大掃除
マリーにも一声かけてから帰るべきだろう。
居場所を聞いて向かうと、大人数で大掃除をしていた。
梯子を使って上の方も掃除しているので、忙しそうだ。
シスター服で梯子に登るのは、見てるこっちがハラハラする。
見渡すと、オリビア様と一緒に月神様の像を奇麗にしているマリーを見つける。
「こんにちは、忙しい所にお邪魔してすみません」
「ユーリ君? うぅ、お話したいのですが、今は……」
「ユーリオン殿下、こちらは御覧の通りですので、ここにいては汚れてしまいます」
オリビア様が、僕が汚れたら悪いと、ここから離れさせようとする。
長居しては本当に邪魔になるので、直ぐに帰ろう。
「マリーへ一言声をかけてから帰ろうと、立ち寄っただけですので、直ぐに帰ります」
「すみません、邪険にするような形となってしまい」
「いえ、気にしてませんから」
それではと、言おうとしたタイミングでオリビア様に上の方から声がかけられる。
「オリビア様、やはりステンドグラスは奇麗になりません」
「そうですか、無理をして割れたら困るので、ほどほどで切り上げてください」
「わかりました」
「お話し中に失礼いたしました」
「ステンドグラスを奇麗にしたいのですね」
「ええ、ですが拭き掃除をしても、あまり汚れが取れなくて」
「……試してみたい事があるのですが、参加しても良いですか?」
「なにか案があるのですか?……いえ、やはりユーリオン殿下に清掃作業は……」
奇麗にはしたい、だけど簡単に参加させて良い相手でも作業でもない。
オリビア様が本当に頼って良いものか頭を悩ませる。
「僕は信者ではありませんが、月神様には縁を繋いでもらった恩があります。
なので、少しでも恩返しができればと」
「……そういうことでしたら、わかりました。
ステンドグラスは高い位置にありますので、お気を付けください」
ピエリスには万が一に備えてもらう。
高さ的に落下したら大怪我してしまう。
結界で階段のような足場を作り登っていく。
物理強度は低くても、子供の体重くらいは受け止められるし、梯子よりも安定している。
近くで見ると汚れや傷が目立つ。
問題のステンドグラスに触れて錬金術を使用する。
傷などは塞ぎ、汚れは分解して浮かせ、後は軽く拭けば奇麗になると思う。
うん、予想通り上手く行った。
そのまま流れ作業で同じ事を繰り返していく。
集中していたので気付かなかったが、下へ戻ると他の人の手が止まっていた。
下から見ると、清掃前と比較しなくても一目で分かるくらい、透過光で奇麗に映っていた。
うん、我ながらこれは良い仕事をしたと思う。
「オリビア様、いかがでしょうか?」
「……本当に、本当にありがとうございます! これ以上ない程の仕上がりです!」
「わわっ」
感極まったオリビア様に抱きしめられる。
流石にちょっと気恥しい。
ついでだからと、奇麗にならない所は手伝った。
欠けた石像も頼まれたが、そこまでは無理だった。
無くなった部分が有るなら、くっつける事はできる。
だけど、元の形を知らない物はどうしようもない。
まさか僕の想像で適当に作る訳にもいかないだろう。
大勢の感謝の声に見送られながら、帰宅する。
清掃作業が終わった旨の報告を聞き、確認に来た教皇猊下は驚愕する。
目を疑う程に見違えていたからだ。
「………これは、いったい?」
遅ればせながら、ユーリオンが手伝い、奇麗にしてくれた事が伝わる。
「ええぇ、他国の王子に清掃作業させちゃったのぉ!?」
どんな時も冷静に思考し、本心を表に出さない教皇猊下も流石に驚愕し、素が出てしまった。
本人が望んで協力したとはいえ、責められれば問題になりかねない。
やってしまったものは仕方ないと、思考を切り替える。
こういう切り替えの早さも彼の武器の1つだ。
「………美しいな」
大きな借りが出来てしまったなと思いつつ、正直またお願いしたいと考えるのであった。
「逃げるな卑怯者! 評価から逃げるなァ!!」
「何を言ってるんだあの作家は 脳みそが頭に詰まっていないのか?
俺は評価から逃げてるんじゃない したいと思えないからしないんだ
それにもう結果は見えているだろうが あの作品は間もなく力尽きて死ぬ」
「いつだって作家は お前ら読者に有利なネットの中で戦っているんだ
素人が無料でだ 傷つけばやる気が出ない 失った時間が戻る事も無い
逃げるな馬鹿野郎! 評価しろぅ! 卑怯者!」
「俺は君の作品を信じる 作家の一員として認める 孤独の中で物語を描くのをみた
時間をかけて向き合い 話を書く者は誰が何と言おうと作家の一員だ 胸を張って書き続けろ
ブクマの少なさや評価の低さに どれだけ打ちのめされようと 心を燃やしやる気を出せ
歯を食いしばってPCに向かえ 君がサボってだらけても 時間の流れは止まってくれない
共に寄り添って慰めてはくれない 俺の事は気にするな
読者ならばブクマと評価をするのは当然だ 読者ならば誰であっても同じ事をする
若い作家は摘ませない もっともっと成長しろ
そして今度は 君たちが読者を支える作家となるのだ 俺は信じる 君たちを信じる
母上 俺はちゃんとできただろうか ブクマと評価を まっとうできましたか?」
「高評価つけてましたよ」




