第20話「オフィウクス」
日曜日のとある商店街。
魔法少女達がアルバイトのお手伝いをしているスペースから少し離れたところに、小学生くらい幼いの少女がいた。
おそらく、キャンサーや百華とそう年は変わらないだろう外見の少女は、少し気が強そうに感じさせるツリ目を除けば、年相応に可愛らしい容姿であると言えた。
しかし、その少女は見た目通りの年齢ではなかった。
少女の名は、魔法少女オフィウクス。
小学生くらいの見た目は不老不死による弊害であり、オフィウクスの姿は12歳の状態で止まっていた。
かつては魔法少女として怪人退治をしていたオフィウクスは、訳あって現在は怪人側についている。
そんなオフィウクスは、遠巻きに魔法少女の観察をしていた。
これは任務という訳ではないが、オフィウクスが通常業務をこなしていた最中に、「近くで魔法少女達が共同して何かをしている」という情報が入ってきたので仕事を中断して視察しにきたのだ。
だが、実際に現場へ着て見てみればやっていたのはただのアルバイト。
とんだ無駄骨だったなと、オフィウクスは肩を透かした。
「やれやれ、呑気そうで何よりですねぇ。こっちは新しい怪人を作るために毎日必死に働いているというのに……」
魔法少女達も、別に好きで働いている訳ではないのだが、そんな事情は敵のオフィウクスには知ったことではなかった。
オフィウクスは現在、怪人生産の責任者として『対魔法少女用』の怪人を生み出す計画に頭を悩ませていた。これは前回の大戦で、怪人を大量生産する施設が破壊されたことの反省を踏まえ、今度はより強い怪人を作る必要があったからだ。
しかし、そう簡単に怪人は作れない。
怪人を作るには予算が必要であり、一体作るだけでもその額は馬鹿にならないのだ。
だからこそ、最近形になってきた怪人量産装置は、低コストで怪人を作れるとのことで怪人一同大いに喜んだのだが、いかんせん質が悪かったのが欠点だった。あの程度の怪人では、百体居たとしても魔法少女一人さえ倒すことは出来ないだろう。
それ程に、魔法少女とは強い存在なのだ。オフィウクスは、自身も同じ魔法少女だからこそ、彼女達の恐ろしさは身近に感じることができた。
かつては怪人軍団にも、魔法少女と渡り合える強力な怪人が何体も居たのだが、数年前の行われた両方の戦争により、怪人側の戦力は大きく失われてしまった。
それからも魔法少女体の働きにより残党は狩られまくり、結果怪人側で魔法少女とタイマンを張れるには、同じ魔法少女であるオフィウクスと、怪人王のみとなった。
「劣勢にも程がありますよ。向こうは十三人も居るというのに、こちらはまともな戦力がたった二人? これでは、どれだけ弱い怪人を生み出しても焼け石に水です。どうにかして、魔法少女達に対抗できる強い怪人を生み出さないと……」
オフィウクスは、行列が出来る一角で楽しそうに商売をしている魔法少女達を忌々しそうに見ながら、持先程買ったコーヒー缶を一気の呷った。
「ん?」
ちょうどその時だった。
カウンター側で、何やら長々と話し合いをしているお客がいることに、オフィウクスは気づいた。
トラブルだろうか?とオフィウクスは思ったが、それにしてはお客の方は親しげに魔法少女達と会話をしているように見えた。
その様子が気になったオフィウクスは、会話しているお客の顔をよーく覗いてみる。
「え、え? あ、あれはもしや……」
オフィウクスは、魔法少女達と話をしている男性を見て目を見開いた。
そして、敵が大勢いる場所であるにも関わらず、オフィウクスは男性がいる元へ向かった。
すると、男性も誰かが近付いてくることに気づいたのか、彼はふとオフィウクスのいる方向を振り向いた。
「げっ!?」
「……あの」
男性は、オフィウクスを見るや引き攣った表情を浮かべた。
そしてカウンターに居た少女達は、何事かと男性とオフィウクスを見比べ出す。
「あ、あれ? ……歌恋さん」
すると、カウンター向こうには魔法少女達以外にも少女がいた。
というか、それはオフィウクスもよく知る人物だった。
(な、なんで……)
オフィウクスは頭に血が上りそうになるのを感じながら、目の前の光景を認識している。
オフィウクスが見ている人物は二人。
一人は、スーツ姿をした中年のサラリーマン。
もう一人は、カウンター向こうにいる少女、博多百華。
この二人をじっと見つめながら、オフィウクスは思った。
(なんで……私の上司と、その娘がこんな所にいるんですか!!?)
そう、この中年サラリーマン……のような男性、百華の父親こそが、怪人達のトップ。三十年前に怪人達に革命をもたらした史上最強の怪人。
【怪人王オメガ】、その人であったのだ。




