ケモノとバケモノ3
side:ヴィルト
俺は、自分が1番大事だし、身を挺してまで誰かの為に動く気にはなれない。
それも今回の相手は、人を食らう様なモンスターだ、危険だし関わりたくも無い。
ベンとケビン、それにハンスとだって、まだ友達と呼べるほど時間を共有していない。
誘われてはいたが、断ってしまったので、仲間ですらない。
偶々同じ場所で汗水を流して働き、偶々気が合い、偶々仕事終わりに飲んで騒いだだけの関係だ。
アイツ等がやられた時だって、薄情だと思われようが、敵討ちをする気すら起きなかった。
そんなのは、ガラじゃ無いしな。
だけど、死に際に託された想いくらいは聞いてやるつもりだった。
ガキなんか嫁に貰うつもりは無いが、助けた後は、ユーリオンに任せりゃ何とかなると思ってた。
だが、助けに来てみりゃ、もう、生存者はいないだって?
そりゃぁ、現実なんだ、都合良くいかない事だってあるだろう。
だとしても、この結果はあんまりじゃないか。
なら、3人の行動は無意味で無価値、無駄死にだったって言うのか?
ハッ、お陰様で思い出したよ、いや、思い知らされた、か。
前世の時から頑張ろうとした時、頑張った時、いつだって報われなかった事を。
死んで、異世界に生まれ変わろうが、本質は何も変わってないのかもしれない。
俺は世界が大嫌いだが、世界も相当俺が嫌いらしい。
瓦礫を殴り壊し、進んで行くと、クマよりでかい獣が、人の頭を転がして遊んでいやがる。
ああ、良かった。
こいつら相手なら問題なく使える。
だってもう、抑えが効かない程、殺したくて壊したくて仕方がない。
side:ユーリオン
ヴィルトは離れていろと言ってたけど、はいそうですかと、全て任せる訳にはいかない。
魔糸を編んで紐にし、紐を編んでロープとして外壁を登り、ピエリスと2人、観客席へと移動する。
もちろん、ただ観戦する為に登ってきたのではない。
いざという時に、直ぐに対処できるようにする為だ。
「アイツ1人で、本当に大丈夫なんですか?」
「結果を先に言うなら、99%ヴィルトが勝つよ」
「そんなに……残りの1%は?」
「敵が戦わず、即座に逃げる事を選択した場合かな」
「つまり、戦えば100%勝つと…ユーリオン様の言葉を疑う訳じゃ無いんですが」
ピエリスから、にわかには信じられないという気持ちが伝わってくる。
まあ、普段の様子からすれば、信じられないのも仕方がない。
「僕とヴィルト、戦えば、どっちが勝つと思う?」
「それは流石にユーリオン様では?」
「そうだね、喧嘩とかなら、多分僕が勝つと思う。
だけど、もしも、本気の殺し合いになったら、きっとヴィルトが勝つんだ。
まあ、死にたくないし、殺されるつもりも無いから、その時は全力で逃げるけどね」
余程信じられないのか、ピエリスが、先ほどよりも驚いた表情で見せてくる。
「アイツ、そんな凄い切り札を隠し持っていたんですね」
「切り札と言えば、そうなのかもしれないけど、できれば使ってほしく無かったよ」
ピエリスが、その意味を尋ねるより先に、戦いが始まった。




