行き先のない憎悪の果て
俺は昔小さな村で生まれた。
生まれながらに右目がなかった俺は村の住民達はそれを気味悪がられ、右目の無い俺を「悪魔の子」と呼んだ。
物心ついた頃から俺は罵られ、村から離れた狭く寒い壊れだ小屋に隔離されていた。
1日1回ご飯...いや、"食べられる物"が捨てられる様に置かれる、美味しいなんて思ったことは無い、ただ生きるために食らった。
ただ隔離された俺にも娯楽はあった。小屋の中にはホコリを被った本が沢山あり、俺はそれを毎日時間を潰すようにして読んだ、雨が降り雨漏りが頭に落ちても、冷たい風が小屋の穴を抜け体にあっても、それでも俺は読む手は止まらなかった。
そして俺は村の奴らに罵倒され、本を読む、そんな1日を数年繰り返していた。
あれからかなり時が経った。
今、俺が何歳になのかも分からない、少なくとも2年以上はこの小さい子屋過ごしている。
本はほとんど読み終えてしまった、同じ本を読み返したり、続きの無い本の続きを考えたりもした事もある。
何も楽しくなかった。
夜になり夜風が小屋の穴を抜け鳴る小さな音に耳を立てていると小屋の扉が突然開いた、扉の外を見ると村の奴らがロープを持って立っていた。
「本当に右目がないの、気色が悪い」
「服も髪もボロボロで同じ人間じゃないみたい」
「こんな所来たくもなかった」
その言葉はしっかりと耳に届いたが俺はなんとも思えなかった。
もうとっくの昔に俺は怒る力も悲しむ涙もとうに枯れていた。
俺は抵抗をする事すらせず手をロープで縛られ、そのまま木箱に入れられた。
馬車の音が聞こえ箱が大きく揺れ、馬車が動き出した。
しばらくして箱の蓋が開き月光が箱の中を照らす。
村の男達は俺を乱雑に掴み森の方へ歩いていった。
遠くへ来た、草木がよく生い茂り葉の音が聞こえる。
周囲の魔素の量が多く少し気分が悪い。
そして俺はその森の奥にある小さな墓地に投げ捨てられた。
俺を捨てた後村の奴らの話し声少し聞こえる。
「あのガキに触っちまったよ」
「嫌な臭いがした、近くに居るだけで最悪だ」
「悪魔の子に触ったら悪魔になっちゃうかもよw」
村の奴らの姿は見えなくなった。
怒りは湧かなかった。
ただそれ以上に込上がってくる"何か"があった。
腹の底から喉を通って口から吐きでて来そうな"何か"が。
怒りより重い"何か"。
壊れた俺にまだ残っていた唯一"何か"が。
そして"何か"にあらゆるものが集まってくのを感じた。
周りの魂も、魔素も、俺の中に入っていく。そして俺の中でグチャグチャに混ざり合うのを感じた。
それは喉を潰されているかの様に息ができなく苦しい。俺は何度も踠き、吐いた、人がやってはいけない事をしていると痛みが教えてくれた。
だがもうどうでも良かった、俺が死のうがどうでもいい。だから俺はただ全てをその"憎悪"に身を委ねた。
そして俺の腹は引き裂かれ何かが出てくる様な激痛を感じる気を失ってしまった。
✳ ✳ ✳ ✳ ✳ ✳
全身に激痛が走る中、誰かの声がした。
「お! 目が覚めました? マスター」
マスター?なんの事だ、俺は誰かのマスターになった記憶はない。
俺はハッキリとしない左目を力いっぱいに開き相手の姿を見ようとした。
そこに映ったのは人間とは思えない丸い頭と細い腕。
人間ではない"何か"なのかは分かった。
まだ疑問はあった、なぜ俺はコイツのマスターなのかだ。
「いつから俺はお前のマスターになった」
俺は横になったまま力なく聞いた。
すると"そいつ"はニコニコしながら答えた。
「ついこの前、マスターがオレっちを"作った"その時です」
その言葉を聞いてますます分からなくなった、俺はコイツを作った覚えは無い。
「お前は何者なんだ?」
そいつは俺の右目を指差し言葉を返した。
「オレっちはマスターの過去を共に背負う者です」
「――何言ってんだお前」
「うぇ?」
「名前だよ、お前の名前は?」
「な、名前は無いです...」
そいつは少し恥ずかしそうに答えた。
名前が無いのは色々と困る、何か良い呼び名は...
「―――じゃあ、"オクルス"な」
「ありがとうございます!マスター!」
「ヴィンクルム・エルディオ、エルディオって呼んでくれ」
✳ ✳ ✳ ✳ ✳ ✳
エルディオ「てっ感じだ」
光一「大変だったな、エルディオ...」
光一はエルディオの頭に軽く手を置き、そのまま頭を撫でた。エルディオはその手をゆっくりと撥ね除け少し照れくさそうに「やめろ...」と言った。
それをオクルスは楽しそうに見ている。
光一「あ!そういえば"この一件の原因は俺かもしれない"、てどういうこと?」
エルディオはハッと思い出し答える。
エルディオ「俺がここら一帯の魔素を使ってしまったからスライムが大量発生してしまったんだ」
エルディオ「本当にすまない」
エルディオは光一に向かって深く頭を下げる。
その行動を見て光一は慌てて聞いた。
光一「何でエルディオが謝るの!?」
エルディオ「今回の件は俺の身勝手な行動が原因だ」
光一「そうかもしれないけどそれは全部エルディオが悪い訳じゃないでしょ!」
光一「それに悪い事ばっかじゃないし、俺は久しぶりに一人になれたし、これでお金を稼げるし、それに――」
光一はエルディオの目をしっかりと合わせ少し息を整え軽く微笑む。
光一「――エルディオにも会えた」
その雲ひとつない言葉を聞きエルディオは少し驚き少し表情が変わる。
その顔をオクルスが覗き込む。
オクルス「泣いてます?」
エルディオ「泣いてない...」
光一「ごめん!泣かせちゃった?」
エルディオ「泣いてない!」
エルディオはそっぽを向いてため息をつく。
だがその表情はどこか楽しそうだった。
オクルス
年齢 2歳
誕生日 5月31日
身長 183cm
体重 不明
趣味 エルディオにバレないようにふざけること
特技 闇系統魔術
好きな食べ物
ない
オマケ
エルディオの右目になっている時はエルディオとの意思疎通が出来たり、右目から拳を出して不意打ちなども出来る。




