前編
僕の名は清彦、山村で漁師をして暮らしている
さっき旅人から気になる話を聞いた
なんでも隣村の長の家で結婚相手を
募集してるとか、長の娘、確か名前は
若葉さんだったかな、それはそれは美人と
噂だけは聞いたことがあった、もしかして
逆玉に乗れればうだつの上がらない
漁師生活に終止符をうてるんじゃあ?
僕は早速隣村の村長宅へ急いだ
「何の御用でしょうか?」
この人が若葉さんだろうか
「長にお話があってきました」
応接室に案内され、しばらくすると
長の俊明さんと若葉さんがやってきた
噂に違わぬ美人だ、僕は数秒見惚れていた
「話というのは?」
ギロリとこちらを見据え、長が口を開く
うっ、凄い眼光だ。でも僕は負けないぞ
「僕と結婚してください!」
ふふ、有無を言わず直球作成だ
若葉さんは驚いた表情をしている
バンッと俊明さんがテーブルを叩いた
「何を馬鹿なことを、、時間の無駄だ
お引き取り願おうか」
「帰りません、僕は真剣なんです
どうか僕と結婚してください」
「帰れ!」
「帰りません」
睨み合いの沈黙を破ったのは若葉さんだった
「お父様、何やらこの方も本気のようですし
チャンスをあげても良いではないですか」
「お前まで何を言いだすのだ、この男と
結婚などありえん」
うっ、そこまで否定しなくても、、
「そうですわ、ゴニョゴニョ」
「むぅ、いやしかしなあ」
「こんなに真剣な求婚はもう無いですよ」
「うーむ、わかった。清彦とかいったな
この先に洞窟がある、そこにいる呪術士に
この手紙を渡してきてほしい、さすれば
結婚の話を考えよう」
「必ず使命を果たします」
おお、いい感じに話がすすんでる
これはもしかしていけるんじゃ?
洞窟は薄暗く、蛇とかもいたけど
別に特に何があるでもなく進めた
奥に着くと明かりが見えた
「だれじゃ?」
しゃがれた声で老婆は尋ねた
「偉大な呪術士様、村の長より書状を
預かって参りました、お納めください」
手紙を読むと老婆は小瓶を僕に手渡し、
後はお前次第だと言い残し闇の中へ
消えて行った。
僕は走って村へ戻った
「ただいま戻りました」
「本当にとってきたのか、お前の本気さは
認める事にしよう、その小瓶には秘薬が入っている、
飲めば激痛に襲われ、最悪死ぬこともある
お前にその覚悟があるか?」
話が終わる前に僕は薬を飲み干した
「うげっ、まず〜、、うぐっ、があああ」
身体中に痛みが走り、骨が軋み僕は
床にのたうち廻りそのまま気絶した
ひゅーひゅーという音が不快で僕は
眼を覚ました。ん、ひどい気分だ
この音は僕の呼吸のようだ、声が出ないや
「気がつきましたか?」
若葉さんが僕を介抱してくれたのか
起き上がろうとしたけど身体が言う事を
聞いてくれそうもない
「動いてはダメですよ、いま痛みを和らげる
お薬をあげますからね、でもこのお薬は
すぐ飲み込まずしばらく口の中に溜めていて
くださいね」
ん、吸飲みで薬を口に入れられる。甘いな
飲んじゃダメなのか、
「身体を拭いて差し上げますね」
「!?」
抗議する間もなくお構いなしに
服をはだけさせてゆく若葉さん
丁寧に汗をタオルで拭ってくれる
時折触れる指が冷たくて心地いい
「明日は結婚式ですねぇ」
「んぐっ」
驚いて薬をのみこんでしまった
いつの間にか声が戻ってる
「いきなり結婚式ですか?」
「嫌ですか?父も楽しみにしてますよ」
「そっかぁ、若葉さんと結婚できるんだ」
「へっ?私が誰かと結婚するんですか」
うん?
「明日は僕の結婚式ですよね?」
「そうですよ」
「えーっと、僕とそのぉ、、」
「はい、清彦さんとお父様の結婚式です」
「いや、またまた冗談を」
若葉さんは何やら不安そうな顔をしている
しばらくの沈黙、、
「「あの」」
ほぼ同時に声を出す
「だって清彦さん結婚させてくれって
お父様に言いましたよね、私はまだまだ
結婚する気はありませんし、今回の結婚相手の
募集は父の後妻の募集ですよ」
「え、ちょっとまってそれって」
「はい、それなのに清彦さんのような好青年が父に
求婚を申し出たので二人で面喰っていたんですよ」
僕はとんでもない早とちりをしてしまったらしい
長の俊明さんの結婚相手の募集だったなんて・・・
「でも結婚って、そもそも僕は男だし俊明さんだって」
「お父様は初めはなやんでましたけど、清彦さんの真剣な
まなざしに負けたといってましたよ、だから秘薬で清彦さんを
女性にしたんじゃないですか」
え、今何て言ったんだ。僕を女にしたって!?
恐る恐る僕は首を動かし自分の身体を見つめ
手で触ってみる、胸はわずかに膨らんでいるし
それに、、アレが、、ない
「マジか、いや、えぇ~」
結婚するの、僕が?男と、、、