フォレスティア森聖国15
side:リリー
パパに連れられた先で出会ったのは、私の従弟だという1つ年下の少年だった。
もう5歳の男の子だというのに、耳が短く小さい。
その理由が、ヒューマンとのハーフだと言うのだから驚いた。
ヒューマンは駄目だと、アコがいつも口を酸っぱくして言っている。
リリーには兄弟がいないので、兄弟や姉妹のいる子が羨ましかった。
だから、従弟と聞いて内心嬉しかったのに、ヒューマンの子だなんて残念だ。
それに、リリーの方がお姉ちゃんなのに、生意気にも諭すように意見してきた。
半分はエルフのくせに、ヒューマンの味方をするなんて、仲良くなんてできそうにない。
もう従弟には興味も無くなったので、アコと遊びに行こうと思った。
アコは、リリーが赤ちゃんの頃から側に居てくれるので大好きだ。
リリーにとって、色んな事を教えてくれて頼りになる、お姉ちゃんみたいな存在だ。
だけど、そんなアコに悲しくなる事を言われてしまった……。
リリーよりも、アメリア叔母様の方を優先すると言われたのだ。
確かに、事あるごとにアメリア叔母様の素晴らしさを聞かされて育てられてきた。
だけど、こんなにあっさり優先順位が変わるだなんて……。
リリーが2番目だんてイヤだ……リリーは1番が良い……。
アコがリリーは2番目じゃないって言ってくれて、嬉しかった。
だけどそれは、アメリア叔母様と同率1位という事では無かった。
リリーは、来たばかりの従弟にすら負けてしまった。
……アコも、アイツも嫌いよ……。
こっそりと、森の中に入る。
誰も知らない秘密の抜け道があるのだ。
そんなリリーを見つけてくれたのは、パパでもアコでも無く、リリーからアコを取った従弟だった。
心配して捜してくれた事に嬉しさを感じるが、アコが来てくれなかった事が悲しい。
側にいてくれた精霊達も、珍しいお菓子に釣られて離れていく。
今日来たばかりの従弟に全部持ってかれちゃった……。
従弟はリリーにも、お菓子をくれようとしたが、素直に受け取る気にはなれない。
精霊達が美味しそうに食べているし、正直言えば興味もあるし惹かれる。
だけど受け取ってしまえば、負けた気がするから絶対に嫌だ。
……結局、誘惑には勝てず、受け取る事になった。
癪だし悔しいけど、従弟の言う通り、冷たくて甘くて、とても美味しかった。
冷たい物を食べたおかげで、少し頭が冷えた気がする。
『ごめんなさい』と『ありがとう』を言おうと思ったのに、言葉が出てこない。
それどころか、『ごちそうさま』の言葉すら恥ずかしくて言えない。
逆に冷静になったせいで、リリーがしちゃった事について考えてしまった。
だけど、そんなリリーにユーリオンは、まだ手を差し伸べてくれた。
今なら素直になって言える気がする……そう思っていたのに……。
一緒に来ていた女が恥ずかしい事を言ったせいで、リリーまで恥ずかしくなってきた。
リリーは、ちょっと優しくされただけで好きになるような、安い女じゃないんだからっ。
結局、『ごめんなさい』も『ありがとう』も言えず、ビンタしちゃった。
流石にもう、ユーリオンには嫌われちゃったよね……。
ユーリオン達が森に、採取しに行くと言うので、リリーも行く事にした。
今日こそ、ちゃんと『ごめんなさい』と『ありがとう』を言う。
エレナという少女は、リリーにとって、初めて会うヒューマンだった。
アコに聞いていたように悪い感じはせず、どちらかと言えば気弱そうな印象を受けた。
リリーの方が可愛いけど、この娘も悪くない……リリーの方が可愛いけどね!
まぁ、今回の目的はユーリオンなので、ヒューマンの事は置いておく。
タイミングを計る為、後ろから観察する。
観察して分かったのは、ユーリオンとエレナの仲が良いという事だ。
足場が悪い場所では手を繋いで助け、それでなくとも細かく気を配っている。
これでは、どちらが使用人か分かったものじゃない。
まるでお姫様を護る騎士のようだ。
……なんだか見ているとイライラする……なんでだろう?
休憩に入ったので言おうと思ったら、ユーリオンがエレナの髪を梳きだした。
男のくせに女の子の髪を弄るだなんて、信じられない!
それに……手慣れている感じがしてイヤらしいわ……。
あろうことか、リリーと同じ髪型にしてきた。
当て付けのつもりかしら!?
見てらんなくて、顔を背けた。
すると今度は膝枕をしだした。
次から次へと、イチャイチャしてイヤらしい!
ちょっとは見直していたのに、信じらんない!
我慢できずに文句を言ってやったら、ユーリオンではなくエレナの方が食って掛かってきた。
気弱そうな印象だったのに、信じられない行動だ。
ユーリオンは意外にもリリー達を止めようとはせず、何故か優し気な顔で見守っている。
やっぱりリリーは、ヒューマンなんて嫌いだ!!




