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私はモブ侍女ですが!?  作者: 雨水郡
10/10

もし、目の前に決められた選択肢が出てきても私はきっと自分の選択肢を見つけるでしょう

 

「えええええええええええ!!??」

 会場内に絶叫が響き渡る。国王や宰相だけでなく、エリザマス公爵令嬢、ローヒインさんも驚いて絶叫していました。

 何を隠そう私が1番驚いてる。あっれぇ!?私!?私なの!?何かの勘違いじゃないんですか!?


「チアキ様、どなたかと間違えていませんか?もしかして視力が低下しているのでしょうか?今すぐ眼鏡をお持ちしますが」

「うん。間違いないよ。連れて帰るのはリタ。アンタだから」

 私が生贄!?じゃなくて気に入った人!?

 私なんて抜群のスタイルも国一番の美しい顔も、光の魔法も権力も何にも持ってないのですが……

 どうやら信じられないのは私だけではないようでした。


「何で……!!何でそんな冴えない女なの!?しかもただの下っ端のモブじゃない!!名前すら与えられないモブじゃない!!」

「そうよ!!そんな大した美貌もスタイルも持たない貧相な女を選ぶなんて!!ありえないありえない!!」

 すっごく同意ですが、こうも大勢の前ではっきり言われるとモブという存在である私でも傷つきますよ……?


「おかしいわよ……、せっかく転生して上手く行ってたのに。ヒロインなんだから皆が私のことを好きになるはずなのに!!チアキ様だって愛してくれるはずなのに!!チアキ様も王子もみんな、みんな私の物になるはずなのに!!」

「ありえないわ……、転生悪役令嬢なんだから最後はハッピーエンドになるはずなのに、何で何でよ……!!何でチアキ様が手に入らないの!?ありえないわ!!チアキ様は婚約破棄された私を連れ去ってくれるはずなのに!!」

 うん?転生やらヒロインやら悪役令嬢やら一体どういうことでしょう?

 眼が血走っているように見えますが大丈夫でしょうか?興奮しきっている2人は異様で国王様や王子までもかなり引いた目で彼女たちを見つめています。


「馬鹿じゃない?予想通りの未来なんて存在するワケないのに、そんな曖昧なシナリオに縛られてまるで道化だね」


 ローヒインさんもエリザマス令嬢もまるでヒロインや転生悪役令嬢だから確立された未来が待ってる、かのような発言ばかりでした。よくよく冷静に考えれば分かることです。確定された未来なんてないことを。だからこそ突然予想だにしない不幸があったり、眼を疑うような奇跡が起きるというのに。

 でもその現実が彼女たちには見えないようです。きっと彼女たちはこれからもその役割に縛られたままなのでしょう。




「じゃあね。もう会うことはないだろうけど。つかの間の生を御伽話の中で夢を見ながら足掻くといいよ」

 今までで1番冷え切った声で目もくれずにそう言い放ってチアキ様は背を向けて歩き出した。

 ……勿論、私を抱いたままで。

 そんな彼に国王様が慌てて叫びました。


「レジェクト殿!!元帥の件は……!!」

「ああ、大丈夫ですよ。シキ元帥も暇な人間じゃないのでこんな価値の無い勝手に滅びるような国を攻めようと考えるほど馬鹿な人間じゃないですよ」

 その言葉に今度は国王陛下と宰相が膝から崩れ落ちた。




















「あ、あの……チアキ様……降ろしてもらえませんか?」


 会場から出てからもチアキ様はお姫様抱っこしたままで下す気配がない。お姫様抱っこされるのは初めてで恐ろしくて恐ろしくて胸がドキドキです。しかもチアキ様の歩くペースが速いので冷や冷やします。


「何?アンタを落っことすとでも思ってるワケ?」

「いや!!そういうわけではなくてですね!!初めてなのでどうしたらいいか分からなくて」

「じゃあ首にしがみついてれば?」

「……こ、こうですか?」

「……」

 素直にチアキ様の首に腕を回せば、急にピタッと歩みを止めた。


「チアキ様?」

「はぁ~~~~、さっきの発言といい、今のといい無自覚な分質が悪いね」

 無自覚というのは何のことでしょう?私はただ落とされる恐怖を紛らわす為にしがみついてるだけなのですが。


「こういうこと他の人にしないでよね」

「……チアキ様だけですよ?」

 そもそも私みたいな侍女をお姫様抱っこするような人はチアキ様だけでしょうし。

 それを言った後、再び溜息をつかれました。何故ですか。


「というか私がチアキ様と一緒に国に行くのは決定なんですね」

「今更何言ってるワケ?もしかして怖くなった?」


 昨日のお茶会を最後にもう会えないと思っていた。それが今、こうしてチアキ様の傍にいる。今まで侍女の顔で引き締まっていた表情が思わず緩んでしまった。



「嬉しいに決まってますよ」

 そう心からの言葉を笑顔で伝えれば、急にチアキ様の顔が近づいてきて温かくて柔らかいものが唇に当たった。


「怖がって逃げようとしたって必ず捕まえてあげるから」

 チアキ様がとても良い笑顔で言い放ちました。ですが、その笑顔とは裏腹の言葉に背筋が冷えてしまいました。どうやら私は目の前の人からは逃れられないらしいです。

 ……ただぼそっと呟いた最悪監禁でもするか、はどうかやめてください。切実に。



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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。母国へ帰ってからの2人も見てみたいと思います。
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