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『雨音が教えてくれたこと~異世界に召喚された普通の女の、穏やかな世界改革~』  作者: 凪塩 未来


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シーズン3外伝 第三話 恵みの雨と、小さな薬草園

皆様、こんにちは!『雨音が教えてくれたこと』外伝シリーズ第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


今回は、干ばつに悩む南方の薬草の里「オトトの里」が舞台。特産の月見草が全滅寸前のピンチを救うため、可憐の「循環の力」が四つの理を束ねて優しく発動します。心温まる里の人々との交流を、ぜひお楽しみください!

王都スペリオールでの調査を終えた可憐たちは、次の目的地である南方の小さな村――「オトトの里」へと向かっていた。

この里は、王国でも有数の薬草の産地として知られている。様々な治癒薬やポーションの原料となる珍しい植物が栽培されており、近隣の村々の医療を支える重要な拠点だった。


「うう……暑い……。なんだか、空気がすごく乾いていませんか?」

道中、額の汗を拭いながらミリアがぐったりとした足取りで呟いた。

確かに、太陽の光は容赦なく照りつけ、道端の草木もしおれかけている。


馬車の御者台から飛び降りてきたリオンも、遠くに見えてきた里の様子を見て眉をひそめた。

「おかしいな。オトトの里は例年なら水源が豊かで、いつも緑に囲まれているはずなんだが……。なんだか、村全体が白っぽくかすんでいるというか、砂埃に包まれているように見える」


「行ってみれば、何があったかわかるはず」

可憐は馬車の窓から外の景色を眺めながら、静かにそう言った。彼女の手のひらは、いつものように微かな冷たさと心地よい湿り気を帯びていた。この世界の自然が発する「助けを求めるサイン」を、彼女の肌は敏感にキャッチしていた。


オトトの里に到着した可憐たちを待っていたのは、疲労の色を濃くした村長と、不安そうに集まる村人たちの姿だった。


「よくぞ来てくだすった……! あなたが噂の『雨の継ぐ者』様ですな!」

村長の老人は、わらにもすがる思いで可憐の手を取った。

「はい、水越可憐です。村の様子が少し変みたいですが、何があったんですか?」


村長は深い溜息をつき、枯れかけた薬草畑の方を指差した。

「見ての通り、この数ヶ月間、この地域一帯に全く雨が降らんのです。おまけに、近くの山から吹き下ろす熱風が畑の水分をすべて奪い去ってしまい、特産の『月見草』が全滅寸前でして……」


月見草は、傷薬の調合に絶対に欠かせない貴重な薬草だ。これが枯れてしまえば、来年の冬、王国全体の人々の命に関わる事態になりかねない。


「雨の理を持つ魔法使いにも来てもらったんですがね……」

村長は苦渋に満ちた表情を浮かべた。

「その……『この辺りの地下水脈はすでに干上がっているから、既存の水分を動かすことはできない』と言われてしまったんです。我が村は、もうおしまいじゃ……」


村人たちの間から、すすり泣く声が漏れる。


可憐はその話を聞き、ゆっくりと首を横に振った。

「地下水脈が干からびているなら、ただの『雨の理』じゃ確かに無理かもしれないね。でも……」


可憐は村長の脇を通り過ぎ、広大な薬草畑の中央へと歩み出た。

カラカラに乾いた土は一歩踏みしめるたびに白い砂埃を舞い上がらせ、薬草たちは茎を曲げ、生気を失っていた。


「カレンさん……?」

リオンとミリアが心配そうに見守る中、可憐はゆっくりと目を閉じ、両手を広げた。


(この土地には、水がないわけじゃない。空の遠く、あの山脈の向こうに、行き場を失った湿った気流が閉じ込められている……。そして、この土の奥底にも、眠っている小さな命の源がある)


可憐の内側で、四つの理――雨、風、火、土が美しい歯車のようにかみ合い、回転を始める。

ただ雨を降らせるだけではない。

まず、風の理で山脈の向こうから停滞していた湿った空気を優しく引き寄せ、上空に新たな雨雲を編み上げる。

次に、火の理の名残である地表の熱を適度に逃がし、空気を冷やす。

そして、乾き切った土の理の奥底に、潤いの道をそっと通す。


最後に――すべての要素を束ねる雨の理が、静かに発動した。


「――還ろう、本来のあるべき場所へ」


可憐の呟きと共に、カンカン照りだったオトトの里の上空に、ふわりと柔らかな灰色の雲が広がった。

それは威圧的な嵐の雲ではない。まるで慈雨を予感させるような、穏やかで美しいヴェールのような雲だった。


「え……? 空が……」

村長が驚いて空を見上げる。


次の瞬間、乾き切った大地に、パラパラと優しく冷たい水滴が落ちてきた。

それはすぐに勢いを増し、しかし決して暴力的ではない、ふんわりと大地を包み込むような恵みの雨へと変わった。


「雨だ……! 雨が降ってきたぞーーッ!!」

村人の一人が声を上げると、あちこちから歓声が上がった。


雨粒は、しおれかけていた月見草の葉一枚一枚を優しく叩き、その水分をぐんぐんと吸い込ませていく。

可憐の「循環の力」を受けた雨水は、ただの水分ではない。大地の養分を余すことなく根へと届け、失われていた生命力を爆発的に蘇らせる奇跡の雫だった。


数分後、雨がピタリと止んだ。

雲の切れ間から差し込んだ太陽の光が、水滴をまとった月見草の葉をきらきらと輝かせている。

先ほどまで枯れかけていた薬草畑は、見違えるような瑞々しい緑の絨毯へと生まれ変わっていた。


「す、すごい……! こんなの、魔法の域を超えている……!」

村長はその場に崩れ落ちるように膝をつき、溢れる涙を拭おうともせずに両手を合わせた。

村人たちも歓喜の声を上げ、可憐の周りに集まって次々と感謝の言葉を投げかける。


「ありがとうございます、雨の継ぐ者様……! 我が村は救われました!」

「お姉ちゃん、すごい! 畑が生き返ったよ!」


ミリアは自分のことのように飛び跳ねて喜び、リオンは満足そうな笑みを浮かべて可憐の近くに歩寄った。

「相変わらず、君の力は周りのすべてを笑顔にするな」

「ううん、私一人じゃできないよ。この土地の植物たちも、雨を待っていてくれたから」


可憐が照れくさそうに笑ったその時、里の特製ポーションを詰めた小瓶を持った村長が、深々と頭を下げて言った。

「お礼と言ってはなんですが、どうか今夜は我が村でゆっくり休んでいってください。最高の料理と、温かいベッドを用意してお待ちしております」


青空の下、息を吹き返したオトトの里の風は、どこまでも心地よく、瑞々しい草木の香りを乗せて遠くへ流れていきた。

「雨の継ぐ者」の優しさは、今日もまた一つの小さな村の未来をしっかりと潤し、静かな温もりを残していくのだった。

シーズン3外伝・第3話をお読みいただき、ありがとうございました!いかがでしたでしょうか?


今回は少しスケールを広げて、大地の干ばつと薬草畑の再生を描いてみました。可憐の優しさが里の未来を救い、みんなが笑顔になる姿を想像しながら執筆していて、私自身もとても温かい気持ちになりました!

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