大会1
何と盛大な大会だ。
太陽が顔を出し始めた早朝、まだ寝ていた私の耳へと大きな声が飛び込んできた。
「大会当日の朝です!皆さんおはようございます!」
常人では考えれぬ声量の声が、外から聞こえてきた。あまりのうるささに、私は眠い目を擦りながら、窓から顔を出した。
「元気ですか?寝ている人は起きてください!出場者も観客も、遅刻しちゃいますよ」
声の主は、知らない男だった。トラックの荷台に乗り、拡声器を片手に大声を出していた。
「…拡声器…記録しなきゃ」
起こされたことにイライラしていたが、オーパーツを見れたことに満足した。
記録の書物で、彼の持っている拡声器に焦点を合わせて、写真を撮った。
拡声器とは、自分の声を何倍にも大きくすることができるオーパーツである。戦争で使っているのを一度だけ見たことがあった。まぁ、あれが本来の使い方だろう。
ーうるさいけど。
私は口の中に水を流し込む、レーションを頬張った。寝ていた身体へと栄養が染み渡り、段々と活動を始めた。
「よし、行こうかしら」
記録の書物を忘れずにポケットに入れると、左手に望遠時計が付いていることは確認する。
今日は大会の予選だ。本戦に進むためのは、予選で勝ち星を取らなければならない。トーナメント方式ではなく、他人の星を10個取れば終わりだ。
星1つは、緑1枚で買える。予選は、チップの代わりに自分の星をかける。制限時間内に他人の星を10個取れば終了。ただし、自分の星はチップで買える。故に、金さえあれば、数撃てば当たるという訳だ。
私は宿を出て、賑わっている通りへと出た。
「へいへい。今日は大会当日だから、こちらの手鏡が…赤5枚!こっちの、ビー玉も赤1枚。そして、この良く分からないオーパーツも赤1枚だよ!!」
宣伝の声に、私はほいほいと乗せられて声の方へと身体を向けた。何故なら、こんなに安い値段で売っているのを、初めて見たからだ。
「へい、旅人さん。1ついかが?」
景気のいい声を出す店主に惹かれ、並べられている商品に目を配る。
手鏡にビー玉は、よく見かける。その横にあるのは、プラスチックで作られたクシだ。そして、数多くの壊れているであろう電子機器の山。ごちゃごちゃしていて良く分からない。
試しに、その一つを手に取った。
スピーカーのような物と、短くなったアンテナが付いている。これは、多分だけど動かなくなったラジオだろう。
う~ん…壊れているのは、流石に直せないわね…。
「旅人さん、これなんてどうだい?」
店主の手には、ケーブルが伸びたライトがあった。丁度そのコードは、バイクの端子にぴったりとあてはまる様な、そんな形をしていた。
見た瞬間に、便利性と珍しい形から欲しくなり、思わず「下さい」と声が喉から出かかったけど、それを押し込んだ。
「それ、どうやってつかうんですか?」
私はワザと首を傾げる。
「さぁな、全く分からん。ライトだとは思うんだが、なにせこれがさせる端子が無いもんだからな。誰も使えんのだよ。旅人さんなら、そのうち出合うかもしれないよ」
「…いくらで?」
「赤2枚でどうだい?」
店主は指を2本立てる。
しかし、ここで妥協してはいけない。かなり破格の値段だけれど、これからある大会のためには、1コインでも多い方が良い。
「でも、使えないんじゃ…意味無いわね。せいぜいコレクションだわ。赤1枚でどう?」
私はポケットから赤1枚を取り出して、指先で器用にくるくると回して見せる。
店主は、私の指先を見ながら、
「…ま、いいわな。ずっとここにあるよりは、こいつも旅したかろ。1枚で」
とライトを差し出した。
ずっと欲しかったのだ。バイクのライトでは、光が強すぎる。記録の書物のライトは、使いながら手元を照らすことが出来ない。夜中にバイクを走らせたり、物を探す時なのどの、小さなライトが欲しかったのだ。
電化製品図鑑2037には、太陽の力でエネルギーを得ることが出来るライトが書かれていた。本当はあれが欲しかったけど、これでも申し分ない。
空の力でか…ソーラー…パネル?
会場に足を向けて歩き始めた私は、昨日にハゲから聞いた言葉を思い出して足を止めた。
あと小一時間で大会が始まるいうのに、向きを変えて駆け出した。真っすぐと、城があった場所へと足を進め、周囲にいる騒ぎ声など無視して一直線に進んだ。そして、ハゲに案内してもらった、黒い半球体の建物へとたどり着く。
心臓がバクバクと跳ね上がる様に鼓動して、からだのあちこちから汗が噴き出してくる。それを、生暖かい風に吹かれ、少しだけ身体が冷える。
息も整わぬうちに、私は電化製品図鑑2037の太陽光太陽光ライトと書かれたページを、急いで開いた。四角くて黒い素材がくっつけられたライトが、スマホの画面に映し出された。
私はその部分を指で拡大させていき、ギリギリまで目を画面に近づける。
次に、目の前にある巨大な黒い半球の建物の壁に手を付くと、画面とよく見比べた。
「…これ規模は違うけど、同じ素材なの…かしら?」
黒と言うよりは、ダークブルーと言うべきだったかもしれない。所々に、薄く白い線が走っている。大きさのけたは違うが、見た目は同じだ。
「という事は、この巨大な建物は、発電所…なのか?まさか、城があった建物内部のライトは、これによってまかなわれている…」
私はカメラを起動して、昨日は撮影することが出来なかった建物を、写真に収める。
満足げな心の裏で、私は疑問に思った。
こんなに長い年月、稼働し続けられるものなのかしら…と。
残りチップ
緑7枚と赤7枚




