第20話 取引と終幕
ちょっと、18:00過ぎてしまいましまが投稿します
( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
「王妃、持ってますよね?」
「ふん、何言って…ひっ!」
数分、押し問答を進めた上でラキが再度王妃に向けて小型ナイフを投げた。それには隣にいたロキや数歩後ろにいたヘルトもギョッとした目でそれを見る。見事に小型ナイフは王妃の真横を通り過ぎていった。
「ぶ、無礼者!いくら、王子の婚約者と言えどここまでのことをする権利は貴方に無くてよ」
「そうですね…通常なら、私は不敬罪であの世行き決定ですね。だかこそ、今日にしたのです。」
そう、儀式のあるこの日だからこそラキは勝負に出たのだ。勝機は十分にある。しかしこの日を逃せば、勝機は当分ラキたちには回ってこないだろう。
「何を言っているのよ?」
「ここは審判の間であり、ヘルトの意思確認中だ」
「え、陛下?」
そこまで陛下が口出すと、ロキ殿下はハッとした顔でこちらを見る。多分ロキ殿下が今考えたことが正解だろう。私はにっこりと微笑んだ。ヘルト殿下は今一ピンと来ていないようでどういうこと?って顔でこちらを見ている。まぁ、建国司法なんてあんな分厚い本なんてそれこそ専門家や国王でなければしっかりは読まんだろう。しかも王家の意思確認の儀式ところなんて興味が無ければ記憶に掠りもしないはずだ。
「私はロキ殿下の(仮)婚約者であり、シェリ家に籍を置いている者です。」
「だから?何よ?」
「一言で言うなら…今の私はここでは王族同等かそれ以上の権限を有しているということです。」
「…何を言っているのよ!陛下からもっ!」
「言っただろう。ヘルトの意思確認中だと。その儀式の間は彼女は我々と同等な権利を付与さている」
「…そんなどういう…」
「この話はこれくらいしましょう。ここに歴史の話をしに来たのではないのですから。私は今の話をしに来たのです。チェリー王妃、貴方が今持っている私の「死んだ」証拠を出して下さい」
ぐっと何か力を入れたような顔をしながら、乱暴に此方に投げるように差し出させた。
「これは…紋章つき時計?」
「はい、正確にはレプリカですけど」
流石に本物を壊す訳にはいかなったので、美術館などに贈呈用に作られるレプリカを今回は代用した。紋章付き時計は前世の言うところの住民表のようなものである。もう少し重たい言い方をすると、もう1人の自分、分身である。生まれた貴族家の家紋にオリジナルを加えた自分だけの紋章を貴族は必ず持っている。だからこそ、これが私が落ちたとされる川の下流付近で見つかれば、私がそこまで流されか身元を発見されなかったとして私が「死んだ」という証拠になる。
「しかし…ラキ嬢の死んだ証拠にはなるがチェリーがラキ嬢を陥れた証拠にはならなじゃないのか」
「確かにこれだけではそうですが、此方の私が持ってきた資料と照らし合わせると…物的証拠になります」
私は隠し持っていた資料をさらりと出し、陛下に渡した。それを軽く目を通した陛下は「なるほど。確かにこれは物的証拠」だとあまり感情が読み取れないような顔をしながら述べた。私が陛下に渡したのは、私を暗殺しようとしたチェリー王妃と暗殺者たちの交渉内容である。簡単に言うと、私を殺すことと私を殺した証拠を持ってこいという話であった。つまり、彼女が持っているということは交渉がしっかりと行われたものであり、これに私たちが生け捕りにした暗殺者たちの発言が付与されれば、王妃は逃げ場を失う。
「…そんな…どうして」
ここまで来れば、王妃も逃げ場ないと悟ったらしく、口に手を当てて目に涙を溜めていた。隣にいた陛下はそれを静かに見ていた。陛下が目がこちらを向く、その目は澄んだ瞳だった。何処までも為政者である。
「ラキ嬢」
「はい、陛下」
「そなたは何を望むのだ?」
ラキは真っ直ぐに陛下の顔を見る。そう、ここからが本番だ。ラキの目的は王妃を引き摺り落とすことではない。それに、そんなことをしたところで王政が荒れるだけで国内事情が悪化するだけである。
「王妃が私を殺そうした証拠に関しては、こちらで黙秘します。その代わり、第1王子が王太子になることを賛成の意を示し、後推しして欲しいのです。」
「…何ですって?」
「王妃、これは取引です。貴方が儀式を経て第2王子を意を尊重し、第1王子を王太子に賛成すると述べれば一部からは文句は来るでしょうが貴方ならそれを収めるだけの器があるでしょう。」
「…私が…第1王子を王太子に推す?」
「はい。因みに参考まで言いますが、王妃の実家は第2王子が臣下に降り、将来は宰相として国王を支える立場になることを承諾して下さいました。」
「!何が取引よ!もう、そんなの!」
チェリー王妃はそこまで言うと、口を噤んだ。実は彼女の実家も一部この暗殺未遂に関与していた。余程私という存在を危険視していたらしい。証拠を手に、揺すると彼らは第2王子が臣下に下ることを承諾した。第2王子が臣下に降るにしろ、公爵家になる可能性が高く、宰相という地位に彼がつくことになれば、国の中枢に食い込むこともできるだろう。無論(次期)国王の婚約者を暗殺未遂にした大罪を受けるより、国王弟であり公爵家である彼を支える明るい未来を取った。実言うとヘルトもラキも第2王子派閥の貴族たちに向けての根回しに追われていたのだ。何せ時間がなかった。お陰でここ数日はほぼ寝ていない。不思議と嫌ではなかった。個人的な恨みでいけば、王妃の実家共に王妃を引きずり落としたかったのだが、それよりも…ラキはロキの方を見る。ロキはラキと目が合い、ぎこちなく笑みを浮かべた。この人が国王になる為に磐石な土台が欲しかった。誰よりも何よりもこの人が国王として将来の国を作ることを私が望んだ。
「さて、王妃。お選び下さい」
「うっ…」
「…決まったようだな。ヘルト、再度聞く。そなたには王位を就く権利がある。その権利を欲すか?」
泣き崩れそうな王妃を支えながら、何とも言えない顔でヘルト殿下を見つめた陛下は彼に問い掛ける。
「いいえ、私は兄上を支えたいと思います。」
嫌っ…、と泣き声のような切ない王妃の声が響いた。しかし、無情にも陛下は「これにて、儀式を終了とする。この期に次期国王はロキ・デスティーノと我が国王としての名を元にここに証言する。」と述べた。
次で最終話っ!
お楽しみに₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡




