメが火の矢に触れると、フッと火の矢が消える。

 「なんだ?」

 何をした?


 間髪入れずに火の玉、ファイヤーボールが飛んでくる。火の矢は牽制だったのだ!

 ゴブリンのくせにフェイントを交えて攻撃を構成して来るなんて流石魔術ゴブリンだけあるぜ!

 

 スッとネコのツメがファイヤーボールに触れたかと思うと、爆発もせずにフッとファイヤーボールが消滅する。

 「まさか!」

 魔眼による術式の解体!? そんなことが出来るのか?


 ふよ、ふよ、ふよとネコは呪文を解体しながら宙を進み、先頭のゴブリンに触れる、と。

 「ハッ?」

 ゴブリンが消滅する。


 有り得ない!


 「どういう事だネコ!?」


 そのまま次々と無言でゴブリンを消していくネコ。なんだ?


 この違和感は…


 「…………」

 「…………終わったぞ。次だ」

 ネコが進んで行く。


 術の解体ならば解る。超高等テクニックだが俺もやろうと思えば出来なくもない、術が分っていてこちらも事前に術に対抗するアンチ術式を展開できる事が条件になるが、ネコは魔眼で術自体を瞬時に読み解き、術の(かなめ)部分を解体する事で術の無効化を事もなげに行っているのだ。しかし、ゴブリン自体の解体など不可能だ、生命の解体などその様な事ができるのは生命を創ったとされる神のみに許された所業。そんな事は不可能な筈なのだ。


 それにさっきのネコ、アレはまさか魔眼で俺を鑑定したのか? 今更なぜ?


 ネコに見えていて俺に見えていない何かが有る?







 死霊の間。

 「全力でスキル強奪するのだ!」

 「しねえよ!」


 意外な事に現れたのは一匹の陰鬱(いんうつ)な格好をしたゴブリン。

 「おいネコ。なんだアレは?」

 ネコが魔眼で鑑定していたので聞いてみる。

 「むぅ! アレは死霊使(ネクロマンサー)いなのだ。これは、小僧、ホントにスキル強奪しれ!」

 「なんでだよ?」

 「アレは死霊術のスキルを持っている」

 「なんだそれ?」

 「召喚系のスキルだ、激レアなのだ!」

 「え、マジ!?」


 コンッとネクロモンサーゴブリンが杖で地面を叩くと、ボコっと地面から無数の手が生え、ゾンビゴブリンがゾロゾロと這い出てくる。サッと杖を宙に振ると、レイスゴブリンが現れる。


 「……ヤバくねアイツ」

 「むぅぅ! 我が欲しい! 小僧スキル強奪よこせ!」

 「ムチャ言うなよ、てかレイスゴブリンってなんだよ霊体かよコイツら、ヤベーだろ」

 「ついでに霊体も取ってみるのだ!」

 「何言ってんだよ、冗談じゃねーよ!」


 童子切(どうじぎり)を抜く。

 名前持ちの武器である時点で童子切はマジックアイテムだ。つまり霊体に効果のある攻撃が可能だ。

 武器単体で霊体に効果のある武器は基本、武器固有の名前を持ったものか、ショートソード+1等の武器強化が施された物に限られる。

 後は、付与術(エンチャント)による魔法属性の付与等による後のせ効果のものに限る。それ以外の物理攻撃は霊体に効果を発揮できない。


 「フレイムソード!」

 童子切に炎魔法を付与する。これで効果倍増。


 ああそうだ。普通の武器による攻撃でも霊体に効果のある攻撃が存在する。それは武技だ。ただし全ての武技が霊体に効果があるかというとそうでもない。スラッシュは普通の武器で撃つとただの物理攻撃扱いになるが、バーニングブレードのような武技自体に火属性効果のある武技は普通の武器で撃っても霊体に効果を発揮できる。


 「火炎斬!」

 近づいてくるゾンビやレイスを薙ぎ払う。当然スキル強奪改は発動封印している。


 「小僧、ネクロマンサーを殺さなければ無限にレイスを狩れるぞ。ここで霊体を取ってみないか?」

 ネコが思いもかけない提案をしてくる。内容的には先に話していた事に繋がっていそうだが。

 なんだ? どういう意図だ?


 「霊体を取り続ければ不死に進化するとでもいうのか?」

 「そうだ、その可能性が有る」

 なんだ? 何故そこまでこだわる?


 ある考えが頭に浮かび愕然とする。いや、まさか、あり得るのか?


 ニセモノ。


 いつから?


 あるとしたら最初から。


 いや待てよ。むこうも疑っている? だから鑑定していた?


 なぜ?


 思考がループしだす。


 ダメだ。取り敢えず目の前の選択肢、ネコの提示した選択を潰す。反応を見よう。


 スキル強奪改を封印したまま目の前のゾンビとレイスを全て始末し、ネクロマンサーの杖を折り、召喚出来ないようにする。

 さて、コイツは本当に激レアの死霊術スキルを持っているのか? 何かとんでもないBADスキルを持っているのではないか、その可能性を探る、、(すべ)が無いな。


 ネコの言う事を信じるかという事になる。


 いや、選択肢はあるな。


 アイテムボックスから使い捨ての鑑定の巻物を取り出し、ネクロマンサーに対して使用する。


 【ゴブリンネクロマンサー】

 所持スキル:召喚魔法(死霊)、闇魔法3、統率1


 確かに持っているな。しかもなんのリスクもない。


 ネコを見る。ただ黙ってこちらを窺っている。俺の行動に対するツッコミもない。


 まあいい。リスクが無いのだ、これは強奪するしか無い。


 ゴブリンネクロマンサーを殺す。

 スキル強奪改発動…………失敗!


 マジか! ここは取得する流れじゃないのか?


 ずっと静かなネコを見る。


 俺を見ながら邪悪に笑っている。あーコレニセモノだな、もう偽物決定。

 「ザマァ!」

 口も悪いしこれ絶対魔物だわ、普通なら慰める場面だよな? ザマァとか無いよな?


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