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兆兆発止 第2部 学園戦争  作者: ぱんろう
粛清委員会編
56/109

56話:フラッシュ レベル3

「うわあああ!」

善永は思わず情けない声を上げる。光の弾が雨のように降ってくる。善永はなぎさに覆いかぶさる。

「えいちゃん!」

「なぎさには傷一つつけない!」

そう言っている善永の側で光の弾が落下した。いつ、善永に命中してもおかしくない。

「善永さん!泥の傘を張りますよ!」

近くから一太の声が聞こえてきた。3人とも、フェンスの側まで引き寄せられていたのである。一太が泥を傘のように張り巡らし、それで光の弾を防…げなかった!

「あいつも本気だ!無色オーラ状態を解除していやがる!」

レベル3の者だけが使える高等テクニック・無色オーラは、技の威力などを半減する。逆に言えば、通常通りオーラを発すれば、技は相当な威力を誇る。もはや、一太の泥では、有賀の攻撃を防ぐことなどできるはずもなかった。善永や一太は、その場で伏せるしかなかった。攻撃が当たらないことを祈りながら。

「ふははははは!どうした!?私を殺すんだろう!?」

有賀は四方八方にビームを発射する。それは、泥の壁をことごとく破壊した。ついに、屋上にできていた泥の迷路が完全に破壊された。有賀はフェンスの側で伏せている3人を発見する。

「さて、どうする?」

有賀がじりじりと近づいてくる。

「善永さん!私に任せて!あなたは狙いを!」

一太が突然立ち上がり、有賀の方に向かっていった。善永が一太の方を見る。

「斎藤さん!ダメです!無茶は!」

有賀は、向かってきている一太を哀れそうな目で見ていた。

「斎藤君、がっかりだよ。君はもっと賢い人間だと思っていたのに…」

有賀が指を一太に向ける。そして、ビームを放った。それは一太の右胸を貫く。

「がっ!」

「斎藤さん!!」

一太はその場で倒れた。声を振り絞りながら、一太は善永に語りかける。

「時間は稼ぎましたよ…あとは、任せます…」

そして、一太は気を失った。善永は下を向く。しかし、そんなことをしている暇はない。有賀が指を善永に向けているのだ。善永は自身の背後からアイビームを発射した。

「?…どこを狙った?君も愚かだな。せっかく仲間が時間を稼いでくれたのに。」

アイビームは、フェンスに命中し、そのまま通過した。そのとき、アイビームが2つに分かれて、片方が有賀の方に向かっていった。

「なんだと!?」

突然のことに、有賀は対応できず、有賀の右足にビームが命中する。

「ぐあああああ!」

有賀は右足を押さえ、その場で屈みこむ。


(がああ!私が作った磁場を利用して、ビームを2つに分けやがった!)


善永はほくそ笑む。

「狙いは完璧だったようだな。」

1922年、高温に加熱された銀原子のビームを、磁場中に通過させるという実験が実施された。その結果、ビームは2つの方向に分かれた。これは電子にスピン(角運動量、端的に言えば回転の勢い)があることを示した。

この実験のことを、それを実施した2人の物理学者の名から、シュテルン=ゲルラッハの実験と呼ぶ。善永は、その実験から着想を得て、アイビームを2つに分けてみせたのである。

「もう一度!」

善永がアイビームを発射しようとしたとき、フェンスに引き寄せられなくなった。つまり、フェンスに磁場がなくなったのだ。

「くそが!もうやめろ!」

「なんだよ。いいところだったのに。今、俺の頭の中に、チャイコフスキーの『1812年』が流れていたぜ。あの大砲ぶっ放すやつ。」


「!…てめええええええ!チャイコフスキーなんか聞いてんじゃねえええええ!」


有賀は人が変わったように叫び始めた。その豹変ぶりに、善永は固まってしまった。

「いいか!俺の前でチャイコフスキーの名前なんか出すんじゃねえ!もちろん、その曲もな!わかったか!」

「あ、ああ…」

善永は尻込みしてしまう。そこを、有賀がついてきた。ビームが放たれ、善永の右腕を貫いた。

「がああ!」

「えいちゃん!」

善永はその場で崩れ落ちる。だが、意識は保っていた。なぎさが泣き叫ぶ。

「もうやめよう!?あの人は強すぎる!」

善永はすぐさま反対した。

「ダメだ!俺は、あいつを…絶対に!」

そのとき、ビームが善永の左胸を貫いた。

「あっ…」

善永はそのままぶっ倒れる。なぎさが駆け寄るが、今にも意識を失いそうだ。

「えいちゃん!」

なぎさの呼びかけに一切応じることができない。有賀は、善永の様子を愉快そうに見ていた。倒れたままの善永だったが、ある一言を聞いて反応せずにはいられなかった。


「えいちゃん…また会おうね…元気な姿で…!」


「!…なぎさ…何を考えている…!それだけは…それだけは絶対に…!」

目に涙を溜めていたなぎさは、フェンスに映った自身の姿を目にした。なぎさはその場で気を失う。

数秒してなぎさが立ち上がった。善永は、絶望した表情で意識を失っていった。

「ほう、君がサリーなんだね?」

そこに立っているのは、なぎさだった者、加賀美サリーだ。


善永の挑戦状:1922年に実施された、高温に加熱された銀原子のビームを磁場中に通過させるという実験のことを、それを実施した2人の物理学者の名から何という?


前回の『善永の挑戦状』答え:光電効果

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