~第7話~ 初めての剣術の授業
朝、氷は学校で静かにホームルームの時間を待っていた。
(はぁ〜憂鬱だよぉ、、、1人も友達できなかったし、これじゃあ普通に魔王探しどころじゃないじゃん、、、)
教室の前側のドアが程よい速さで開いた。
「はーいホームルーム始めますよ。」
そう言うと、ドアが閉まるときに音が大きくならないよう丁寧に閉め、真ん中の教卓へ進む。
「まず、始めの1週間は適正とか関係なくとりあえず全ての授業を受けてもらいます。」
先日の魔法ぶっ放し男子がティマ先生の話を邪魔するかのように話し始める。
「なんで適正関係なしでやるんですかぁ?
適正がなけりゃ使えないんだしやる意味無いと思いまーす」
「まぁそういう意見もあるでしょうね。
でも後天的に才能が開花する人もいれば、実は微力ながら適正がある人とかいますから、そういう見落としが無いように皆んな受けてもらうということです。」
質問するなら手を挙げろやと言わんばかりに、というかそういう意図であろうが、当たり前のことすら知らんのかと言った感じでバッサリと切り捨てるティマ先生。
「それで、今日まずは基本中の基本、剣術について学んで頂こうと思います。
剣術は結構、魔法使いの人とかでも使う人も居ますし、もし使わなくても剣士対策として習っておいたほうがいいものです。」
というわけで、ティマ先生の指示に従い、Sクラスは校庭へと出ていく。
外にでるとすぐ校庭が見え、実力を遺憾無く発揮できるような仕掛けがたくさんある。
例えば、地面に加え、校庭の敷地とその他を隔てるように魔法防御結界が貼られている。恐らくは思いっきり魔法をぶっ放して魔法が何処かに飛んでいってしまったのだろう。
あと、目立つのは丁度左側少し奥にある、かかし達だろう。剣筋の流れでも鍛えるのだろうか?
「はい。では皆さん、私は剣士では無いので、剣術を教える事ができません。なので、剣術の達人の先生が来るのでそれまで静かに待っていてください。」
そういうとティマ先生は奥の方へと行ってしまった。別クラスの生徒達も見えるので、授業をしに言ったのだろう。
「よっす!皆んな元気っすかー!」
先生とは思えないテンションで、先生が挨拶をしてくる。テンションだけでない、氷のほうが上手く敬語を使えている。
この気楽でフランクな感じなら行けると思ったのか、魔法ぶっ放し男子がまた横柄な態度を取り始める。
「先生ー元気なんで、早く戦わせて下さいよ〜ってか本物の剣で良くないですか?」
「なるほど〜元気な子は嫌いじゃないっすけど、ちょっと元気すぎるっすね。」
瞬間、まるで雰囲気が変わった。発泡スチロールだと思って持ち上げたのに、コンクリートだった時のような雰囲気の高低差に氷と謎の少女以外は怯える他無かった。
「じゃあ俺と勝負しましょうか。
そこにある木剣を取って俺の前に立ってください。」
「え、えぇ、と、」
「なんすか、自分から勝負をしたいと言っておいて、逃げるんすか?」
「う、うるせぇ!やってやるよ!!」
この瞬間に立ち会ったならばほぼ全員の人が、いやいや無理するな、今謝ればそれで済むのではないか?と思うだろう。
だが、一丁前にプライドだけは高い彼にとって謝るなどもっての外である。
であれば先生と勝負する他無い。
「ではいくっすよ!!」
木剣同士が当たり、カコンッと一回鳴ったと思えば、男子生徒は倒れており、先生の木剣が首元へと向けられていた。
あまりに一瞬の出来事で言葉にしようが無かった、
が、氷だけはその動きを読み取り言葉にできずとも自分の糧としていた。
「勝負ありっすね、他に戦いたい子はいるっすか?」
氷は少しやりたかったが、目立つことを意識して行うのがあまり得意では無いため、やらなかった。
そのため、誰も名乗り出なかった。
数分経ち希望者が誰も居ないことを見て、先生は話し出す。
「大丈夫っすかね?
じゃあ俺は皆んなに剣術を教える、バル・ケダイルっていいます。よろしくっす!」
皆からの返事は無い。あれほど圧倒されれば呆気に取られて返事をする余裕も無いだろう。
ところで氷は挨拶しかえそうと思ったが、周りの様子を伺っている間にどんどん挨拶しにくくなる悪循環に陥っていた。
そんなこんなで1時間目が始まった。
1時間目は素振りや先程見えたかかしに木剣を当てたりと、基本をやるようだ。
(おっとっと、この木剣、あの刀と違ってバランス取りにくいなぁ、、、)
「ほっ!」
(ん?あの子、、、パルテアさんの弟子かな?
でもちょっと振りにくそうだなぁ)
「氷さんだったすかね?」
「あ、はい!」
「木剣じゃなくて木刀のほうがあってるかもっすね」
「あ〜実は私刀しか使ったこと無くて、、、」
「やっぱりっすか!じゃあこれを使ってみるっす」
「おぉ、振りやすいです!」
「よかったっす!じゃあそれで頑張ってくださいっす!」
「はい!」
氷がブンブンと振っている間、例の少女は一振りもしていない。
だが、バル先生は話しかけない。いや、話しかけられないと言ったほうが正しいだろうか?
少女本人も話しかけるなオーラを出してはいるが、それだけではない。
大人の事情というヤツだ。
その少女以外の生徒はちゃんと授業を受けていた。
すると意外と時間は早く過ぎ、終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「あ、もうこんな時間っすか、
次の時間も剣術の授業っすから移動しなくて良いっすよ!じゃあ皆んな休憩!」
「ふ〜疲れた〜」
氷がリラックスして少し経つと、いつの間にかそばに人が立っていた。
「汝よ、なかなか良い剣筋だったでは無いか、名前を申してみよ」
「え、ひょ、氷だけど、、、」
「氷か、甘美な響きじゃのう。
童はアルトル・スタイヤルと申す。よろしくの」
「よ、よろしく、
アルトルは因みに、なんでそんなに古風な言い回ししてるの?」
「え?なんでってそんなのカッコいいからに決まっておろう。
それより、汝も刀使いなのだな!」
「え、うんまぁね」
「次の授業、先生に聞いてきたが、模擬試合らしいのじゃよ。
それで汝、童と手合わせしてくれぬか?」
「え?まぁ良いけど、」
「ふっふっふ!感謝するぞ!では楽しみに待っておるからの!」
(なんか不思議な子だったなぁ、)
氷はその後ストレッチをして筋肉を伸ばして休み時間を過ごす。
そして始まりを告げるチャイムが鳴る。
「はーいじゃあやるっすよ!
今からは模擬試合方式でやっていくっすよ
試合したい子とかいるっすか?」
すると2人が手を挙げる。
アルトルと魔法ぶっ放し男子だ。
「氷とやりたいのじゃ!」
「あの女とやりてぇ!」
男子の方は指を指す下品な指名であったが、指名した人物は氷で被っていた。
「氷さん人気っすね〜!
氷さんはどっちとやりたいっすか?」
「おい女!もちろん俺だよな?ビビってんのか?」
「ごめん!先にアルトルと約束したからまた今度とかで!」
盛大に舐め腐り散らかした上に盛大にフラれたのだ、恥ずかしくてたまらないだろう。
「おぬし、わるかったの!童が先に戦わさせてもらうのじゃ」
「んだてめぇチビの田舎者のクセに俺の事煽ってんのか!」
「別にそういうつもりはないのだがの」
2人が睨み合う、というより1人が睨んでもう1人がそれに大人の対応をしてあげているような構図だが、それをバル先生が静止する
「はいはい、文句があるなら力で示すっす」
「ちっくそが」
「じゃあ、アルトルさんと氷さん、そこの円の中心くらいに行ってくださいっす」
そこにはバル先生が休み時間に引いたであろう白線があった。
その白線は半径10mほどの円をなかなか綺麗に描くようにして引かれてある。
2人は言われた通り円の中心から2mずつ離れて対面する。
「能力、魔法などは禁止っす、スキルは自己完結するものであれば使用可とするっす。
それじゃあ始め!!」
バル先生の開始の合図とともに両者は動き出す。
一瞬の間に接近したが、中心よりも氷がいた側に寄っていたため、アルトルのほうが速いようだ。
木刀が振るわれるかのように思われた時、アルトルは姿勢を低くする。
何をしようとしたかを察知したのか氷は足を止め横向きにし、摩擦を最大限活かしブレーキをかける。
アルトルから振るわれた木刀は残像すら残って見えるほどに速かった。
それを後方に跳んで躱す氷。
「ほう、汝、これを避けるか」
(何あれ!?速すぎでしょ!!)
アルトルは言葉を喋り終わるとまた氷に接近する。
(あの低姿勢でガラ空きの背中に攻撃を打ち込む隙も無かった、、あの木刀を防ぐしかない!)
接近し、木刀を振るおうとするが先程とは違い、低姿勢ではない。そのアルトルに対し、氷は一歩引いてその攻撃を見定める。
そしてその木刀が振るわれる刹那、氷はスキルの併用を実行する。
(反応速度強化、探知スキル発動!)
「ここ!」
カン!っと木刀同士が当たり、音がなる。
そして氷は更に先程バル先生が見せた技を実行する。
木刀同士が当たった1点を支点のように使い、上からアルトルの木刀を抑え込む、そして刀をずらし、鍔を刀身に当て、すくい上げるようにしてアルトルの手を上へと上げる。
アルトルは一瞬の内に自分の木刀を抑え込まれたため、自身への攻撃を防ぐよう木刀を押し返し、木刀を上げようとする。
が、まさか相手が上げるとは思わず思考は一瞬固まる。
木刀を上げるという思考が仇となり、アルトルは腕を大きく上げてしまう。
一方氷は流れるような動作で頭の上に木刀を構え、その木刀を振り下ろす。
その木刀はアルトルの眼前で止まった。
それは両者の中で言葉を交わさずともわかる事だった。
氷が勝者だ。
「勝負ありっすかね」
2人は木刀をおろし、見合ってお辞儀をする。
「汝、すごいぞ!童とここまで対等に渡り合い、勝つなんて!」
アルトルは興奮して、口調を忘れたような感じであった。
「い、いやぁ、たまたまだよ」
「だとしてもだ!ぜひとも童を汝の友達にしてほしい!!」
「え!友達!?いいよ!」
今朝まで友達の事で頭がいっぱいだった氷は誤って一瞬で返事を返してしまう。
「では汝よ、童のことをアルと呼ぶがいい!」
「わかった!アルちゃんね!
でも私も汝って言われるのなんか恥ずかしいから氷って呼んでくれない?」
「いいのか?では氷よ!改めてよろしく頼むぞ!」
「うん!アル!よろしく!」
せっかく青春っぽい雰囲気だと言うのに脳の隅から隅まで戦闘で染まりきったバカが邪魔をしてくる。
「おい!女!次は俺だぞ!」
「いいよ!」
…勿論圧勝だった。説明する気すら起きない。ただ一言、圧勝だった。
そして希望された試合が全て終わったため、バル先生は話し始める。
「じゃあ残りの子は先生が勝手に決めるっすよ〜」
そうは言ったがここでもあの少女は選ばれ無かった。いやバル先生からすれば選べなかった。大人の事情というヤツだ。
それはそうと、順調に授業は進んでいった。
「はい!魔法使いの人が多かった中で皆さんなかなかいい剣筋だったすね!
今日は時間的にもできないっすからここで終わるっす!」
先生がそう言い終わると丁度終わりを告げるチャイムが鳴った。
そういえば今週は学園に慣れようということで授業が2時間分しかないようだ。
そういう訳で皆んなは教室にもどり、帰りの支度を始め、各々で帰っていく。
「氷!一緒に帰らぬか?」
「アル!いいよ!」
歩きながら2人は話す。
「そういえば氷はどこに住んでおるのか?」
「あー師匠の家だよ!」
「なんと!師がいたのか!
是非合わせてはくれぬか!」
「多分大丈夫!それなら私の家に一緒に来る?」
「いいのか!?」
「いいよ!」
2人は氷の師匠の屋敷へと雑談しながら仲良く向かうのだった。




