34.保科 勇気13
さて、どうするか。
とりあえず、田中のおじさんに電話でもしておくかな。
スマホを取り出し、発信履歴から番号をタップする。
だが、いくら待っても無機質なコール音が鳴り続けるだけで、電話に出る気配はない。
うーん、出ない。
何かヤバいことしてなければいいんだけど。
そういえば、有紀ちゃんの電話番号も聞いておけばよかったな。
いや、待てよ。
あの最初の頃、俺がブロックしたメールアドレスがあったはずだ。
俺はブロック設定の解除手順を思い出し、メッセージを打ち込んだ。
『勇気でーす。有紀さん、電話番号教えて。一応俺のはこれ』
送信して数秒後。
――プルルルルッ!
すぐに着信があった。画面には見知らぬ番号。
「もしもし」
『……勇気君?』
「そうです、勇気ですよー」
『相変わらず、元気ね。……何か、分かった?』
「うーん、まあそんなに進展ないかな。でも、きっとなんとかなるよ」
『そう。相変わらず前向きなんだね』
電話の向こうの有紀ちゃんは、少しだけ躊躇うように息を吸い込んだ。
『あのさ……ちょっと、聞きたいんだけど。……写真減らす方法、知ってる?』
心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。
「え……なんの、こと、かな。わからないなー」
『梨花のお母さんに聞いた』
有無を言わさぬ、冷ややかな即答だった。
「何だよー。無駄な嘘だったな」
『バレバレだったけどね』
フッ、と。
お互いに、不自然で乾いた笑いが漏れた。
『それで……私の写真、一枚減ってた』
「……そっか。おじさん、やったのか」
『やっぱり、そうだよね』
「聞いてないのか?」
『……怖くて、聞けないよ』
震える声が、すべてを物語っていた。
自分の命を繋ぐために、父親が身代わりとして誰かを呪いの淵に突き落とした。
「まあ、それもそうか。……ちょっと、これから墓参りしてくるから。またなんかあったらかけて」
『墓参り? え、どういう……』
有紀ちゃんの戸惑う声を遮るように、俺は通話を切り、スマホをポケットに投げ込んだ。
寂れた村の、さらに外れ。
鬱蒼とした木々に囲まれた古びた共同墓地の中で、俺は『西本家』と彫られた古い墓石の前に立っていた。
「なー、西本君」
冷たい石に向かって、俺はポツリと語りかけた。
「俺に、どうしてほしいわけ。こんな呪い振り撒いて、お前は一体何をしたいんだよ。……教えてくれよ」
風が吹き抜け、古びた塔婆がカタカタと乾いた音を鳴らす。
答える者は誰もいない。そう思っていた。
「……あなた、誰ですか?」
背後から、不意に静かな女の声が聞こえた。
驚きで声が出そうなのを抑えて、俺はバッと振り返った。




