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隠密騎士は引き留められる

いつもご覧いただきありがとうございます

ブクマ、評価、いいね、閲覧ありがとうございます!

とてもうれしいです!


※イクス視点です


では、どうぞ!

「其方、どうしても辞める気は変わらぬか」



リーアと色々あってからしばらくした日。

任務の報告を終えると、陛下から呼び出しを食らった。

理由は何となく予想がついていたけど、拝謁してみれば、開口一番にこれだ。



「は……能力の衰えで任務に支障をきたす前に、と」


「其方が望むのなら、団長職を与えても良い」



(いらねー。リーアとのことがなかったとしても、そんな面倒そうな役職いらねー)



「私には、荷が重く……」


「では、他に何か望むものは?何を与えれば其方は残る?」


「もったいのうございます」



あえて、短い言葉で返す。

何しろ相手はタヌキ。

そうでもしないと、揚げ足を取られる可能性が高いのだ。



「気は変わらぬ、か」


「は」


「正直、其方が抜けるのはキツい」


「既に能力の限界が見えた身でありますゆえ」


「末姫を与えると言ってもか」



(えー?末姫って、確か御年17歳であられる王女殿下のことだよな。いらねー。もっといらねー)


そもそも、この国の末姫は、他の兄弟たちと歳が離れていることもあり、甘やかされて育った典型的なワガママ王女だ。

イクスは、リーアから以外のワガママなんて聞きたくもない。



「私めにはもったいなく」


「末姫は、其方のことを気に入っている」



(は?なんで?会ったことないよね?俺の主人は陛下だから、他の王族からの命令は聞く必要はないし)


そもそも隠密騎士はほぼ表に出ないので、陛下以外の王族に会うことなどない。

なのに、なぜ。



「他のどなたかとお間違いかと」


「ふむ。まぁ、私もそうではないかと思ってはいるが」



(早く帰りてぇ。リー、今頃何してるかなー。早く帰って、リーに癒やされたい)



「では、最後の任務だ」



そう言うと、陛下は隠密騎士団長の方をチラリと見た。

その後を引き継いで、団長が指示を出す。



「旧マリウス国の一部の貴族の動きがきな臭い。早急に関係者と思惑を調べ、対処するように」


「対処、でよろしいのですか?」



団長の言う、対処、とは分かった時点で始末しろということだ。



「そもそも、併合の時は民のいらぬ反発を招かぬよう、民に人気のあった貴族は残したが、元よりこの国にはいらぬ存在だ。害意があるのなら、いらぬ」


「かしこまりまして」


「この任務の終了をもって、其方の任を解く。アレを」



陛下の言葉に、宰相が2枚の紙を持ってくる。



「これは、其方が入団した時の機密保持契約書だ。この契約は、元より退団後も有効なものだが、念の為、もう一度契約してもらう」


「は」



目の前に用紙を2枚置かれたので、左手を宰相に預けると、宰相はイクスの指を少し傷つけた。

流れる血を、2枚の用紙に落とす。

これで、契約完了だ。


なぜ、宰相に傷つけさせたかといえば、陛下の前で刃物を取り出すのは、翻意ありとみなされる可能性があるからだ。

通常、騎士は陛下の前で抜き身の刃物を出すことは許されない。

普通の騎士たちは、守ること優先なので、常に帯剣しているが、やはり、抜き身の剣は非常時以外出さない。

イクスたち隠密騎士にしたって、身体のあちらこちらに暗器を仕込んでいるが、それは見せない。

見せてはいけないと言うのもあるが、他人に見せるのはあまりにも無防備だ。



「契約は成った。明日より任務に入るように」


「御意」



(やだなぁ、忙しくなりそう。リーとの時間が減っちゃうな。それに……)



たぶん、この任務の中でイクスのことを消すつもりだ。他の隠密騎士にやらせるつもりだろう。


(ま、そんなに簡単に殺られるほど甘くないけどね)


音もなく陛下の前を辞したイクスは、認識阻害魔法で姿をくらましながら、天井へと移動し、そのまま屋根の上に上る。

屋根の上を移動した方が早いのだ。



元々、イクスは影の人間となるべく育てられた。

引退した闇ギルドの人間が作った、専門の施設で。

他の子どもたちに比べても、イクスの才能は突出していた。

もちろん今でも、イクスと対等にやりあえる相手なんていない。

団長なら、多少は楽しめるかもしれないが、他の奴らでは無理だろう。

たぶん、混乱に乗じて複数人で仕掛けるつもりだろうが、すべて返り討ちにする自信はある。

それに、イクスは魔法も優れているので、イクスの認識阻害魔法は、他の奴では見破ることができない。

もちろん、どの隠れ家も、見つかっていない。


すぐに帰る予定だったが、イクスは情報屋のバーに立ち寄った。



「いつもの?」


「そ」


「人気者は辛いねぇ」



やはり、既にイクスには懸賞金が掛けられているらしい。

何も一から十まで話さなくとも、ここではこの会話だけで事足りる。


マスターが出してくれた酒に、異常がないことを確認して呷ると、イクスは情報料を払って、店を出た。


少し気配を戻せば、イクスのいそうな場所を張っていたらしい暗部の者たちが3人、仕掛けてきた。



「ははっ。早漏はモテないよ?」



この程度、イクスにとってはなんの障害にもならない。

あっという間に返り討ちにし、返り血がついていないことを確認すると、イクスはまた気配を消して今度こそ家へと戻った。


念の為、家に張ってある防御魔法に異常がないか確認したが、やはり、ここはまだ見つかっていないようだ。

リーアを家に置いておいても安心。



国がイクスを狙い始めた理由は、おそらく2つ。

1つは、知り過ぎているイクスを消すため。

もう1つは、狙われて生活するよりは隠密騎士でいた方が楽だと思わせるため。


だが、奴らの思い通りにはなってやらない。

イクスは最後の任務を終えるまで、ここでリーアと二人で暮らし、その後は二人で旅に出るのだ。

こんな所で立ち止まってはいられない。


イクスは、いつもの飄々とした顔で、静かな家の中に入っていった。


(しばらく家をあけることが増えるって、リーに話さないとなぁ。それに、リーに護身術も教えなきゃだし)


イクスは、自室のベッドで穏やかに眠るリーアの顔を見て、ほっと息をついた。

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