表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/106

初めての旅 5日目

野盗に襲われたり、魔獣に襲われたりしながらも、一行は無事に2つめの街に着いた。


街では、依頼主が宿を取ってくれるので、そこで寝泊まりする。

人数分の部屋が空いてなければ、別の宿になる。


食事は宿でも取れるが、食事代は自腹だ。 

別に大した金額でもないから、困ることはないけど。


部屋は、必ずイクスと一緒だ。

ベッドは一つなので、イクスに抱きしめられるような形で、一緒に寝ている。


旅の一行で女性はリーアだけ。

野営のときは清め魔法で清潔さを保っているが、宿では風呂があれば風呂に入る。

今夜の宿は、大浴場が付いていた。

ちゃんと女性用と男性用に別れていたけれど、リーアが湯浴みしている間、イクスが入り口で番をしてくれていた。



「バルさんは、入らないの?」


「んー、大浴場とか嫌いなんだよねぇ。あんまり人前で無防備な姿晒したくないし」


「ああ、なるほど」



イクスは根っからの暗殺者だ。

常に武器を仕込んでいるし、命を狙われることも多い。だから、リーアと二人のときじゃないと、無防備な姿は晒さない。

リーアと二人きりのときですら、完全には防備は解かない。



「あ、シュバルツ。明日のフォーメーション確認したいんだけど」


「あー。どこでやる?アンタの部屋?」


「そうだな」


「じゃ、リー行こうか」



リーアも当たり前のようについていこうとしたが、それを他の冒険者が止めた。



「リーアちゃんは、なんか依頼主が体調不良を治してほしいって言ってたよ」


「じゃ、そっち先行くか」


「いやいや。リーアちゃん一人でも大丈夫でしょ。

ほらほら、行くぞ」



イクスと離れて一人で行動する気はない。

でも、まぁ体調不良くらいなら、症状にあわせて薬を処方すればいいだけだし、なんなら部屋の入り口で済むだろう。

リーアは、一人で依頼主の部屋に向かった。

イクスは、ものすごく心配そうな顔をしていた。

そして、リーアは自分の考えが甘かったことを、このあと知る。



「ああ、リーアちゃん。来てもらってごめんね。ちょっと、太ももが痛くて。治してもらえるかな」



依頼主の部屋に行くと、依頼主は部屋のドアを大きく開けて、リーアを招き入れようとした。

部屋の入り口で済ませようと思っていたが、痛みの箇所が太ももとなると、薬を処方するだけというわけにも行かない。



「少し、触りますね」



足元にしゃがんで、依頼主の太ももに触れる。



「うーん、もう少し上かな?」


「このあたりですか?」



ほぼ、足の付け根に近い。

熱を持っていたり、腫れていたりはしなかったけれど、とりあえず簡単な治癒魔法をかけておいた。

太ももに触れた手に、依頼主が手を重ねる。


あまりの気持ち悪さに、リーアはバッと手を離した。



「驚かせちゃったかな。暖かい感じがしたから、手も暖かいのかと思って確かめてみただけなんだけど」



リーアは1歩依頼主から離れた。



「そんな警戒しなくても。リーアちゃんくらいの歳の娘がいるからさ。なんか懐かしくって」



そう言って、許可もなくリーアの髪を撫でる。

その目は、娘に向けるものとは思えない、ねっとりとした目だ。


(なんだろう。ものすごく、ものすごく気持ち悪い)



「はい、そこまでー。子供とは言っても、迂闊に女性に触るもんじゃないですよ。いざという時、『うっかり』あなただけ防御魔法がかからないと困るでしょう?さ、リー、行こう」


「バルさん……!」



救いの手に、リーアは飛びついた。

イクスの手が、依頼主の手を掴んで、リーアから引き剥がす。



「あ、ああ……すまんね」



顔色を悪くした依頼主を放って、リーアはイクスと一緒に自分たちの部屋へ戻った。



「大丈夫?」


「なんか、すごく気持ち悪かった」


「そうだろうねぇ。変態に触られたんだから」



(そっか。あの人変態なんだ)


リーアは納得する。



「念の為、リーに清め魔法かけておくねぇ。どうする?ここまでの報酬だけもらって、ここで別行動してもいいけど」



イクスの言葉に、うーん、と考える。



「もうあんなことはしてこないと思うし、イクスさんとも離れないから、大丈夫。あと10日ほどだし」


「そう?無理なら言ってね」


「うん」


「あとは寝るだけだけど……すこぅし上書きしておこうか」


「上書き?」



キョトンとしたリーアの頭を、イクスが優しく撫でる。それだけで、さっきの気持ち悪さを忘れられる気がした。

イクスはそのままリーアの頬に手を滑らせて、顎をクイッと上げた。

リーアの唇に、イクスのそれが重なる。

少しだけカサついていて、でも温かくて。



「あの変態に触った?」


「うん。患部の確認に」


「じゃ、こっちもだね」



そう言って、リーアの右手のひらにイクスが唇を押し当てる。



「ん……」


「まぁた、そんな声出して」



イクスが言って、ぺろりと手のひらを舐める。



「ひゃっ」


「しいっ。この部屋、壁が薄いからね。隣に聞こえちゃうよ」



そう言いつつ、イクスは隅々までリーアの手のひらを舐める。



「んっ、あ……」


「かーわい」



最後に、リーアの指先をカリッと噛んで、イクスはリーアの手を開放した。

顔が熱いし、なんなら身体も熱い。

腰にも力が入らない。



「さ、明日も早いし、もう寝ようねぇ」



リーアの身体を抱き上げて、イクスはベッドに潜り込んだ。

リーアはすごくドキドキしていたけれど、頬に伝わるイクスの鼓動もドキドキしているのを感じて、少しだけ幸せな気分になった。



「あー、ヤッバイ。防音魔法かけちゃえば大丈夫かな。いや、でもまだ先は長いしなぁ」



そんな、イクスのひとりごとを聞きながら、リーアは眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ