~第8話~ 垣間見える思惑
氷とアルトルはパルテアの屋敷に着いた。
「ん〜そういえば、パルテアさん居るかなぁ」
「氷よ!今パルテアと申したか!?」
「え?うん」
「そ、そうだったか、
成る程確かに、師がパルテア様であればあの剣術も納得じゃな!」
「え?パルテアさんの事知ってるの?」
「え、いやまぁ、学園の長だしの、、
しかも学園紹介のチラシにも乗ってたしの、、」
「あ〜そっか学園長って結構有名なのか、、」
「まぁそれだけではないがな!親の付き合いで度々会ったことがあるのじゃよ!
この前も連絡が来て、親がえらく慌てておったの」
「へ〜そうなんだ!」
(パルテアさんアルトルには厄災の事話してないのかな)
玄関の前でそうやって話していると、空から猛スピードで何かが降ってきた。
着地の寸前に魔法だろうか?何かの力で減速し、着地する。
「パルテアさん!?」
「すまん!氷ちょっと帰りが遅くなりそ、、って、お〜アルトルじゃないか」
「パルテア様!お久しぶりなのじゃ!」
「どうしたんだこんなところに来て」
「童は剣術の授業で氷の剣術に感服してのぉ、友達にさせてもらったのじゃ!それで師がおるというので、どんな方なのかと気になって案内してもらったのじゃよ」
「そうだったか!よかったな氷、友だちができて!」
「いやぁ本当ですよ〜最初はどうなるかと、、、」
「あ、でだな氷、今日は会議に主席するから帰りが遅くなりそうなんだ」
「そうなんですか?」
「あ、そうだ、んー、まぁここでは何だしとりあえず中に入れ。」
そう言われ、パルテアと共に屋敷の中に入っていき、応接間で座って話を始めた。
「アルトルには言っておいたほうがいいだろう。君の親には伝えたが、厄災が始まった。」
「厄災が始まったじゃと!それで親があんなに慌てておったのか、、、
それでパルテア様どうするつもりなのじゃ」
「そうだな、君たち一族の力を貸してもらいたい。」
「それは良いとは思うが、それだけでは抑えられんじゃろう」
「あぁ、だから王国軍は勿論として、ネオジム、氷、私、そしてあわよくば魔王軍の手を借りられたらと思っているが、」
「魔王軍かぁ、、我々は関わってはいないとはいえども殺し合った仲、人間に手をかしてくれるじゃろうか?」
「微妙だな、そもそも魔王自体本当に今の世にいるのかどうか、」
「ちなみにパルテア様よ、ネオジム殿はわかるが、氷は妖怪への対抗策を持っているのか?」
「あぁ多分な、ってことで氷、
アルトルに妖力の使い方を教えてもらって使えるようになって欲しいんだ。」
「あ〜多分大丈夫ですけど、厄災まであとどれくらいですか?」
「ん〜、微妙だが、遅くても2ヶ月後には起きるだろうな、今の予想は丁度トーナメントが終わった後ぐらいだ。」
「わかりました、2週間で間に合わせます。」
「頼もしいな」
「ちょ、ちょっと待つのだ氷よ、おぬし妖力の才能はあるのか?」
「あーそれは大丈夫!多分行ける。流れさえ教えてくれればね」
「アルトル、そう心配するな、氷は今後の伸び次第では私より強くなる奴だ」
「パルテア様がそういうなら、、でもご先祖様のように無駄死には避けたいのじゃ、
もしも氷に才がなければ、たとえ妖怪と渡り合えるとしても連れていきたくはないのじゃ、、」
「わかってる。」
氷がご先祖様の時代について聞きたいと思っているが、果たして聞いて良いものなのかを迷っていると、
「アルトル、君の村について話してやってくれないか?」
「童達はあの事を忘れないよう紡ぐのが役目。話すのは問題ないが、氷は大丈夫かの?」
「大丈夫だよ、それに、知らなきゃいけない気がする」
「わかったのじゃ、まず童の村の名はアラマス村という所じゃ。
ご先祖様の世代は今から800年前くらいのことじゃ、あの時のことを忘れぬよう、石碑、書物、口伝、で紡いで来た悲惨な光景………
───氷の立ち寄った所から更に東に行った村。
そこは全ての人が妖力使いであったり、そうでなくとも妖刀などの武器を使いこなしている村人ばかりの村、それがアラマス村である。
だが、昔は国の近くにあった。
今では村と言っているが、昔は国の2割ほどの人口の大規模都市である。
1回目の厄災はあまり文献にも残っていないが、今から2000年ほど前。
その厄災では人間軍、魔王軍、アラマス村の村人の総勢2000万人~2500万人が戦い、1200万人弱が命を落としたとされている。
そこから1000年ほど後、魔族は長生きなので、その世代の子供に伝え残し、アラマス村はなんとか書物のみであったが、文献という形でその歴史を残してあった。
しかし、王国、今の中央都市は口伝の伝説という形で残ったものの、魔王軍と共闘したことや、死者を大勢出したことを残す事はできなかった。
しかもあろうことか、王国は魔族領にあるダンジョンの資材を奪うため、軍を編成し、攻め込んだ。しかし戦力差がありすぎたため敗北し、逃げ帰ってきた。
魔王はこちらに死者は出ていないし、一度くらいは許してやろうということで、謝罪のみを求めたが、国は謝罪するどころか、全ての魔族は悪であり世界を滅ぼすのは魔族だ、という洗脳的な教育が行われていた。
要求が認められなかった魔族だったが、それでも魔人からは手を出さず、攻めてきたら戦をするという受け身状態であった。
だが、それが結果的に最悪を招く事となった。
人間側は何処からか突如現れた、当時最強である人間に勇者という称号を与え、魔王討伐の旅へと行かせた。
ただ、ここからすべての文献や伝説があやふやで、勇者は魔王を倒したという事だけが乗っている。
恐らくは美談にするために国が操作を行ったのだろう。
200年後、最悪とも呼べる厄災が起きた。
2回目の厄災では王国軍がおよそ総勢3000万もの軍を投じたが、その軍は壊滅。アラマス村も10万の兵士を出していたが、9万人強が死亡。
その当時のアラマス村の村長は人間のみでは対応しきれないと判断し、息子に村長の権利を譲り、自分の息子と1万の男性、5万の女性、8万の子供を東へと逃がし、村長と残った村の男性達で前線を保っていた。期間にして、1週間ほど。
そのおかげで村は壊滅はしなかったが、国は兵士が1万もいない状態で攻められ、壊滅。一部一族が独自の手段で生き残っており、今の中央都市を造った。
厄災の妖怪はエネルギー不足で自然消滅、村人もなんとか永住できる場所を見つけ、アラマス村を作り、この悲劇を忘れないため何世紀と語り継ぐことを決めた。───
……ってのが童の村の歴史じゃ。」
「そんな事があったんだ、、、」
「じゃから今の中央都市の総戦力と童の村の総戦力をあわせても、勝てるかわからんのじゃ、、、」
「そこに魔族軍が手を貸してくれたら、と思っているが、魔王がいない今、恐らく厳しいだろう。」
「ん〜、じゃあやっぱり魔王を探さなきゃですね、、」
「そう責任を感じる必要はない。そもそも魔王がいるかもわからないしな、最悪住人を逃がした後私がこの国もろとも吹き飛ばす。」
「パルテア様!そんなことしたらその世界が終わってしまうではないか!」
「はっはっは、冗談だ」
「もう、びっくりさせないでほしいのじゃ」
そうは言ったが、氷にはどうしても冗談に聞こえなかった。
「じゃあ私は会議に行ってくる。その間氷はどうしておく?
今から神力の訓練はしなくても、明後日くらいに授業で基本は教えてもらえるから今日は休んでおいたほうがいいだろう。」
「う〜んじゃあ、そうですね、まだこの街見れてないですし、観光したいですかね」
「ん?氷よ、おぬし別の所から来たのか?」
「うん、そうだよ!東の方から来たの」
「ほぉ〜そうじゃったか!もしかしたら童の村と近いかもの!」
「そうだね!でもこっちに来る時村は見えなかったから、アラマス村のほうが東側なのかな?」
「そうかもしれんの!」
「そうだな、私から君の親に連絡しておくから氷にこの街を案内してやってくれんか?」
「わかったのじゃ!童に任せておれ!」
「それじゃあ5時くらいには帰るんだぞ」
「わかりました!いってらっしゃーい」
パルテアは地面を蹴り上げミサイルのような軌道で飛んで言った。
「やはりパルテア様は規格外じゃのう〜」
「あれを超えられる気しないんだけど、、」
「まぁパルテア様が言うくらいだし、氷なら行けるんじゃないかの?」
「そうかなぁ〜」
「それより早くいくのじゃ!」
アルトルは氷の手を引き急いで連れて行く。
「ここが武器・防具屋じゃよ!武器をなおしてもらったり、魔物の素材を持ってきたら武器をオーダーメイドで作ってくれたりするのじゃ!」
「へぇ〜でも武器は持ってるし、自然になおるから防具でお世話になるかな〜」
「そんな神がかった武器を持っておるのか!?なんでそんな物を持っておるのじゃ!?」
「いやまぁ、成り行きというか何というか?、、、」
「成り行きでそんな事なるかのぉ、、、
まぁさすがパルテア様の弟子というわけかの、、、
き、気を取り直して次は魔道具屋じゃ!」
アルトルは氷の手を引き魔道具屋へと向かう。ここは武器やらなんやらがそろった通りなので、そこまで遠くはない。
そのため数分で着いた。
「ここが魔道具屋かぁ〜、何売ってるの?」
「主に魔導書とか杖とかじゃな!あと、珍しい物だと回復薬とかじゃな」
「え?回復薬って珍しいの?」
「そうじゃな、回復薬を売るには免許がいるからの。ただ、魔道具の販売だけなら免許は要らないから回復薬を売っている魔道具屋は珍しんじゃよ!」
「なるほど、そういうことか〜、
武器とかだとあるから良いけど、魔道具は持ってないから気になる!」
「ほっ、よかったのじゃ、これであるから良いやとか言われたらいよいよ何もできんよ、、、」
「流石にそこまででは無いよ〜」
氷は中を見てみたかったがふと気づいたことがあった。
「ん〜、、そういえばさ、アルトルちゃん、アルバイトとかってあるの?」
「あるにはあるが、今の年齢だと突っぱねられることが多いの」
「なるほど、因みに自分の欲しいものとかどうやって買ってるの?」
「そうじゃの〜童の場合は親に買ってもらったり、家の手伝いをしてお小遣いをもらって貯金して買ったりかの?
あ、あと誕生日とかに買ってもらったりするのじゃ」
「なるほど、、、」
「どうかしたのか?」
「いや、大丈夫!そういえば、私お金無かったなぁ〜って、、、」
「そうじゃったか、、、ま、まぁここは中央都市じゃし、流通が多いから、売り切れる事はないからの、、頑張って貯めるのじゃ、」
「そうだねぇ〜、、、」
氷は心の中でパルテアにお小遣いを貰おうと考えるのだった。
───中央特殊会議。
パルテアはそれに参加していた。
「で、パルテアさん。特殊会議を開くほど重要なこととはなんですか」
「それについてですが、まず端的に申し上げます。厄災が起こります。」
「証拠はあるのですか?」
「えぇ、私の弟子が東の森で厄災牛を確認しております。」
「なるほど、」
「だが、その弟子とやら本当に信用なるのか?見間違いという可能性も捨てきれんだろう。今からでも中央の兵士を派遣して再調査すべきだと思うがね」
「ほう、私の弟子が信用に値しないと仰るのですか?」
ついついパルテアは脅してしまった。
弟子に甘いパルテアからしたら十分に侮辱なのだろう。
「い、いやそういう訳ではないがな、、」
「そもそも、そんな時間はありません。
厄災は早くて1ヶ月後、遅くても2ヶ月後には起きます。
早急に中央都市の兵士をかき集めて、部隊の編成、戦闘への準備をお願いします。」
「ですが、パルテアさん、編成するにも準備するにもお金がかかるのですよ、もし、もし仮にですよ?見間違いだったとしたらそのお金は誰が負担するのですか」
「都市が負担すればいいでしょう。それに仮にと仰るのでしたら、仮に部隊の編成もせずに厄災が起こったら困るのはあなた方だけではありません。この都市にいる全民が最悪死ぬんですよ。よくお考えください。」
パルテアは議会の人数10人、9対1という圧倒的不利な状況にも関わらず、根拠と理屈、そして芯の強さを武器に議会をどんどん突き進めていった。
「では、私はこれで失礼します。」
「ちょ、ちょっとパルテアさんまだ議会は終了してません!途中退席はお辞め下さい!」
「そうですか、ですがまだ仕事が残っておりますので、それにどうやら私の言う事を信じていらっしゃらない様子ですし、参加してても意味が無い。」
「そ、それとこれとは!…」
「では失礼します。」
パルテアは上手く言いくるめ、議会を後にする。そして、学園に戻ってきた。
職員室へ向かい、扉を開ける。そして、残った仕事を終わらせる。
はずだった。
「…何をしているのですかムカール様。」
「学園長、お帰りになられましたか、いやはや学園長が忙しそうだというのを耳にしましてねぇ、少しながら仕事のお手伝いをと思いまして、」
「結構です。」
「そうでしたか、では余計なことをしてしまいましたかねぇ、、」
「何をしたんですか。」
「何ってそんな悪いことをしたかのように言わないでくださいよ、私はただトーナメント表を作って差し上げただけなのに、、、ほらトーナメントって私が決めた事ですし、それで学園長に負担をかけてはいけないと思いましてねぇ、
あぁ、それと決勝戦は保護者の方もご参加頂けるようにしました。やはり自分の子供の努力をみたいでしょう?残念ながら学園長のお弟子さんは決勝戦に上がってしまうと、シードの彼女とぶつかってしまいますねぇ、、」
「なぜ今の段階でそこまで決まっているのですか」
「どうせあなたのお弟子さんは決勝戦に来るのでしょう?それならそこまで考えておいても不思議ではないとは思いますが?まさか学園長は自分の弟子は決勝戦に上がれないほどに弱いと思ってらっしゃるのですか?」
「そうではないですが、」
「なら問題ありませんよねぇ?
あ〜それともうその表はすべての教員の方にお渡しいたしましたので、ご心配無く。
せいぜい頑張って下さいよ」
そう言い残してムカールは職員室を後にする。
頭のきれるパルテアでも学園という弱みがあっては言い返すに言い返せなかった。
そしてパルテアは自分の席の上に置かれたトーナメント表を確認する。
(この子が、決勝戦の氷の第1試合の相手、、、
頼むぞ、氷。)




