第四百二話:やばいミッション
ヴァンが、ミドレナを睨む。モニター越しに睨んでもミドレナには伝わらないが、それでもヴァン達は、ミドレナを睨む。
「うふふふふふ、ようこそおいでくださいました、勇者の皆様。今来場されたヴァン様を最後に、今回のミッションへの参加は締め切らせていただきます」
ミドレナが優雅に、そうほざく。
「皆様はここで四つのゲームをクリアするだけで、圧倒的な報酬を得ることができます」
ヴァン達も勇者の巻物で見たが、確かにミドレナの提示するミッションの報酬は膨大なもの(5,000,000ゼニー/5,000,000勇者ポイント)であった。だからこそその報酬につられ、こうも勇者達が集まっているのだろう。
「絶対やばいミッションだよね、これ」
サキがヴァンに対して、ぼそりとそう告げた。ヴァンも頷く。
「そうだろうね」
四つのゲームをするだけで大金がもらえるそのミッションが、真っ当なものであるはずがないのだ。ミドレナは、言葉を続ける。
「二日に一度、ゲームをします。そのゲームをクリアしたら翌々日のゲームに続きますが、失敗したらこの国から去っていただきます。ゲームの内容は、事前には一切教えません。そして皆さまには勇者パーティごとに部屋を提供いたしますので、ゲーム以外の時間は、そこで暮らしてください。ただし、ゲーム以外の時間にその部屋から出ることはできませんので、ご了承ください」
そんな、ミドレナの言葉であった。
「うふふふふ、そしてゲームは明日から始まりますので、今日はいったん自らの部屋にお戻りください。勇者の巻物を開くと地図と共に、自らに割り当てられた部屋が示されております。なので、その地図を見て、進んでください」
ヴァン達は勇者の巻物を開き、地図を見た。この不思議な建物の一部である先ほど通ってきた廊下と、自らの今いる場所、向かうべき場所が、表示されていた。
「ですが、気を付けてください。この場所の廊下にはいたるところに、監視カメラ及び遠隔操作できる銃が存在しております。皆様が別の部屋に入ろうとしたり、この場所から逃げようとした場合、その銃が皆様をハチの巣にしてしまいますから」
どう考えても異様である、ミドレナのその言葉。
だがヴァン達は言葉に従い、廊下に出た。そして地図を頼りに、自らに割り当てられている部屋に向かう。
"507号室"
それが、ヴァン達に割り当てられた部屋であった。その部屋のドアの前に立つと、そのドアは自動で開いた。
そして、中に入ったヴァン達。
「……無機質な部屋だ……」
レイラが、そう告げる。
人数分のベッド、四人掛けのテーブル、風呂とトイレは別という、その部屋。
少し広いエリアもあり、身体は動かせそうだ。
さらにその部屋には、モニターが一つ、存在している。
そのモニターが、光った。
「うふふふふふ、皆さん、無事自らの部屋に入れたようですね」
そんな言葉が、モニターから発せられる。ミドレナが、その姿をモニターに現したのだ。
「今、私は全ての部屋の皆様に対して同時に言葉を発していますので、個別の質問にはお答えできません。まぁ、同時発信でなくても、個別の質問には答えませんが」
ミドレナは、「うふふふふ」と笑った。
「このモニターの横、小さな扉があると思いますので、そこを見てください」
ヴァン達は言われた通り、そこを見る。確かにそのモニターの横、50cm×50cmくらいの扉が存在していた。
「その扉の横、ボタンがあると思います」
ヴァン達は押しボタンが一つ存在しているのを、確かに見た。
「そのボタンを押すと、こちらと会話ができるようになります。何か要望があれば、そのボタンを押してから、こちらにお伝えください。例えば飲み物が欲しいだったり、ご飯が欲しい、歯ブラシが欲しいと言った、衣食住に関わる内容のものとかですね。欲されたものが提供可能であった場合は扉が開き、そこから提供いたします。こんな感じで」
扉が開き、奥行き50cmくらいのその場所に、歯ブラシが置かれていた。
ヴァンがそれを取った瞬間、その扉はゆっくり閉まっていった。
そこまで説明したミドレナが、口を大きく歪め、邪悪な笑みを見せる。
「もちろん、こちらが皆さんの会話を傍受するのは、その押しボタンが押された場合のみです。押しボタンが押されていないのに皆さんの会話をこちらが聞くことはありませんので、ご安心ください」
ミドレナが、そうほざく。ボタンが押された際に会話できるということは、ボタンが押されていない場合でも、ミドレナ達は部屋の中の会話を盗聴できるということなのだ。




