41話:犬の鼻
「嗅覚だと!?」
善永は黒部を凝視する。
「そうだ!お前、だいぶ走ってきただろう!?おそらく、途中で八ッ場さんの力も借りているな!ならば、目で追う兆能力ではない!」
善永は瞠目する。黒部は続けた。
「心拍数でもないな!それだけでお前を特定するのは難しい!音は論外だ!」
善永が炎の弾から逃げ回ることで築き上げた考察を、黒部は数秒のうちにやってみせた。さらには、善永が導けなかった答えも明らかにする。
「嗅覚なら、個人差も出やすいし、相手を探すのにうってつけだ!それで特定されているんだ!」
校舎の一室、2人の生徒が青色のオーラを発している。片方は山南だ。何かに集中している。もう片方は、女子生徒の沖田だ。
「彼、右に曲がりました。」
「ああ。」
沖田が指示する。山南はこれによって、善永を見ずして、炎の弾を追尾させることができているのである。
「彼の匂い…いいですね。好きになりそうです。」
「余計なことを言うな。お前はその『ドッグノーズ』で、奴がどこに行ったかだけを教えろ。」
「はいはい。わかってますよ…」
黒部、正解である。そんな黒部は、善永にアドバイスをした。
「善永!対処法は簡単だ!匂いを変えればいい!確か、この先にゴミ捨て場があったはずだ!突っ込め!」
「それは嫌!黒部!お前、香水とか匂い変えるもの持ってないのか!?」
「俺はないな…宮ケ瀬がプワゾンを持っているんじゃないか?」
「プワゾン!?ディオールは嫌いだ!やっぱりゴミに突っ込む!」
「なんでだよ!いいだろ!ディオール!」
「とにかく、助かったぜ!黒部!ありがとな!」
善永はゴミ捨て場がある方に一直線で向かっていった。
「まずい…ゴミ捨て場が近づいてきた。あそこは嫌いなんです。ドッグノーズ解除してもいいですか?」
「いいわけないだろ!」
沖田は苦い表情をしながら、善永の現在位置を特定し続ける。
善永は、ついにゴミ捨て場に飛び込んだ。炎の弾がその場でくるくるし始める。
「うげええ!すみません!やっぱ無理です!」
沖田は、口を押さえながら教室を出ていった。
「おい!待て!くそっ!これじゃあ、奴を追えない!」
しばらくくるくるしていた炎の弾だったが、ついに消滅した。
「黒部の言った通りだ!」
善永はゴミ捨て場から出る。
「さて、山南の野郎をぶっ潰す時間だ!まずは、あの人に電話を…」
その山南は、廊下に出ていた。周囲を気にしながら、窓の外に目をやる。
(沖田はゴミ捨て場と言っていたな…おそらく、そう遠いところまでは言ってないはずだ!)
そのとき、どこからともなくビームが飛んできた。山南は驚くも、なんとかそれをかわした。
「川路善永!?」
「見つけたぜ!山南!」
廊下に善永が立っていた。スマートフォンを手に持っている。通話状態になっていて、その相手は八ッ場であった。善永は、八ッ場のエニィウェア・フィッシングで山南の側に来るようにリリースしてもらったのである。
「なぜここが!」
「ふふ。ゴミ捨て場で相手を嗅ぎ失ったとなると、当然目視で相手の位置を確認したくなる。お前、まんまとそうしたな!それであっさり見つかったんだよ!」
善永は高笑いをしていた。それを見た山南が、激昂した。
「うるせえええ!お前のせいで野球部の評判ガタ落ちなんだよお!お前は絶対に許さない!」
「それはこっちのセリフだ!斎藤さんと本田さんをあんな目に合わせておいて…!」
「どういうことだ!」
「しらばっくれんじゃねえ!」
善永は拳にオーラを纏わせながら、山南に殴りかかろうとする。
「ちっ!」
山南は手の平から炎を出し、それを弾のように投げた。
『炎玉弾』
善永は、飛んできたそれを避ける。が、炎玉弾は軌道を変えて、再び善永めがけて飛んでくる。善永は、山南を攻撃するのを諦め、逃げることにした。
「待ちやがれ!」
山南はそんな善永を追いかけようとする。そのとき、善永が急にしゃがんだ。
「!」
炎玉弾はそのまま善永の頭上を素通りする。それを確認した善永は、逃げるのをやめて、再び山南に向かってきた。しかし、炎玉弾もとんぼ返りして善永を追いかける。
「馬鹿が!そんなもので避けたつもりか!」
「馬鹿なのはお前だ。んなわけねーだろ。」
「!」
山南は、あることに気がつく。善永が、青いオーラを発しながら、目をつむっていたのである。さらに次の瞬間、山南の顔の横をビームが通った。
「これは!」
そのビームは、善永の側も通り過ぎ、後ろから追ってきていた炎玉弾に命中した。それらは相殺し合って、ついに消滅した。
(こいつ!俺の背後に視界を設置して、そこからアイビームを発射したのか!)
善永は拳にオーラを纏わせている。そしてついに、壱極集中のパンチを山南の腹部に命中させた。
「ぐはあっ!」
善永の挑戦状:ハウンド犬を大きく2つに分類すると、サイトハウンド(視覚ハウンド)と何?
前回の『善永の挑戦状』答え:徐脈




