報告
side:ヴィルト
喧騒が鳴りやまぬ中、足取りも重いまま進んで行く。
向かう先はハンスの元だ。
御通夜みたいな雰囲気も鬱陶しかったが、この騒がしさにもイラッとくる。
……いや、流石に八つ当たりだな。
〝憤怒〟のスキルを使ったせいなのか、それとも違うのか。
こんなどうでも良い事を思考する自分にもイラっとする。
怒りを爆発させ、敵をぶち殺した時の爽快感とは打って変わり、
スキルの後遺症で、使用後は細かな事にまでイライラする。
使えば使う程、怒りの沸点まで低くなるオマケ付きだ。
別に使わなくても、ユーリオン達と協力すれば、倒せただろう。
ムカつく事に、あいつは真っ当に強いからな。
頭では分かっていても、心の中の感情は、思い通りには動かず、抑える事も出来なかった。
いや、あの怒りを抑えようとは思えなかったから、結果は同じか。
大罪系スキルの危険性は身をもって知っているんだ、多用はすまい……たぶん。
目的地に着いたので、中へ入っていく。
扉の向こう、外の世界とは切り離されたかのように、室内は静かだった。
重傷人や、残念ながら、そうではなくなった者達が集まっているのだ。
こんな所にまで、はしゃぐ奴がいたら、ぶっ飛ばしてしまうかもしれん。
死体となってしまったハンスは、移動させられていたが、直ぐに見つけられた。
こっちでは、顔に布をかけたり、死化粧なんて文化は無いようだ。
触れようとした指先が一瞬止まるが、構わず触れる。
……知識としては知っていたが、人はこんなにも冷たくなるんだな。
ファンタジー世界なら、一瞬で全快するポーションや、蘇生魔法くらい用意しとけってんだ。
ほんと融通の利かない糞みたいな世界だよ。
「……ハンス…悪いな、お前の妹助けられなかったわ…」
ここで、文句を言う為に起き上がるんじゃないか、なんて馬鹿みたいな事を思ってしまう。
仮にそれで起き上がるなら、それはもうハンスではなく、アンデッド系のモンスターなのだが。
「やっぱ、オレにヒーローは務まらねーわ…ガラでも無いしな。
ま、何の代わりにもならねぇーだろうが、仇くらいは取っといたぜ」
映画とかだったら、ここで墓に酒をかけたりするんだろうが、
個人や一族の墓なんて用意できるのは、貴族や金持ちだけらしい。
「……じゃあな、化けて出て来るんじゃねぇーぞ」
当然、何の返事も返って来ない。
その事に少しだけ淋しさのようなものを感じつつ、その場を去るのだった。
スタジアムとかでやるビールの売り子の仕事、見た目以上にきついんですね。
あの背負ってるビール20㎏ぐらいあるなんて。




